戦後民主化の裏に見る秘かな検閲の影

                   薄井 一彰

 

一 GHQの短歌検閲 

プレス・コード(日本出版法)とは、戦後占領下の日本において、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)によって行われた、新聞出版活動を統制するため、一九四五年九月に発布された規則である。

※これにより検閲が行われ、一九五二年四月発効のサンフランシスコ講和条約まで続いた。

ただし、出版物に対するGHQの検閲は、最初は事前検閲であったが、一九四七年十月からは一部の新聞等を除いて、発行誌を提出して検閲を受ける事後検閲になり、一九四九年十月にGHQの民間検閲局(CCD)が廃止されることにより終了した。

この検閲に関わった米国メリーランド大学教授ゴードン・W・プランゲン氏の資料、プランゲン文庫のマイクロフィルムのコピーを、著者は国立国会図書館から取り寄せ、短歌一一一雑誌、三三一冊の膨大な資料に取り組んだ。しかも一部の英文と、それを和訳したものまで掲載した。

削除または掲載発行禁止の対象となるものとして、次の項目が提示され、発行者(社)に注意が与えられた。

一 SCAP❘連合国軍最高司令官(司令部)に対する批判 二 極東軍事裁判批判 三 SCAPが憲法を起草したことに対する批判 四 検閲制度への言及 五 合衆国に対する批判 六 ロシアに対する批判 七 英国に対する批判 八 朝鮮人に対する批判 九 中国に対する批判 一〇 他の連合国に対する批判 一一 連合国一般に対する批判 一二 満洲における日本人取扱についての批判 一三 連合国の戦前の政策に対する批判 一四 第三次世界大戦への言及 一五 ソ連対西側諸国の「冷戦」に関する言及 一六 戦争擁護の宣伝 一七 神国日本の宣伝 一八 軍国主義の宣伝 一九 ナショナリズムの宣伝 二〇 大東亜共栄圏の宣伝 二一 その他の宣伝 二二 戦争犯罪人の正当化および擁護 二三 占領軍兵士と日本女性との交渉 二四 闇市の状況 二五 占領軍軍隊に対する批判 二六 飢餓の誇張 二七 暴力と不穏の行動の扇動 二八 虚偽の報道 二九 SCAP または地方軍政部に対する不適切な言及 三〇 解禁されていない報道の公表等。

( 江藤淳『閉された言語空間―占領軍の検閲と戦後日本』)

本書は四章からなり、第一章でGHQの短歌雑誌検閲の実態を述べ、第二章は東京、第三章は大阪、第四章は福岡の各検閲局の具体的な短歌雑誌検閲内容が詳細に記されている。