溝口健二、戦後の最高傑作 『西鶴一代女』1952年度作 | 吐夢の映画日記と日々の雑感

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懐かしい名画、最近の気になる映画、映画への思いなどを綴っています。特に好きなフランス映画のことを書いていきたいです。

溝口健二監督  『西鶴一代女』

 

 

        

  

奈良の街はずれの とある荒れ寺。老醜を厚化粧で隠した娼婦のお春が見上げた羅漢の顔に

 

過ぎ去っていった男たちの顔を重ね思いを馳せるトップシーン。

 

この顔にお春の歴史がすべて見えるようだ。

 

ここは(欲望という名の電車)、ヴイヴイアン・リー扮するブランチ、そして(美女ありき)の

エマ=ハミルトン夫人と重なって見えますねえ。

 

 

 

 

 

    最初の男

 

京の御所勤めをしていたまだ10代のお春(田中絹代)は公卿の若侍勝之助(三船敏郎)に見初められ

 

逢引きをしているところを役人に見つかり、

 

勝之助は斬首、お春は両親とともに洛外に追放となる。

 

 

 

   二番目は

 

世継のいない松平藩の側室にと輿入れする。

 

 

嗣子を儲けるが、奥方の嫉妬にあい、

子を取られ、追い出される。

 

金策に行き詰った父親はお春を島原遊郭へ売り飛ばす。

 

瞬く間に太夫に・・

    

 

 

 

   三番目の男は田舎のお大尽。

 

    

お春を身請けするといってきたが、

    この男も贋金づくりであっさりとお役人に捕らえられてしまう。

 

 

   笹屋の住み込み女中となったお春。

 

最初は主人にも、女将にも気にいられたが、お春が遊郭にいたことがわかって、

 

女将の嫉妬が始まる。女将は髪を結って外見ではわからないがてっぺんが剥げていた。

 

お春の髪にまで嫉妬は及んだ。

 

お春を捉まえて引きずりまわし、元結をハサミで切れと迫った。

   

      

 

ここを追い出されると感じたお春は、自分の髪油の匂いを猫の

 

 

 

 

 

たまに嗅がせて、女房の寝所へ忍び込ませます。

しばらくすると、障子に髪油の匂いがついた女房のつけ毛を加えて逃げるたまのシルエットが映る。もう愛嬌ですよね。

でも女房は大変なことです。大騒ぎをする女房に、主人ははげを見てしまいます。

シルエットのたまは古典芸能などで人間が演じる動物のような愛らしさ、ユーモアが感じられ、ほほえましいです。
 

 

              ねこのたまです。→

 

     四番目の男

 

  

     

実家に戻ったお春は、扇屋の弥吉のもとへ嫁入りし、

 

ささやかな幸福な暮らしを手に入れた。

 

が、出先で弥吉が物盗りに襲われて殺され、無一物で店を追い出された。

 

五番目になり損ねた男

 

     

 

世をはかなみ、老尼の妙海の世話になることにしたお春。

 

が,借金の取り立てに来た笹屋の大番頭治平に犯されそうになったところを妙海に見られてしまった。

 

 

またもやここを出ていくのだった。

 

      六番目の男

 

嘉兵衛の番頭だった文吉と出会ったお春。彼と行動を共にするが、

 

文吉はお春のために店の品を盗んだことが分かり、桑名で捕らえられてしまう。

 

 

そうしていつしかお春は三味線を弾きながら物乞いをする女になっていた。

 

空腹の余りに倒れてしまったお春。

 

介抱してくれた二人の夜鷹の世話で、お春は街娼にまで身を落す。

 

 

長年の過労がたたったお春は病に倒れてしまうのだった。

 

 

 

そうこうするうちに、

 

お春を探していた母が現れ、

 

松平家の殿が亡くなり若殿が後を継ぐので、共に暮らせることになったという。

 

喜ぶお春だったが、過去を知られ、その夢は夢で終わってしまうのだった。

 

 

それどころか家中の者はお春を捉えて幽閉しようとしたが、隙を見つけて逃げたお春は

 

ただひとり巡礼の旅に出るのだった。

 

 

何ねんぶりに見たでしょうか。

 

絹代さんの変幻自在なのと確かな演技、身のこなし、大女優の貫禄というか。

 

この時お幾つだったんだろう。43歳。映画界に入って28年目です。

 

やはり引き込まれましたね。

 

ストーリーではなく田中絹代さんの世界なんですよね。

 

溝口監督も、絹代さんもスランプにあったときにこの作品に立ち向かって見事、成功したそうです。

 

今回じっくり見ましたが、あっという間の

 

136分でした。

 

映像のフレームがとにかく絵のようですばらしいです。

 

トップシーンでの絹代さんのお着物の柄は藤の花のように見受けましたが、

 

ここもカラーを感じる映像なんですよね。

 

松平藩主のお部屋様から島原の太夫、店のお内儀から夜鷹まで

 

絹代さんは、この作品に登場する女性を全て生きた。

 

           

 

  

 

       主なキャスト   

  • お春        田中絹代
  • 奥方        山根寿子
  • 勝之介       三船敏郎
  • 扇屋弥吉      宇野重吉
  • お春の父新左衛門  菅井一郎
  • 笹屋嘉兵衛     新藤英太郎
  • 菱屋太三郎     加東大介
  • 田舎大尽      柳栄二郎
  • 老尼妙海      毛利菊枝
  • 笹屋女房お和佐   澤村貞子
落ちていった人間を描いて素晴らしかったのは
『西鶴一代女』がベストワン
 
映像の美しさで『雨月物語』
脚本の面白さ見事さで
          『近松物語』
そして好きな順番は
①西鶴一代女
②祇園の姉妹
③近松物語
です。

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