売り旬 | 拾い読みあれこれ

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「「小判は売(うり)しゆんか」と相場(さうば)聞(きく)など、さながらのけがねのやうに思はれける。さてもおそろしの世や、うかとかし銀ならず、仲人まかせに娘もやられず、念を入(いれ)てさへそん銀おほし。
(西鶴、『日本永代蔵』)

「売りしゅんか」とは今が売り頃かどうか聞いている。小判を売買して金銀交換の相場が小判市として立っていたが、そこでいま売ったほうがいいかというわけ。しかしそう聞いてくるのはもしや、「のけがね」かと。破産して債権者に提供すべき資産を隠しておく手口、近世大阪にもあったようだ、債権者団から金銀を隠し疎開させるのが「のけがね」。

まあうかうかカネを貸すこともできぬほどの、おそろしの世の中。まあ何時の世もそうだな。