全体的な感想♪
手塚治虫原作「七色いんこ」、私は原作を読んだことがないので物語についていけるのか少々気がかりで観劇です。
冒頭からアンドロイドが出てくる所までの展開がどう繋がっていくのかわからない所もありましたが、物語の後半近くになるといんこの半生が語られます。
初めの頃はコメディ仕立てのようですが、物語が進むにつれてシリアス度が増していく。
いんこが受けるいじめや児童虐待、アメリカ留学のいきさつといった展開を見るとこんなにシリアスな物語だったとは… 思ってもみませんでした。
私が観劇したのは初日開けて2日目、最初の頃は幾分硬さが見られたものの、
キャストを見ると知らない方ばかりでしたが皆さん上手い!
若い方ばかりでどうなるのかと思っていましたが、発声はしっかりしているしダンスはキレキレ、歌手の方の歌がとても上手でした
おおまかなあらすじ♪
「ハムレット」の初日を間近にした稽古場面から舞台が始まるが、主役が帰国しない上に逮捕されたという知らせが入る。
急遽、代役として白羽の矢が立ったのが代役専門の天才役者にして泥棒の“七色いんこ“(七海ひろき)
いんこを追うのは上司命令により、やむなく任務についた千里万里子(有理沙瞳)
初日に招待客として現れるのは「クワガタ財閥」の会長鍬形隆介(郷本直也)
新解釈による「ハムレット」、そこには思いもかけぬ展開が待っていた。
七色いんこ(七海ひろき)
代役専門の天才役者、観客から盗みを働くのを劇場と劇団が見逃すことを条件に、どんな役でも引き受け見事に演じる。
実は鍬形財閥の息子で本名は鍬形陽介、家を飛び出し行方不明となっている。
青い髪の鬘にサングラスといった異色ないでたち、なぜこんな風貌なのかというと、それはお芝居の師匠であるピエロのトミーから受け継いだものだったんですね。
それにしても、劇中で演じられるハムレット役のかいちゃんの素敵なこと!
赤が差し色の黒いお衣装に映える長めの淡い金髪?に縁どられたかいちゃんの美しさといったら、なんてカッコいいんでしょう
すらりとした立ち姿に、小さなお顔・頭身バランスの良さが目立ちますね~
現代物もよいんですけど、こういうカッコいいかいちゃんが観たかったんだなと今回あらためて思いましたね。
それから、テーマ曲である「To be,or not to be. 」
制作発表会で披露された曲ですが、なぜこの歌詞なのかずっと疑問でした。
劇中で「ハムレット」が上演されるからなんですね。
これは演出・作詞の三浦 香さんが伏線として張られていたんですね、上手いなあ。
キャストさんたちに見られる小芝居のおもしろさも三浦さんによるものなのかな?とても楽しかったです
千里万里子(有紗瞳)
上司命令によりやむなくいんこを追う刑事、射撃や武術に優れているが早とちりでケンカ早い、鳥アレルギーを持っている。
過去に事故により記憶を失い、養父に引き取られ刑事になる。
いんこと初めて対面した時に恋心を抱く。
宝塚時代から実力派娘役さんだったくらっち、今回初めて退団後の舞台を観れてうれしいです
よく通る発声に美しい歌声、加えて芝居力の高さ
役によってガラッと雰囲気が変わる芝居上手さんですね。
ピエロのトミー(藤田 玲)
いんこがアメリカ留学させられて逃げ出したものの、露頭に迷い行き倒れていた時に助けた人物。
小劇場でパントマイムを披露している、いんこのお芝居の師匠。
戦争で巨万の富を得た長者・バーミンガムへの復讐を果たすため、バーミンガム糾弾の公演を決行する。
彼は役者として、役者の武器でバーミンガムと戦った。
回想シーンで彼の最期を観るかいちゃんの目から一筋の涙が…
戦争がなければ穏やかに過ごせる人だったでしょう、彼が悲しくて哀れでなりませんでした。
鍬形隆介(郷本直也)
クワガタ財閥の会長、金がすべてで邪魔になるものは手段を選ばず消していく非道な人物。
いんこの本名・鍬形陽介の父、息子は役者になりたい夢を持つが強制的に跡取りにしようとする。
自分の悪事を暴いた万里子の新聞記者である父や母を自動車事故に見せかけて亡き者に。
事故のトラウマにより万里子は鳥アレルギーになってしまう。
絵に描いたような悪役ですね。
悪役なんですけど、ご本人はきっとおもしろい方なような気がします。
ダンスしている時に小芝居を混ぜていたりして、観ていて楽しい
小声のセリフでもはっきり伝わる、上手な役者さんですね~
物語が進むにつれていんこの謎が知らされていきます。
いんこの子供時代、周囲に馴染めずいじめられていたり、家庭教師から虐待を受けていたこと。
中学生になり、演劇好きなモモ子ちゃんと出会い心を通わせ恋心を抱いたこと。
鍬形の悪事を暴いたモモ子ちゃんの父親もろとも一家を鍬形が殺害しようとしたこと。
殺害計画を知ったいんこが一家に知らせたが、“頭を冷やすため”アメリカに強制的に留学させられたこと。
万里子の記憶が戻り彼女は恋心を抱いたモモ子だったこと。
いんこが鍬形陽介だったことを、物語の終盤、2人はお互いに知ることになります。
いんこはモモ子の両親の復讐を果たすため、師匠であるトミーがしたように自分も役者として鍬形を糾弾します。
物語は、いんこが万里子に「(舞台を)最後まで見届けてほしい」と伝え「ハムレット」の幕が上がる所で終幕と
なります。
彼は役者としての武器を使い、最後まで役者として生きることを選びました。
いんこはどうなってしまったのか、結末はわからないのですが原作も生死不明なんですね。
観劇後にかいちゃんとくらっちのデュエットショーがあったのですが、それを見て復讐を果たしたいんこは狙撃されてしまったのではないかと。
宝塚だと悲劇の結末に昇華のシーンがよくあるのですが、それと同じではないかと思ったんですね。
叶わないいんこと万里子の恋に見えて切なくなりました。
初めはコメディに見えた作品でしたが、思いもよらぬ展開に驚き、いろいろ考えさせられました。
複数回観るとさらに理解が深まりそうです。
長い原作を上手く纏められていた脚本に脱帽です。
かいちゃん