『邂逅(めぐりあい)』・最初であり、頂点の、甘い恋の映画・1939年度作品 | 吐夢の映画日記と日々の雑感

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       『邂逅(めぐりあい)』 1939年  レオ・マッケリー監督

 

 

                         

 

 

 

      
かの淀川長治さんが愛した作品、【邂逅(めぐりあい)】を取り上げます。


ミシェル         ・シャルル・ボワイエ


テリー       ・アイリーン・ダン


ミシェルの祖母  ・マリア・オースペンスカヤ

                        

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・・・・ストーリー・・・・

 

 

巴里のプレイボーイ、ミシェル・マルネーは、

 

ヨーロッパからアメリカへ向かうナポリ号の中にいた。

アメリカの大富豪の令嬢ロイスとの婚約が決まったのだ。

彼は世界中のラジオニュースで紹介される程の有名人だった。

その船旅の中で、

 

ボーイが電報を持って、ミシェルを捜している。そんな光景を見て乗客はミシェルの乗船を知る。

 

若い女性が三人、サインを求めてきた。快く書いたミシェルの色紙には”君たちはとても美しいが、

 

マナーは最低だ”と

 

フランス語で書いてあったそうな。

 

廊下で電報を読んでいて紙が丸い小窓を通って飛んで向こう側へ落ちた。

 

それを拾った女性が通り過ぎようとするとミシエルに呼び止められた。

 

”僕の電報だ”と窓越しに言うミシェル。

 

”自分のだという証拠はあるの?”とやさしく尋ねる女性。

 

”僕の名前がⅯ・マルネーだ”。

 

”あなたがあの有名な・・・何て書いてあったかきちんと言える??”

 

こうだった 美しい夜景、コモ湖の雷雨、そしてあなたが忘れられない・”

 

”あなたのことなのね?””

 

紙を受け取って”ウイ”

 

にこっと笑う女性。”恋愛は野球より面白いと?”と言って去った。プレイボーイに対する皮肉ですね。

 

煙草を加え、早速女性を追って探し始めるミシェル。

 

(ボワイエって歩き方がとても素敵!)

 

見つけた!   ”実は悩みがあって・・”

 

女性  ””コモ湖で羽目を外したりするからよ””

 

”告白したい”

 

”よした方がいいわ。わたしはおしゃべりなのよ。”

 

ミシェル ”誠実な顔だ 信用できる・”

 

女はコンパクトを開き自分の顔を眺めてみる。そして”ええ、まあ・・”と答える。

 

ミシェルは女性の腕をつかみ引っ張って歩き始めた。そして客室へ帰るという彼女について行った。

 

自分の部屋に案内するつもりだったミシェルだが、

 

”ここがわたしの部屋よ、どうぞ・・”とお邪魔をしてしまった。

 

”Rで終わる月は男性の部屋へは入るな  母の教えなの。”

 

”きっと美しい方だろうな。君の名は??”

 

”テリー マッケイよ”

 

”船内で9日間どうして過ごそうかと困っていたんだ。魅力的な女性がいなくてね。君は僕の恩人だ

 

     9日間付き合ってくれ、明るいシャンパンのような日を過ごそう!”

 

一人旅を楽しむ貴婦人、テリー・マッケイはこうやって、ひょんなことでミシェルと知り合ったのでした。

 

 


ジョークの巧いテリーに、ちょっと興味を持ったミシェル。


テリーはニューヨークのナイトクラブから身を立てた歌手で、

元は恋人で実業家のケンが何かと世話を焼いていた。


船内での毎日は楽しいが、プレイボーイの今後の成り行きに船内の乗客たちは

          

興味津々で噂に上る以上の視線を感ぜずにはいられないほど。

 

      



でも、

テリーは徐々にミシェルを意識していく。


船はマデイラ島に数時間停泊することになっていた。島には

ミシェルの祖母が使用人の家族と住んでいる。

二人は明るい日差しの中、

ミシェルの祖母の家を訪ねる。

明るい太陽の元、緑に囲まれたアンテイークな屋敷をテリーは一目で気に入り、

屋敷に続く聖堂で祈りをささげた。

 

    

ミシェルは再会の喜びに溢れる笑顔の祖母をしっかりと抱きしめた。

 



使用人の子供たちにもこよなく優しいミシェルのもう一つの面を垣間見たテリーでした。


茶卓を囲んだテリーは、ミシェルの祖母からミシェルの幼少期の話を聞き、

また彼女がミシェルの身を案じ、

彼を変えるような善き伴侶をと出会うことを望んでいることを知る。

 

そして彼の描いた絵を見ていると、才能があるのよと祖母が言った。

 

ミシェルが画家になりたかったことを知るテリーでした。

 




去り際に、祖母の伴奏で、テリーが『愛の喜びは』を歌った。

 

そして汽笛がなる、出港の合図だ。

 

冷えるからとショールを肩にかけてあげると”お好き?”

 

”ええ・・”

 

いつか譲ってあげるわと祖母は言った。

 

 

 

 

     


船に戻った二人は、初めて愛を確かめ合い、しっかりと抱き合うのでした。

 

テリー ” 荒波に漕ぎ出すのね!”

ニューヨークへの到着を明日に控え、

互いに眠れぬ夜を過ごしていた二人は、デッキに出た。

 

  


ミシェルは、一人前になった半年後に、プロポーズがしたいから、と告白する。

翌朝、二人は半年後の7月1日の5時に、

エンパイアステートビル102階の展望室での再会を誓いあって下船していった。

船が入港すると、二人は出迎えに来た互いのパートナーを見て、

互いに複雑な表情を見せる。


二人は互いのパートナーのもとに向かうが、

ロイスは成金のような品の無いな娘だった。

    



テリーはやがて婚約解消の報道を見ていて、

ミシェルが約束を果たそうとしているんだと、確信を持つのでした。

 

    


一方のテリーも自立すべく、フィラデルフィアのホテルで

♪Sing My Heart♪を歌って、専属歌手の職を得た。



ミシェルは看板描きの仕事を始める一方、彼の絵画も売れ始めた。


互いにエンパイアステートビルを見つめながら、


・・・・ついに約束の7月1日がやって来た。


テリーはブティックで買い物をして、展望室に向かおうとしていた。


ところがブティックの店員が気を利かせてケンに連絡をしてしまう。


そのため、約束に遅れそうになったテリーは気が気ではなく急いだ。

エンパイアステートビルを見上げていて、走りくる車に気づかずに、交通事故に遭ってしまう。


それを知らないミシェルは何時間も彼女を待ち続け、やがて・・振られたと諦めてしまうのだった。

一命を取り留めたテリーでしたが、まだ半年後の検査が必要な状態であり、

このことをミシェルに知られたくないし、この姿を恋人に見せたくない、快復するまでは・・


ミシェルには連絡しないようケンに頼む。

失意のミシェルにマデイラ島に向かい、

亡くなった祖母の遺品のレースのショールが、テリーに遺されたことを知る。


一方、車椅子で療養生活を送るテリーは、

ボランテイアで、孤児院の子供達に歌を教えていた。


それを見た孤児院長は、テリーを正式に、孤児院に雇い入れる。

このあたり、レオ・マッケリーらしい、『聖メアリーの鐘』や『わが道を往く』の演出と似てほのぼのさが

めちゃくちゃ現れていますね。


そして・・・・

時は流れて、クリスマスイブの日。


元婚約者だったロイスは、ミシェルを探し当てて

演劇に誘った。

劇場にはケンとテリーも偶然来ていて、

二組のカップルは鉢合わせしてしまった。


テリーの足は完治しておらず、”今日が初めての外出の日だったのに 残酷だな!”とケンは言った。

ミシェルとテリーはしばし見つめあうが、

何気に通り過ぎ、車いすには気づかないミシェルでした。


元恋人のケンは彼女に援助を申し出るが、テリーは頑なに断る。


一方のミシェルも、ロイスとは何事もなく分かれる。


ミシェルが向かったのはエンパイアステートビルだった。

想いでの場所・・今でも愛しているテリーのことを。


イヴの夜、子供達への歌の指導を終えたテリーのもとへ、


ミシェルが訪ねて来た。

      
二人は、約束の日、「ミシェルが約束を果たさなかった」ことを前提に

会話を始める。


”ごめん、あの日僕は102階へ行かなかったんだ”

”わたしは待ったわ”とテリー。


嘘とうそをつつきあうわけでもなく、会話をした。


ミシェルは船の切符を買い、今夜中に旅立つ予定だと告げた。


去り際に、彼はクリスマスプレゼントだと言って、祖母の形見のレースのショールを手渡すと、

テリーは肩にショールを羽織った。

その姿を見て、ショールを羽織った君を絵に描いたよ と話す。


””評判のいい絵だったんだよ。

その絵に、引かれた女性がいてね、僕の想いに共感したが、貧しくて買えないと聞いた。

だからあげたんだー-その女性は足の不自由な女性だったと・・ふとー-・・脳裏に浮かび・・・・

ミシェルは口ごもってしまった。


もしかして??・・・・


まさかと思ったミシェルは、彼女の部屋を見回した。


そしてその絵画を見つけるんですね。


全てを察したミシェルは、テリーに歩み寄り、

”・・・なぜ黙っていたんだ、なぜ君がこんな目に、なぜ僕じゃなかったんだ・・・”


真実を知った二人は微笑みを交わすのだった。


””あの時、102階を見上げたら、そこに天国に一番近いあなたがいる・・・

急いだわたしは車に跳ねられたの・・”


ミシェルはすべてを知り、しっかりとテリーを抱きしめるのだった。。




ー----------------

”102階を見上げたら、そこに天国に一番近いあなたがいる・・・”


この台詞は映画史上で愛を伝えるセリフとして最も素敵なセリフではなかろうか。


♪Sing My Heart ♪ は、ハロルド・アーレンがアイリン・ダンのために作曲したものですが

ダンの歌が見事。


映画の根底には必ず愛が必要とされるが、恋愛を

直球で扱ったしかも1939年です・・そう多くはないと思います。


1939年に作られた、この邂逅(めぐりあい)は純粋にメロドラマとして作られた最初のもので

そして 頂点の 作品だと思います。


後に作られたこの手の作品は、これに枝葉がついたり、シチュエーションを変えただけのものであり、

清らかな情緒ととろけるような甘い香り、温かさ・・どれをとってもこれを超えるメロドラマはないであろう。

1940年の哀愁

1945年の逢びき

1957年の旅情

などなど数々あれど、

本作品が最初なんです。


シャルル・ボワイエの色気と伊達さと風格。

ダンの気品と飾り気のない自然体の美しさ。


もうひとつ、

祖母に扮するマリア。オースペンスカヤのすばらしさです。


乗っている船が寄港した

マデイラ島に住むこの祖母の元をテリーを伴って訪れるミシェル。

このシーンが私は一番好きです。


アンテイークな屋敷と聖堂、こじんまりではあるがどっしりとしたインテリア。

全てが温かく慈愛に満ちた空間なのです。


そして白いレースの素敵なショールを肩にかけた祖母の溢れるようなミシェルへの笑み。


【ここは パーフエクト ワールドです】とテリーが放つセリフ。


プレイボーイのミシェルが見せる祖母への愛。使用人の子供たちに見せる愛情。

それを含めてのパーフエクトなんでしょう。


オーペンスカヤの弾くピアノに合わせて♪愛の喜び♪を口ずさむテリー。


祖母が  ”ミシェルは絵が巧い。身を守ってくれるパートナーが必要だわ”とつぶやくのを

聞いたテリー。そして


ボワイエとダンの見つめあう目と目の演技の妙。


汽笛の音が別れを促します・・・


前半の船内のシーンは結構軽やかに、おしゃれなセリフの連続でシナリオのすばらしさが伝わります。


後半はどうなるの?どうなるの??とひきつけられていきます。



二回もリメークされた作品ですが、やはりこれを超えることは出来なかったとわたしは思っています。


ー--ただ、デボラ・カーとケーリー・グラント作品も好きですし、それなりに良かったと思っています。ー--

そしてこの1957年の作品も同じ監督のレオ・マッケリー。

 

とてもゴージャスな作品になっていてカラーだし、素敵です。

 

でも映画の格から言えばやはりボワイエとアイリン・ダンの存在感で初期作品に軍配を・・


1939年に作られたこんな優雅な恋愛映画、日本が戦争の貧弱な準備に入ろうとした時代に作られた


余裕の国の作品なのです。

 

 

 

このラブロマンスがなぜ素敵なのかと言いますと。

さんざん女と浮名を流した男と
 

それまで結婚の理想像の中にしかいなかった女性が
 

初めて本物の恋をして、真剣に純愛を貫こうとする
 

現在には見ることが出来ないような大人のドラマであるからだ。

そしてそこに人生の厳しさが込められ、
 

あの頃の温かなアメリカ映画そのものの
 

世界が描かれているからだ。


シニア世代の方々に、もう一度見ていただきたい映画です。