「・・・見らるゝ通りの貧しき暮し、壁の崩(くずれ)を繕(つくろ)はぬは、月を灯火にかふる為、唯(ただ)沢山(たくさん)なは筧(かへひ)の水と借銭(しやくせん)のみ。・・・
(山東京伝、『本朝醉菩提全傳』)
落ちぶれてくると、壁が崩れてきても修繕できない、家で灯す灯火もなければ、月明かりを灯火代わりにするのに好都合となぐさめるほかない。
筧とは木などをくりぬいたもので導水に使う。たしかにたくさん水は流れていようが、昨今は水はただではない。
だからたくさんあるのは借銭だけか。
まあ衰退途上の我が国はそうなって行くかもしらんな。