『女だけの都』・ 女性外交の成せる業、フランス映画第一次黄金期・ 1935年 | 吐夢の映画日記と日々の雑感

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     『女だけの都』

こんばんは。いつもご訪問いただきましてありがとうございます。


フランス映画の第一次黄金期に活躍した女優の一人

 

フランソワーズ・ロゼー、わたしはとても好きです。

 

同時期に日本で活躍していた女優、宮城千賀子さんにちょっとタイプが

 

似ています。

 

姉御肌でモダンで近寄りがたく貫禄があって、でもとても頼りになりそうな

 

あねさん女優。

 

この方のご主人が監督ジャック・フェデー

 

第一次黄金期のビッグ4のひとり。ビッグ4は厳密に言うと

 

マルセル・カルネを入れてビッグ5・

 

 

ジャック.‐フェデー監督は  『外人部隊』、 『ミモザ館』、『女だけの都』

 

ルネ.クレール監督は     『巴里の屋根の下』、

           

                   『巴里祭』、『自由を我等に』 

 

ジャン.ルノワール監督は    『どん底』、『ピクニック』 『大いなる幻影』 

 

 ジュリアン、デユヴィヴィエ  『商船テナシテイー』、

 

   『地の果てを行く』、『我等の仲間』、  『望郷』、『舞踏会の手帖』、
          『旅路の果て』

 

マルセル・カルネ監督は  『霧の波止場』『北ホテル』『天井桟敷の人々』

 

                 『枯葉 夜の門 』、『嘆きのテレーズ』

 

などが上げられます。

 

吐夢の映画日記でも殆ど取り上げましたが、赤字の作品は投稿済みのものです。

 

今夜は女性の外交はどんなものでしょう  ということで

『女だけの都』取り上げます。

監督ジャックフェデ-と脚本のシャルル.スパーク

 

(娘は華やかな時代にいた女優のカトリーヌ.スパーク)

 

 はベルギー出身です。

 

このことがこの映画にとって意義深いんですね..

 

どういうことかは後で述べることにします。

 

ストーリー

 

17世紀の初めのフランドルの小都市.

 

スペイン軍が一夜駐留するとの報せがあり、

 

ビックリした市長達がそれを回避するために

 

『市長は急死、男たちは喪に服していてるすである』と

 

芝居をうつ.

      

 

しかしオリバレス大公率いるスペイン軍は

 

構わぬと言って宿営を強行する.

 

さて、困った市民たち.

 

市長はあわてて“女だけの都”を偽装する。

 

市長夫人(フランソワーズ.ロゼー)以下の婦人たちは

 

一夜を何事もなく過ごさせる.

 

つまり 早く追い出そうと、媚態をこらして歓待する.

 

 

市長はじめ男たちは気になるものの

 

致し方なく身を隠し、

 

ハラハラしながらも見守るしか術はない.

 

 

大公に媚びを売る市長夫人

 

(夫には芝居と言いつつも、普段からの男たちの横柄さを

 

この際懲らしめ様と必要以上に媚びを売る含みがある)に

 

 

市長は嫉妬に駆られ、大公暗殺を企てて、失敗する.

 

それをネタに市長をゆする生臭坊主の司祭(名優ルイ.ジューベ)に

 

袖の下を巻き上げられる。

 

 

一夜の実権を握った市長婦人は

 

この時とばかりに、反対していた娘の恋人の画家と

 

結婚させる。    

 

すったもんだの嘘と本音のドラマが繰り広げられ、

 

一夜は明ける.

 

 

スペイン軍は満足して何事もなく

 

この町を後にするという物語である。

 

 

無抵抗の勝利、女たちにのみ出来る平和外交の妙味、

 

そんなものがまるでフランドル派の絵画を見るような、

 

彷彿とさせるような 美術担当が良いのか

 

監督の指示なのか、

 

見事に画面に表現されているのである。

 

 

ユニークな発想と技術が作り上げた傑作である。

 

 

では、どうしてこの作品が封切当時のベストテンなどで上位、

 

または一位ランキングとなったか....?

 

当然、映画は文句なしであるのだが・・・

 

 

作られた時代...日本で言えば昭和十年.

 

世界が不気味に暗雲を漂わせ始めた頃である。

 

翌1936年にはドイツ軍がラインラント<非武装地帯>に進駐。

 

フランスは驚いたが、ドイツのヨーロッパ制覇は

 

時間の問題のところまで来ていた。

 

 

イタリアもエチオピア侵略に乗りだし、

 

日本は2.26事件で火がつき

 

三国同盟へ向かってまっしぐら!

 

世界は新しい勢力によって強引に各国の

 

それまでの支配体制を打ち崩して行った…….。

 

 

そんななかでこの映画が生まれたことに意義があるのです。

 

過去においてフランスもドイツと同じように

 

小国を次々と支配していった時期がある。

 

 

だが、今度はドイツの支配下に屈せざるをえないし、

 

戦々恐々とおびえる羽目になった。

 

 

この作品は豪華絢爛たるフランス映画によって作られたが、

 

トップで書きましたように、

 

脚本のシャルル.スパーク、監督のジャック.フェデー

 

ともに隣国のベルギー人.

 

彼らの国は過去において

 

常に大国から平和を脅かされていた。

 

 

その小国の感情がこの映画を作り、支える原動力となり、

 

支柱となっている.

 

 

それが、このように

 

女たちの外交があれば、平和的解決が出来るのではないか

 

という思いをわかって観てみると、

 

画面からその思いが伝わってくる.

 

 

この時代に女性外交をと思いついた着想がすばらしいし、

 

喜劇でもあるし、ウイットに富んだレベルの高い

 

お笑い仕立ての映画である。

 

 

ルイ.ジューベの生臭坊主もあの、キツイ目つきに

 

ずるさが加わっていっそう役に乗っているし、

 

ロゼは美しく絵画の一部であるようだ..

 

 

全体としてお色気はあるし、喜劇でもあるし、風刺でもあるし、

 

いつ責められるかわからない小国の市民の気持ちを

 

代弁したハイクラスな作品です。

 

フェデーの作品では一番でしょう・

 

 

旧い風俗、時代遅れ、そうなってしまいがちですが、

 

これは奥行きの深い、

 

美しい映像、その中に男女の機微や、

 

善意の人々の織り成す人間絵図が最高です。

 

ベラスケスやゴヤの絵を見ているような

 

錯覚すらおきる..

 

.白黒の筈なのに、そこに色が感じられる...

 

そう、豊かないろ、彩り、渋さなどなど

 

やはりフランス映画ならではの作品でしょう。

 

アメリカでは作れない映画.   素晴らしいです。

 

1935年フランスのシネマ大賞

1936年に、ヴェネツィア国際映画祭監督賞

 

1937年に、キネマ旬報外国映画ベストテン第1位  となっています。

 

製作  仏  1935年製作  1937年公開

 

監督  ジャック.フェデー

 

脚本     々     、シャルル.スパーク

 

助監督  マルセル・カルネ

 

出演  ルイ.ジューベ フランソワーズ.ロゼー