銀幕のスター女優 39 高峰三枝子さん 
      

         作品 松本清張原作 (点と線)
          

     

昭和33年松本清張によって発表されたサスペンス小説の

 

(点と線)は時刻表を使ったトリックで瞬く間にベストセラーとなり

 

清張は次々と作品を発表、押しも押されぬ流行作家となった。

 

それまでの推理小説にはなかった列車のトリックは読者にとっては

 

初めての出逢いであり、また衝撃であり、書店には清張の作品が所狭しと並んだ。

 

映画の斜陽が来て、テレビにと移ると

 

どんどんと推理ドラマも作られていき、ひと頃は

 

洪水のように製作された推理ドラマ・・・の

 

その内容は全て清張の作品群の煎じなおしのようなものだったのだ。

 

つまりこの(点と線)は、

 

色んな意味での、推理小説、サスペンス映画の元祖といってもいい。

 

そして、松本清張作品群が次々と映画化されたが、殆どが松竹で製作されたが

 

この(点と線)は東映作品である。

 

まだ、40代の美しい高峰三枝子

 

東映の悪役専門の山形勲に加え、

 

鳥飼重太郎刑事には加藤嘉、

 

三原刑事には東映の新人俳優 南宏が抜擢されている。

 

高峰さんの代表作といえば

 

戦前の(純情二重奏)、大ヒットした(暖流)などがあるが、

 

皆様がぎりぎり記憶にあるのは

 

市川崑監督の(犬神家の一族)あたりだろうか。

 

吐夢で紹介した作品ーーー木下恵介監督の(女の園)の意地悪な舎監の役も

 

記憶に残るところです。

 

戦前、田中絹代さんと人気を二分した大スターですね。

 

筑前琵琶の宗家に生まれ、父亡き後家計を救うために映画界へ

 

入ったそうですがこの方もスターになるのにそんなに時間は

 

かからなかったようです。

 

戦後は唄うスタートしても活躍、

 

憂いを含んだしっとりとした声は耳に心地よく

 

♪湖畔の宿♪や、♪情熱のルンバ♪♪南の花嫁さん♪など

 

ヒット曲を次々と放ちました。

 

作品(挽歌)での桂木夫人や人気のピークを過ぎてからの

 

日活青春映画の母親役なども捨てがたい。

 

 

JRがまだ国鉄といわれていた頃のコマーシャル

 

   フルムーン旅行の宣伝で

 

松竹三羽烏のひとり上原謙さんとの共演は

 

温泉のシーンで話題になりました。

 

戦後すぐのスター、高峰秀子さんや原節子さんが出る前の

 

最初のスターが田中絹代さんと並ぶ高峰三枝子さんです。

   

清張出世作ということと、銀幕のスターのドッキングということでこの作品を選びました。

 

    ストーリー

 

福岡市の香椎浜海岸で見つかった心中死体。

 

福岡東警察が鑑識を伴って処理、判断をしていた。

 

現場である香椎浜海岸・・・・今は埋めたれられていてこの辺一帯は

 

公団アパートや高層マンションが建ち並んで様変わりをしてしまっている。

 

   

 

ここに映る香椎駅の風景は懐かしいですねえ。

 

 

並んだ死体の様子、ジュースに混ぜた青酸カリ、

 

履物が整然と揃えられたいることから、心中事件として

 

片付けられようとしていたが、

 

もうすぐ定年を迎える鳥飼重太郎刑事は疑問をもった。

 

心中するにはあまりに寂しい場所だと言った。

 

 

男の身元は東京の佐山という人物で、

 

彼が持っていた車内食堂の伝票には一人分の精算しかなされていなくて

 

腑に落ちないことから、一人捜査することにした。

 

女の遺体引取りに来た身内に付き添っていた東京の料亭〔小雪〕の

 

仲居は、東京駅のホームで二人を見かけたという。

 

女の名はお時といい、その仲居の同僚であった。

 

一方、佐山という相手の男は、

 

社会を賑わしている産業建設省の汚職事件の

 

関係者であった。

 

この事件を追っていた東京本庁の刑事・三原紀一は、佐山が

 

心中事件のかたわれだと知って、

 

九州へ向かい

 

鳥飼と出会うことになったのだった。

 

捜査が進む中で分かったのは、東京駅で見かけたお時と佐山は

 

仲居たちが偶然見かけたのではないということだった。

 

その日、

 

仲居の八重子ととみ子は、横須賀線鎌倉行きの電車に乗る安田を見送るために

 

東京駅に向かう車の中にいた。

 

”何時の電車にお乗りになるの?”と 八重子。

 

”18時12分か、その次の便に乗りたいな。

 

今、17時35分だからな、これから行けばちょうどいい具合だ”

 

安田はそう言いながら、 駅につくと安田は切符を買い、二人には

 

入場券を渡してホームにあがった。

 

 

そして

 

”あれは、九州の博多行の特急だよ。

 

《あさかぜ》号だ”      

 

安田は、わざとらしく女二人にそう教えた。

 

 15番線のホームには、乗客や見送り人がうごめいていた。

 

 そしてこうも言った。”おや あれは、お時さんじゃないか?”

 

”え??” と二人の女は目をむいて、安田が指差した方を見た・・

 

”あら、ほんとうだ。お時さんだわ”と仲居の八重子。
 十五番線の人ごみの中を、たしかにお時さんが歩いていた。

 

   
”まあ、お時さんが!”ともうひとりの仲居のとみ子も見た。
 

そしてもっと驚いたのは、

 

そのお時さんが、連れの若い男と親しそうに話しながら列車に

 

乗り込んだことだった。

 

鎌倉の方に行く横須賀線は13番ホームから出る。

 

時計は18時前を指していた。

 

”18時12分に間に合うな”と安田は言った。

 

だが、13番線には、電車がまだ入っていなかった。

 

そして安田の作為の瞬間”!!!

 

ホームに立って安田は南側の隣のホームを見ていた。

 

これは14番線と15番線で、遠距離列車の発着ホームだった。

 

現に今も、15番線には列車が待っていた。

 

つまり、間の13番線も14番線も、

 

余計な列車が止っていないので、

 

このホームから15番線の列車が見とおせるわけだ。

 

鳥飼と三原の二人は、東京駅で13番線プラットフォームから

 

15番線プラットフォームが見えるのは、

 

一日の中でわずか4分間しかないことを突き止めた。

 

すると

 

安田が容疑者として浮上してきたのだった。

 

だが、安田には完璧なアリバイがあった。

 

 

 

 安田辰郎は、一月十三日の夜、赤坂の割烹料亭「小雪」に

 

一人の客を招待していた。

 

客の正体は、某省のある部長であった。

 

安田辰郎の会社は、ここ数年に急成長してきた。

 

官庁方面の納入が多く、それで伸びてきたといわれている。

 

だから、安田は、こういう身分の客ーーー役所の上層部を、

 

たびたび「小雪」に招待した。

 

安田は、よくこの店を使っていた。

 

この界隈ではほどほどに知られた料亭であったので気軽に使いやすく

 

そのうえ高級感も漂わせていた。

 

座敷に出る仲居たちの粒も揃っていた。

 

安田はここでは上客であった。

 

金の使い方もきれいで思い切りよく

 

それが自分への見返りが大きいことをよく承知していたからだ。

 

招待された客もまた、彼のそういった計算に乗っかってくる人が大半だった。

 

 

事件の発端は、まさに機械工具商社長 安田辰郎と某省官僚との癒着が招いたもの

 

であるようです。

 

 

福岡で心中事件のあった日、安田は北海道にいた。

 

取引先を訪ねていたというものだ。

 

常磐線を青森まで上り青函連絡船に乗って函館、それから札幌へと・・・

 

いうアリバイだった。

 

三原は北海道へと向かった。

 

宿も取引先も間違いなく安田のアリバイを証明する結果だった・

 

 

三原は無いことを願いながら青函連絡船の乗客名簿を調べた。

 

無ければ船に乗らなかったことが証明されるからだ・・がしかしあった。

 

 

泊まった旅館の宿泊名簿の字と連絡船の旅客名簿の字も一致していた。

 

三原は福岡で安田が佐山たちを殺したあと、飛行機で千歳に向かい

 

札幌へ向かっている列車に乗り込み何食わぬ顔で産業省の某者と出会った。

 

連絡船の名簿票は白紙のものを誰でも持ち帰ることが出来、書いてから

 

船会社に出せばよいことも分かった。

 

あらかじめ安田が書いた票を代理の乗客(懇意にしている役人)に渡していたのだ。

 

 

この謎解きの経過は今見ると、似たようなトリックをたくさん見慣れているので

 

シンプルすぎのようでもあり珍しくもない・・が

 

昨今の作品のように大げさに大作風に作る風潮と違い、

 

快テンポで淡々と作っているし、オールデイズの雰囲気は

 

懐かしさもあっていいですねえ。

 

それにも増してなにが魅力かというと

 

昭和32年のリアルタイムでの東京、札幌、福岡の景色の描写が興味深い。

 

 

福岡の香椎浜海岸は何を申しましょう・・・わがマンションの居間から

 

キレイに見えるのです。香椎浜はずっとずっと埋め立てられていって

 

アイランドシテイ・・へと続いています。

 

 

 

話を戻して・・安田の妻は結核を患っていて鎌倉に邸を借りて

 

療養している。東京に愛人がいることも知っている。

 

安田は妻を愛してはいる。

 

妻は地元の同人誌に(数字のある風景)と題して小説を投稿していた。

 

それを読んだ三原はこの事件を計画したのは夫人だと気づいた。

 

夫人は毎日毎日 時刻表を眺めていて13番線と14番線と15番線のことも

 

知って殺人計画に利用したのだった。

 

お時は安田の愛人だった。そろそろ別れたいと思った時期でもあったし

 

夫人も存在を許している愛人でも嫉妬はある。殺してやりたいと思ったのは

 

夫人のほうであろう。

 

そして、佐山に汚職の罪を着せ葬りたかったのは安田。

 

まず、東京駅でお時と佐山が一緒のところを見せ、ふたりはあさかぜに乗った。

 

お時は熱海で降りて、宿にいるところを、

 

夫人が訪ね福岡の香椎に主人がいるとでも言って

 

騙し、その夜博多行きの急行、筑紫に乗せた。

 

佐山は先に福岡に入っていて、夫人が着くのを待った。

 

逢った二人は国鉄香椎駅を後に海岸へ向かった。

 

 

一方、もう一組の同じ服装のカップルはお時と安田・二人は

 

西日本鉄道の香椎駅を後に海岸へ向かった。

 

二組の男女は、目撃証人の目をくらますため同じような服装で

 

同じような雰囲気で歩いていった・

 

夫人が佐山を殺し、安田がお時を殺し、二人を心中に見せかけて並べたのだった。

 

安田はそれから飛行機で千歳へ向かったのである。

 

逮捕状を取った捜査陣は鎌倉へ向かったがもぬけの殻。

 

急ぎ阿佐ヶ谷の本宅へ着いた時は

 

夫人が安田と無理心中。青酸カリを入れたビールを飲んで。

相次いで発表された作品

 

(ゼロの焦点)、(張り込み)、(眼の壁)(霧の旗)と

 

戦中のオンリーという過去を持つ女たちの悲劇や

 

犯罪を犯した昔の恋人への未練を持つ人妻の無味乾燥な日常の中での

 

葛藤。手形詐欺にあって自殺した先輩の仇を討つ新米記者

 

無実の兄の弁護を断られ、その弁護士へ執拗に復讐をする女性・・・と

 

当時の社会背景を敏感に取り入れて推理小説にしたこれらの作品の

 

映画化はどれも秀逸です。ぜひオリジナルを観て欲しいです。

 

小林恒夫監督は戦前は豊田四郎監督の元で助手を務め、

 

戦後は黒澤監督のチーフ助監督を務める。

 

東映に入ってから〔点と線〕の大ヒットによりその名を知られる。

 

高倉健さんの初期の作品を多く監督しているし、

 

深作欣二監督や降旗康男監督に大きな影響を与えたといわれている。

 

本作品でもそうであるように

 

無駄をなるべく退け、テンポの良い時間経過、

 

誰にも理解しやすい物語の展開と

 

切り口が心地よく理屈っぽくもなく、巧みな演出で、

 

重厚さと緊迫感を感じました。

 

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