ロンドン・パラリンピックは第9日の6日、
車いすテニス男子シングルスで連覇を狙う国枝慎吾(ユニクロ)が準決勝でオランダ選手に
ストレート勝ちし、8日の決勝に進んだ。陸上男子円盤投げ(車いすF51、52、53)決勝で、
64歳の大井利江(としえ)=日本身障者陸連=は10位。
競泳男子100メートル平泳ぎ(知的障害)予選で、田中康大(やすひろ)=あかね園=が1分7秒08の世
界新記録をマークし、全体トップで決勝へ。同100メートルバタフライ(視覚障害)では、木村敬一(日大)
と北京大会銅の河合純一(医療福祉総合研究所)が共に決勝に進んだ。シッティングバレーボール女子
の日本は、順位決定戦で英国に快勝して7位。
◇国枝、王者の重圧に勝つ
男子シングルス準決勝。国枝が流れを大きく呼び込んだのは、第1セットの第6ゲーム。国枝の3-2で
迎えていたが、互いに1度ずつブレークし、まだ流れはどちらにも傾いていなかった。
相手サーブでポイント30-30。国枝は右に振られた車いすをクルリと回転させて素早く移動し、左の隅
への深いストロークを拾う。その返球が、相手の背後にポトリと落ちる、車いすでは最も追いづらい球に。
36歳のオランダのベテラン、ロナルド・フィンクも球に少し目をやっただけで、追うのを諦め、ラケット片手
に拍手したほど。勢いを得て、ブレークした国枝が、勝利へ突き進んだ。
ともすれば、ラインをオーバーしかねない、際どい返球だった。レシーブをネットにかけるなど自らのミス
で第3ゲームをブレークされたこのセット、気持ちが守りに入りそうなところでの大胆な攻めだった。
渡英前、国枝は先の五輪で最も印象に残った選手に、体操男子の内村航平(コナミ)の名を挙げた。
「王者として臨む立場が僕に似ていたので気にしていたが、彼は終盤にかけて強くなっていった。本当に
強かった」。団体総合では本来の力を発揮できなかった内村が、その後の個人総合で日本選手では28
年ぶりとなる金メダルを獲得。王者の修正能力と精神力に感服していた。
決勝は8日。連覇への重圧の中で、国枝もまた、自らをコントロールできている