子供は幼児のころはとりわけかわいい。泣こうが、風邪で熱を出しハラハラさせられようが、苦労はかわいさを与えてくれているわけだから、なんともない。
抱き上げても軽々というころから、次第に重くなる。成長ははやい。でも、だっこしようが、肩車しようが重みに負担感はない。
しかしだ、それがいつまで続くか。
”・・・背中で、
「ふふん」という声がした。
「何を笑うんだ」
子供は返事をしなかった。ただ
「御父(おとつ)さん、重いかい」と聞いた。
「重かあない」と答えると
「今に重くなるよ」といった。”
(夏目漱石、『夢十夜』)
そうだなあ。いまに重くなる。教育にもカネがかかる。懸命に働いて稼がなくちゃならないだろう。
からだの重みじゃあなくて、ズンとくる子育ての重みが四方八方からやってくるのかもしれない。
それでも親は文句はいえない。たぶん、幼児のころのカワイサで十分に支払われているから。