周囲次第 | 拾い読みあれこれ

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きょ~も適度に息抜き、よいかげん。ゆっくり歩いて遠くまで

「天道(てんだう)言(ものいは)ずして、国土(こくど)に恵(めぐ)みふかし。人は実(じつ)あつて、偽(いつは)りおほし。其(その)心(し)ンは本(もと)虚(きよ)にして、物(もの)に応(おう)じて跡(あと)なし。是(これ)、善悪(ぜんあく)の中(なか)に立(たつ)て、すぐなる今(いま)の御(お)ン代(よ)を、ゆたかにわたるは、人の人たるがゆへに、常(つね)の人にはあらず。・・・」
(西鶴、『日本永代蔵』、『日本古典文学大系』48、岩波書店、p.33.)

人間は誠実なところもあるが、同時に嘘・いつわりも多い。なんでそうなるかといえば、もともと人間の心の芯は空虚、空疎で、周囲に影響されるだけ、と。周りのあり方で誠実にもなれば悪にもなるということだなあ。人間の芯が空っぽだからそうなるというわけか。ゆたかに暮らしている人は優れた、人の人たる人だからで、普通の人ではないと。我ら普通の衆庶の場合、空っぽの心を周囲の動きにつれて揺れて揺らして、誠実であるときもあればそうでないときもある。たしかに心に形もなければ臭いもない。その形のないもの、外の世界に感応するだけか。そう考えると世のうつろいも風向きも、そうした人の作るものなればこそと思える。