《はなれ瞽女おりん》・36歳の岩下志摩さん・1977年度作品 | 吐夢の映画日記と日々の雑感

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ご訪問ありがとうございます。

今年77歳の映画好きでございます。

懐かしい名画、最近の気になる映画のことを
日記形式で書いています。
戦前のフランス映画が大好きです。
基本、鑑賞後の感想ですのでネタバレが殆どです。
ご了承くださりませ。

《はなれ瞽女おりん》  1977年度作品

 



こんばんは。いつもご訪問ありがとうございます。
 

水上勉原作の映画としては、わたしのページでは
 

  過去に 《雁の寺》、《五番町夕霧楼》、《湖の琴》、《越前竹人形》
 

そして《飢餓海峡》を取り上げています。

それぞれ監督は違うもののいずれも映画史上に残る名作として残っています。

さて、今夜の水上作品はヒロインおりん役の岩下志摩さんの夫君の
 

篠田監督。
 

カメラは宮川一夫
 

音楽 武満徹
 

その美しい詩情溢れる画面は《砂の器》髣髴とさせ、
 

相手役の原田芳雄の男臭さの中の色気。こんな雰囲気を出せる男優が
 

今いるだろうか。

 

 


そして瞽女さんとはいえあまりに美しい志麻さん・凛としながらも愛らしく
 

ドラマの中で原田さんが言うように、仏様か観音さまか・・・


たとえおりんの上を何人の男が通り過ぎてゆこうが不潔感がない。
 

孤独な女旅芸人おりんと
 

脱走兵との過酷な愛の逃避行を描いたヒューマンドラマ。
 

北陸の美しい四季の移ろいを背景に
 

男と女の悲恋が叙情的に描かれている大好きな作品です。 

    キャスト
 

岩下志摩     おりん
原田義雄     平太郎
樹木希林     一瀬たま
安部徹      別所
奈良岡朋子    テルヨ
小林薫      陸軍軍曹

   あらすじ
 

大正7年春のこと・
 

はなれ瞽女として一人で各地を放浪しているおりん。
 

旅の途中で出会った男ーー平太郎に自分の過去を語って聞かせるところから
 

物語は始まります。
 

雪深い海沿いの集落に住む盲目の少女おりんが、母を失ったのは
 

6歳の時でした。
 

天涯孤独となってしまったりん。
 

知り合いの薬屋の男は、少女りんの身を案じ、
 

盲目の女芸人たちが共同生活をしている瞽女(ごぜ)屋敷に
 

おりんを連れていきます。
 

そしておりんは厳しいが優しくもある親方のテルヨや
 

先輩の姉さん達と一緒に各地を転々とする生活が始まるのでした。
 

いわゆる門付巡業です。



お馴染の家を訪ね、唄と三味線でいかしこのお米か銭をもらうのです。


辺鄙な田舎では当時、娯楽や、慰めものもなく瞽女の来訪を心待ちにする家も
 

少なくなかった。
 

テルヨは、礼儀作法や三味線、唄などの芸をりんに教え込んでいきます。
 

勘のよいおりんは覚えも早かった。


瞽女が絶対にしてはならないことは、男に恋をしたり、
 

身を任せたりすること。それをやれば屋敷を追われることになる。
 

それはテルヨがいつも瞽女たちに口をすっぱくして言っていることだった。
 

瞽女は神様の嫁として盃をいただくという儀式があった。

盲目である瞽女だってオンナ。
 

男に興味をもたないはずはなく、一人の姉さんが妊娠をして
 

屋敷を追われていった。    これが、はなれ瞽女 になるということだった。
 

時は流れ、美しい娘に成長したおりん。
 

酒の席に呼ばれることも多い。男達が彼女を誘惑し始めます。
 

男と寝てはいけないという親方の教えに背き、
 

おりんはある晩、流されるまま男と寝てしまうのでした。


おりんは悪気も後悔もなく自然の成り行きだった。
 

が、掟を破ったりんは
 

瞽女屋敷を追い出されたのでした。
 

  はなれ瞽女となってひとり芸を売って旅をして
 

生き延びてきたのでした。

そんな中で出会った平太郎はおりんは同じ、
 

天涯孤独だった。それは平太郎が言った身の上だった。



 

平太郎は、道中、同じ宿に泊まっても決しておりんに触れることはなかった。
 

平太郎が言うには
 

2人が男と女になってしまえば長くは続かない。
 

自分はおりんのことを仏様のように思っている。
 

一緒に旅を続けるだけで幸せだというものだった。
 

そしておりんに瞽女を止めさせ、養って行きたいと話すのだった。 
 

だが、おりんは、寂しさから
 

平太郎に抱いてほしいと懇願するようになります。
 

しかしおりんを失なうことを恐れる平太郎は、
 

やはり、決して彼女に触れようとはしないのでした。
 

おりんに楽な暮らしをさせてやりたい平太郎は
 

下駄を作って売り歩きます。


平太郎は下駄屋を営む両親の元で下駄作りを覚えていたのでした。
 

おりんとはいつしか本当の兄妹のような強い絆で結ばれていきます。
 

平太郎は人前でもおりんに”あんさま”と呼ばせました。
 

しかし、旅先で馴染みになった別所と名乗るクスリ売りから
 

”おまさんたちは本当の兄弟か?”・・・と明らかに疑い、にやけた目で
 

おりんを眺め必要以上に親切にする。
 

そんな別所に平太郎はやきもきしておりんにあいつに気を許すなと
 

諌めますが、男に何の危機感も持たないりんには平太郎の心配は
 

届かないようでした。
 

そんな折、露店の並びに、許可なく店を出したことで
 

平太郎がヤクザ達に絡まれ、暴力沙汰を起し、
 

警察に連行されてしまいました。
 

一人取り残されたおりんは薬売りの別所に
 

平太郎を諦めて自分と一緒に富山へ行こうと誘われます。
 

元々下心のあった別所は、ひとり心配そうにするおりんを無性に
 

抱きたくなります。

 

山林で別所に迫られたおりんでしたが、
 

一概に男が悪いでもなくすんなりと別所を受け入れてしまうのでした。
 

別所が去ってさほど時間も経たぬ間に、平太郎が戻ってきた。
 

おりんが別所に抱かれたことを悟ります。
 

激怒興奮した平太郎は刃物を持って、別所を追っていきます。
 

刺殺してしまったが、おりんには殴ってきたと告げるだけでした。
 

警察への発覚を恐れた平太郎は
 

事件のほとぼりが冷めるまでおりんとしばらく
 

別々に行動しようと 別れました。
 

二人はいつかまた一緒に旅することを約束して。
 

 

また、一人となったおりんは、
 

同じくはなれ瞽女をしているたまという女と出会いました。
 

たまは全盲ではなく時にうっすらと見えることがあると言います。
 

ふたりは一緒に旅を始めました。


一方、
 

殺人の容疑者として平太郎の行方を追っている警察は、
 

平太郎が本当は陸軍の脱走兵であることを知るのでした。
 

おりんはたまとともに善光寺を参拝していたところで、
 

平太郎と再会を遂げます。
 

たまはおりんと平太郎の幸せを願いながら、
 

静かに去っていきました。

 


 

そして互いへの愛を再確認したおりんと平太郎はその夜初めて結ばれます。
 

警察と陸軍の軍曹は執拗に平太郎を追います。
 

テルヨの元にもやって来ました。
 

やがて
 

おりんの故郷である福井の小浜らしい海沿いの村へとやってきた二人でしたが、
 

同じくしてここに来るに違いないと踏んだ警察に
 

平太郎はあっけなく逮捕されてしまうのでした。
 

自白しない平太郎は拷問を受けます。
 

事情徴収を受けるおりんは平太郎を庇い、
 

殺人について何も知らないと嘘をつきます。
 

しかし別室で激しい拷問を受ける平太郎は、
 

おりんに危険が及ぶのを避けるために、
 

殺人を自白しました。
 

おりんとの最後の面会を許された平太郎。
 

鉄格子越しに彼女の手を握り、
 

告白するのでした。自分が天涯孤独だというのは嘘で、
 

母が今だ生きていることを涙を流しながら告白するのでした。
 

再び一人となったおりんは懐かしい瞽女屋敷を訪ねます。
 

しかし親方のテルヨはすでにこの世を去っておりました。
 

寂れた屋敷でおりんは孤独にむせび泣くのでした。
 

これからどうやって一人で生くのか・・・・
 

着のみ着のままにおりんは生きた屍のようにただただ放浪していました。


時は流れ、海沿いの町で、線路工事が行われていました。
 

お昼の休憩に男たちが交わした言葉・・・・
 

”前から気になっているのだが、岬の突端の山林の枝に赤い布が
 

ぶら下がっているが何なのだろうと思ってなあ!!”
 

カラスの群れが啼き、羽ばたいています。
 

誰の目に触れることもないような山中に、朽ちた三味線と
 

しゃれこうべが寂しく転がっていました。

何ともやるせない平太郎の純愛。平太郎を愛しながらも
 

もどかしさに悶々とするおりん。
 

命を懸けておりんを愛し、守ろうとした平太郎。


女優さんの顔ってやはり眼と唇と鼻筋が命でしょう。
 

そのひとつおりん岩下の眼は閉じられたままです。
 

眼の演技が出来ませぬ。が、やはりその閉じた眼の顔で
 

充分にその顔の心情がこちらに伝わってくる志麻さんの
 

演技はなんなのでしょう。
 

   日本アカデミー賞、記念すべき第一回目の
 

    最優秀女優賞に輝いているのも頷けました。
 

そしてそれまでの篠田作品の世界とは違った
 

松竹の伝統が画面にしっかりと息づいていました。

   映画化された水上作品群のヒロインたち。
 

  いつも薄幸で、北陸の厳しい寒さと重なって

 

   独特の世界を醸しだしていますねえ。

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