NO.605
「カササギ殺人事件」
著者: アンソニー・ホロヴィッツ
訳者:山田蘭
読了日:2020年11月28日

特徴:
この小説は2重構造になっていまる
上巻は、虚構の中の虚構世界の推理物語になっています
下巻は、虚構の中の現実世界で起こる事件を推理する
つまり二つの世界に、それぞれ探偵、又は探偵役が居り捜査を行い
読者は、その二つ世界には密接なつながりがあることを知る
上巻での解答を知るには、下巻の世界の謎解きが必要であり
同様に、下巻での世界の結末には上巻の世界の欠けたピースが必要なのです

読後の率直な感想:
まず、自分の得意としていない海外ミステリーの上下巻に及ぶ長編小説を読み切ったことに満足感があります
さらに、この度の読書が、これまでに体験したことがないようなモノであったことに独特の高揚感と達成感がありました

読中に思ったいろいろ:
冒頭からアンソニー・ホロヴィッツ著の作品のはずなのに、アラン・コンウェイ著となっていることに困惑し、とりあえず読むことを強いられた
上巻を読む際に苦労したのが、虚構の世界の事件の関係者の多さと、出来事の時系列の混乱でした
作中に登場する人々は何月何日の何時にどこでどうしたとは証言しないために、読者はメモを取らずには把握するのが難しい(実際私はカレンダーのようなメモに書いて頭を整理しました)
そして、上巻の最後には作中の探偵が意味深なセリフを吐いて下巻へつづく
真相を早く知りたい読者は、探偵の次に続く言葉を求めているのにもかかわらず、下巻は別の世界へいざなわれる
モヤモヤとお預けを食らった状態のまま、次は素人探偵の話の世界を旅することとなり、下巻中盤がこの小説の「耐え」のポイントでしょう

おすすめな対象読者は:
この度、私もこんな名作を読書できたことをうれしく思っていますが、ミステリー好きなら多少の苦労を惜しまないなら、どんな方でも読んでみた方がいいと思う価値のある作品だと思います
単純に誰が犯人か当てる楽しみだけでもいいのではないでしょうか
ゆえに、どんな読者も試してみて、向き不向きを検証してみるのもありだと思います

不満な点:
読者の中には、上巻は好きだけど下巻がどうな~という人もいるのではないでしょうか
下巻の主人公が好きになれなかったり、下巻の犯人が明らかにはじめから怪しかったり、現実の一般人が探偵のような行動をとることの不自然さを感じてしまう
読者は虚構の中だという暗示の中では、探偵役が事件関係者に問いただす行為が至極当たり前だと感じるのに、それが現実世界の出来事だと思うと妙にありえない行動に思えるのです
それは小説の中でも、主人公が現実と小説の世界の違いについて語られている部分もありますが、最後の方のシーンで、殺人を犯すという行為へのハードルの低さが不自然に思えて違和感さえ思いました


ページ数
上360 下375(文庫)
読みやすさ
2(満点3)
わかりやすさ
2(満点3)
ストーリー
3(満点3)
テンポの良さ
2(満点3)
意外性
3(満点3)
私個人の好み
4(満点5)
合計
16(満点20)

2020年37作品目

つぶやき:
海外ミステリーの魅力を少しずつですが、理解できて来たように思えてうれしいです
どんどん他の作品の魅力も発見したい


次に読む本:
綿矢りさ 著 「インストール」