夜は二人に何ももたらしてはくれなかった ≪夜≫ミケランジェロ・アントニオーニ監督 (伊)1961 | 吐夢の映画日記と日々の雑感

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映画は私の人生の 師...デス。
映画に育てられた...と
思うことも....
映画のこと、毎日感じた雑感なども
加えて綴りたい デス。

                   ≪夜≫
              ミケランジェロ・アントニオーニ監督
                 1961年度作  

              

 白黒の映像がカラーのように美しく、どの場面を切り取っても
垢抜けてモダン。
トップシーンは
近代的なビルの大きな窓に映る復興中のミラノの街を
カメラは下に下にと移動しながら映していく・
ここもうでアントニオーニ作品だと
うなずかせる・・・

愛の不毛三部作の一作に挙げられるが
切ない不毛の愛に身を置く女、リデイアの役は
ジャンヌ・モローを置いては考えられない。

   ≪情事≫ ≪夜≫ ≪太陽はひとりぼっち≫
≪情事≫≪太陽はひとりぼっち≫は以前取り上げました。

正直、他の二本は前衛的で見ていて肩が凝ったのですが、
今回≪夜≫を見てすーっと入っていけましたね。

作家であるジョバンニとその妻リデイア、
古くからの二人の共通の友で、病床にいるトマゾを見舞った。


廊下であった主治医の話ではもう、末期のがんで手術も出来ない状態だと
知らされた。


廊下を病室へと歩く二人の前に若い気狂いしたような表情の不気味な女が現われ
声をかけられた。

トマゾとジョバンニはかつて二人ともリデアを愛し、リデイアはジョバンニのほうを
選んだといういきさつがあった。


リデイアはトマゾに用があるからとジョバンニを置いて先に病室を出た。

カメラは上から病院の建物を映しゆっくりと一点を捉えて近づいてゆく。


病院の建物の壁に背を持たせ、上を向いてむせび泣くレデイアを映す。
         
かつては自分を愛してくれた男が間もなく死ぬことへの哀しみなのか?


それともジョバンニとの愛が覚めてしまった今でも


彼の優しい愛を感じてジョバンニを選んだことへの後悔の涙なのか??


ジョバンニは病床を後にすると、先ほどの女が待ち構えていたように声をかけ、


タバコの火を・・・・と言って近づくと、ジョバンニを病室へと

引きづり込んだ。力強く拒否すればいいものを・・成り行きに任そうとする
ジョバンニ。

こんなジョバンニだから浮気がしょっちゅうで夫婦仲は
冷めたのだろう。
ジョバンニの車に乗り込んだ
リデイアは
そんな切ない気持ちを代弁するようにカメラが映す。涸れた、だけど
美しいミラノの鋭利な近代的なビルと郊外の裏寂しい家並み。

その殺伐とした風景はまさに彼女の心そのものだった。
リデイアは車から降りてひとり真昼のミラノの街を歩き続ける。
何かをまさぐるように、求めるように。

そして夜が来る。
二人は別々の夜を過ごす。
 

ジョバンニは作家仲間のパーテイーで知り合った女性バレンテイーナに一目で
惹かれ一夜を過ごす。 

 

      
リデイアもまた若い男と夜を過ごす。
一夜明けたパーテイー会場の広い邸で遭った。
だが、二人の間には”夜”はなにももたらしはしなかった。     

”トマゾが死んだわ”

二人は邸を後に並んで歩いた・
そしてトマゾのことをリデイアは話した。

”昔ね、時々、トマゾが訪ねてきたの何をするでもなくじっとわたしを
見つめているだけだったわ.”

ジョバンニは言った。


”もう一度やり直そう”と・

          
リデイアはバッグから手紙のようなものを取り出して読み始めた・

”今朝 君より先に目覚めた   眠りから覚めるとき君の優しい寝息を感じた


顔にかかる髪の間から 閉じた目が見えた


   愛おしさが胸に溢れ 泥のような眠りを破って揺り起こしたくなった
 君の腕や喉は生き物のようだった


   その温かく乾いた肌にキスしたかった


でも   やめておいた  やはり起したくなかった  


僕だけの君が眠っているのだ  君の寝姿は僕だけのためにある


  君の純粋さは僕の身も心も清め  人生のすべてを 包み込んでくれた
          過去も未来もだ


僕は君と生きるために生まれ 今日まで来た  そして今
      奇跡を感じてる


僕を満たしていく 君の温もり 思い それらすべては今だけでなく
   今後も絶え間なく 僕に溶け込み続ける”


  聞きながらジョバンニはイラついている。そんな手紙を聞かされて・・・


   リデイアは続けた


  ”リデイア 愛しているよ  あまりの感動に涙があふれてくる
    これからの人生はこういう奇跡の連続だろう 君は


僕のものというより 僕の一部だ  誰も切り離すことは出来ないし
  日々の倦怠に脅かされることもない  君は目覚め 笑顔で僕にキスをした


 僕はゆるぎない愛を確信した年月や倦怠にも屈せず輝く日々を
    ともに生きていくのだ”


    リデイアは涙を浮かべ それが頬を伝っても 


ぬぐおうともしなかった。


   ジョバンニは言った。
          ”誰の手紙だ?”と。
  リデイアは がっかりした顔をしてジョバンニを見た。
        

        ”あなたよ!”


うろたえ、恥ずかしくなったジョバンニ。


やさしく手を握るリデイア・

         


書いたことさえ忘れていた恥ずかしさにうつむいたままのジョバンニは


夢中でリデイアを抱き締め、”もう愛していないの”


”愛してないと言って!”というリデイアを


押し倒すのだった。

全編、望遠を使ったような大きなくっきりとした映像。
モニカ・ヴイッテイ扮するバレンテイーナとモローに囲まれた場面の
ふたりの貫禄は
マストロヤンニを圧倒していた。
この二人の女性、スタイルも抜群ですね。堂々とした仕草
モローさんはいつもふてぶてしいほどの演技ですが、今作では
その中にかわいらしさが垣間見えました。

    ベルリン国際映画祭でグランプリを受賞している。


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