NO.613
「希望が死んだ夜に」
著者:天祢涼
読了日:2020年12月16日

物話:
巡回中の警官が一人の少女を逮捕する
首をつって死んでいる少女B
自分が殺したと自供する少女A
殺害は認めるものの、動機に関して一切黙秘を貫き通すA
AとBには、学校での交流関係の証言も獲られない
そんな最中、判明する死亡鑑定では「自殺」の可能性が高いとなるのだが......
二人の評価は対照的
少女Aは貧困家庭で学習意欲も低く教師からは意欲無しのレッテルを貼られていた
一方、少女Bは裕福な家庭で育ち容姿もよく、クラスでも人気の優等生
あくまでも殺害を主張するA
いったい、この二人の接点は?

読後の感想:
あまりに現実感がある、それだけにありふれたことと流せない
心に引っ掛かりがあるのだ
何だろうこの作品は、大人になった自分だからわかるのか、やるせなさ、無力感、敗北感などの様々な負の感情をぶつけられる
どうか生きた彼女に、「信じられるもの」を与えてほしい
どうか信じたい人を失ったあの子にも、「立ち直る支え」を与えてほしい

印象に残ったことばたち:
「違いますよ。私は、別に別に黙っていたわけではない」

「いまのが『違いますよ』の真意です。『思っていた』のではなくて、『思いたかった』のでしょう」

「あの年ごろの子どもたちにとって、いじめは最高の娯楽です。......」

でも、きっと三浦先生の言うとおり「アフリカの子ども」に較(くら)べれば贅沢なのだ。

ページ数
268(単行本)
読みやすさ
3(満点3)
わかりやすさ
3(満点3)
ストーリー
3(満点3)
テンポの良さ
3(満点3)
意外性
3(満点3)
私個人の好み
4(満点5)
合計
19(満点20)

2020年45作品目

つぶやき:
人は、他人から見れば些細なことであろうが
掛け替えのないモノを失ったと感じたなら
生きる意味をなくしてしまうこともある

本当は、その立場で無ければわからない

当然、希望を失った後になっても生きなければいけない
その意味などわからなくとも
死にたいわけではない、ただ、生きていたくないだけなのだから


次に読む本:
桐野夏生 著「路上のX(エックス)」