『白い恐怖』・夢分析が恋人を救う・・ヒッチコック作品第三夜・・1945年度 | 吐夢の映画日記と日々の雑感

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    『白い恐怖』  アルフレッド・ヒッチコック作品  1945年度


『断崖』では、ヒロインが夫から殺されるのではないかという恐怖に追い込まれていくサスペンス。

『汚名』では、ヒロインが愛する人のためにスパイとなり、命を狙われる羽目になる。それを救う恋人への想い。


そして『白い恐怖』ではヒロインが恋人のために無実を晴らすため一肌脱ぐという展開。


 『鳥』、『めまい』、『サイコ』、『裏窓』といった代表作が誕生する前のヒッチコックが

ハリウッドに渡って間もないころに作られた三作品。ラブサスペンスという共通点が魅力でしたので

連続で取り上げてみました・


イングリッド・バークマンのエレガントで知性あふれる美しさと、

 

謎に包まれた若き男、グレゴリー・ペック。

 

この方あまり表情が豊かではないのかしら??


そして、サルバトーレ・ダリの斬新なデザインが融合した美しいサスペンス作品、モノクロ映像ならではの魅力。

まずはストーリーから・・・



ー---ー--

   精神分析とは、科学による情緒障害の治療法である。

   精神分析とは 患者を誘導し、ー-心の扉を開かせる

     患者を苦しめている問題が明らかになり、解釈されると病気と混乱は消え去るー---

そして魂は不条理な記憶から解き放たれるー---


舞台はアメリカバーモント州の精神病院。

コンスタンス(イングリット・バーグマン)はこの病院のただ一人の女性精神分析医である。



所長のマーチソン(レオ・G・キャロル)が辞めることになり、

新しくエドワーズ博士(グレゴリー・ペック)という人物が後任としてやってきました。

 




恋愛に興味がないと評判の女医コンスタンスは、歓迎会でエドワーズ博士を見た瞬間恋に落ちてしまいます。


堅物のコンスタンスは他のどの医者が誘惑しようと首を縦に振ることがなかった。

コンスタンスの瞬く間の変わりようで、

 

エドワーズ博士とのことはすぐに皆に感づかれ、揶揄を飛ばされるほど大胆に見えた。


歓迎会の席でコンスタンスのフオークの使い方を見て、明らかに動揺し、怯えているエドワーズ博士に

コンスタンスはエドワーズ博士の病気を疑った。

白地に縞のある模様を見ると発作を起こす奇妙な病癖だ。


翌日、父親を殺したと思い込んでいる患者ガームズ(ノーマン・ロイド)を診療した後、


コンスタンスはエドワーズに散歩に誘われました。

 



一気に二人の距離は縮まった。

持って行ったサンドイッチを食べて職場へ帰ると

一人が指に辛子がついているぞ、一人が髪に枯れ葉がついているぞ、とからかわれるほど。

色男はコンスタンスの心をつかんだかあ・・・という具合だった。


その日の夜、エドワーズが書いたサイン入りの著書を読んだコンスタンスは

 

エドワーズ所長室を訪ねます。


互いに惹かれていることが分かり抱き合う2人でしたが、

コンスタンスが身に着けていたガウンの縞模様を見たエドワーズが

発作を起こします。

そして、その直後、ガームズが自殺未遂を起こしたという知らせが届きます。


エドワーズも錯乱状態になってしまいコンスタンスは介抱するのですが、


彼が彼女に渡した書類のサインと、著書のサインが違うことに気づいてしまいます。


コンスタンスは彼がエドワーズ博士とは別人ではないかと思った。



だからと言って、彼を疑うどころか、彼を救おうとコンスタンスはエドワーズを詰問するのですが、



「自分がエドワーズを殺した」との一点張り、

そしてコンスタンスにもきつくあたるのでした。


精神に異常をきたしており完全に記憶喪失に陥っていて、自分をエドワーズ博士と

思い込んでいるに過ぎないことを発見する。


ただ彼の煙草入れにはJ・Bというイニシャルがあり、それが彼の本名ではないかと判断します。


記憶を取り戻したJ・Bは置手紙を残してニューヨークへ逃げました。
 

エンパイヤーステートホテル・・・

 

      ヒッチコックさんがいます。 

後を追ったコンスタンスは、彼女の恩師であるブルロフ博士(ミケル・チェーホフ)のところへオトコを連れていきます。

 

 




          

博士の家に宿泊したが、ベッドの縞模様や洗面台にできる白地の縞模様を見て、再び怯えるオトコ・



博士とコンスタンスの治療で分かったことは・・・

 


 

 

 

 

 

オトコが
窓の外に目をやります。・・雪が積もっています。子供がそり遊びをしています。雪の上に線が続きますね。

コンスタンスは言います。最初はフオークで書いた線だった。次がガウンの縞模様。

昨夜は白いカバー・雪の跡のことだったのよ。

エドワーズ医師はテニスやスキーが治療に役立つと書いていた。

  ”スキーの跡に何か秘密が・・・”怖がってたのはそれだわ。記憶喪失にも関係あるはず。

博士”スキー中の殺人か・・スキー場の特定をしないとな。夢の中に答えがある。メモを見ろ。”

天使・・谷・・・ガブリエル・ヴアリーだ。”


そして、


コンスタンスと共にガブリエル・ヴアレースキー場に向かいます。

スキーをするうちにオトコJ.Bは記憶を取り戻します。


自分の名前はジョン・バランタイン。

幼少期に弟を誤って殺してしまったこと.

エドワーズ博士は自分とスキーをしていて事故死したこと。


弟の死と博士の死を重ね合わせて彼は,罪悪感を抱いていたのです。

弟も事故死、エドワーズ博士のことも事故死だとコンスタンスは確信します。



ところがそこへ刑事がやってきます。


警察の調べでエドワーズの体から銃弾が検出され、

再びジョンに殺人の容疑がかけられ逮捕されます。


必死にジョンを助けようと分析というより推理します。

 

エドワーズが事故死した時にもう一人人物がいた・・・



病院へ帰ってから、マーチソン前署長に会います。

その時に彼がふと漏らした言葉・・・エドワーズのことは少し知っている。  え??

知っていればジョンが新所長としてやってきたときに気づくはずなのになぜ黙認していたのか?

コンスタンスの疑問は・・もう一人の人物とは・・マーチソン=犯人だと・・出した答えでした。

動機は??エドワーズにここの所長の座を奪われたことでした。



マーチソンを訪ねて謎の解き明かしをしていると、机の引き出しから握ったものはピストルでした。

〈一人殺すも二人殺すも同じだ〉。

だけど、コンスタンスは言います。

エドワーズ殺害は情緒不安定ということで情状酌量があり、死刑は免れるだろうが、

私を殺せば間違いなく死刑でしょう  と。

”警察へ連絡します!”と部屋を出ると、

残ったマーチソンの握る銃口は自分へと向けられたのであった。

 




ジョンとコンスタンスは新婚旅行に出発します。


ー----

見どころは、

巨大な眼球がこちらを見つめるカーテン・

時も方向も場所もわからないところにいる一人のオトコ・


(ダリのデザイン演出が光ります)

幻想的な世界が我々を魅了する。シャープで明晰なイメージ、長く伸びた影、無限の距離感

あらゆる線が驚くべき遠近法に収められて見事な空間を作り出した構図。形のない顔・・・



奇妙な病癖の原因を探ることからー-夢分析で解明していく失われた記憶の謎が

我々をハラハラドキドキさせ、最後まで引き込まれます。

推理のポイントは、

J・Bのイニシャル・・彼が持っていたシガレット・ケースに記された・・

火傷の謎は、謎のオトコの左手の火傷を手術した跡。

コンスタンスとブルロフ博士の二人でオトコが見た夢を分析し、オトコがなぜ?白地に縞模様を

見ると怖がるのか?過去との関係が明らかになってゆく・・・

印象に残るシーンー---

バーグマンとペックのキスシーン・・に続いて七つのドアが次々に開いてゆくイメージの連続。

二人がはじめての出会いの時・・バーグマンが一目でペックに一目で恋してしまう顔のショットが衝撃。

アップの映像が、2秒?3秒?時間が止まった!って感じ。



サスペンス王道の展開プラス・恋愛模様。

今回の探偵はコンスタンスのJ・Bへの一途な想いからでした。

夢分析による謎解きは珍しくもあり、きっと楽しめます。


で、三作投稿しましたが、作品としてはやはり『汚名』がひとつ群を抜いて素晴らしいとおもいました。

どうぞゆっくりご覧になってくださいませ。