良い目にあって、こんなうれしいこと、一度といわず二度、三度、と思うのは人情だが、まあ、もう一度はないもんだな。
和田信義、『蹴らない馬』に収録の「人間の馬鹿」という詩にこうあったな。
あゝもう一度
若い美しい母の懐に抱かれて
あゝもう一度
少年の日にかへつて
あゝもう一度
熱烈な恋人を求めて
あゝもう一度
もう一度・・・・・・・
人間はみな
かう云ふふうに馬鹿なんだ。
特段、少年のころの若い母や熱烈な恋人でなくとも、もう一度はあるな。バクチで勝っても負けても、勝ったときのうれしさもう一度で、もう一度負け、さらに負けと。馬鹿だといわれようが、もう一度。たまに勝たせてもらうときもあるから、始末がわるい。