(夜の大捜査線)・サスペンス作品⑤ 1960年代の犯罪映画の金字塔 ・1967年度作品 米 | 吐夢の映画日記と日々の雑感

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     (夜の大捜査線 )   In the Heat of the Night
  
こんばんは。いつもご訪問いただきましてありがとうございます。

 

今夜は1967年制作と、ちょっと新しい作品の紹介です。

 

   原作は(夜の熱気の中で)という題であるが

 

まさにミシシッピーが舞台の、

 

じめじめとした空気、温度が伝わってくる画面のスタートである。

 

そして、大好きなクインシー・ジョーンズが作った主題曲

 

      ♪In the Heart of the Night♪をレイ・チャールズが唄う。

 

改めて見ると、昔見たときのセピアっぽい記憶のカラーと違って

 

ん・ん?カラー撮影がこんなに良かった??という印象。

    
        (夜の大捜査線)です。

 

そして、大好きなシドニー・ポアチエのスマートなエリート刑事・・・

 

主役のはずなんですが・・・共演のロッド・スタイガーがものすごく良くて

 

オスカーを持っていかれてしまった・・・

 

スタイガーの役は

 

憎たらしいんだけれど、可愛いくもあり、

 

捻くれているようで、納得すれば素直に応じるというなかなかいい味の

 

田舎の警察署長・・おまわりさんに毛が生えた程度で、

 

殺人事件など扱ったこともないおっさん警察署長である。

 

封切りの1967年といえば、アメリカでは公民権運動が盛んになっている頃。

 

ジョージア州、アラバマ州、ミシシッピー州などの南部で人種差別の

 

解消を求めて行われた大衆運動だ。

 

この(夜の大捜査線)は

 

ミシシッピ州にある小さな町で起きた殺人事件が起きたときに

 

たまたま駅で乗り継ぎの列車を待っていた黒人刑事が

 

容疑者として連行され、彼がフイラデルフイアの黒人敏腕刑事とわかって

 

捜査に参加することになる。

 

そして、

 

白人の田舎のおまわり署長とその部下、サムなどから

 

人種差別的な扱いを受けながらも、エリート黒人刑事が

 

捜査にいつの間にかのめり込んでいく羽目になる。

 

黒人と馬鹿にしながらも

 

エリートさんの事件に対する見方、判断力、洞察力、行動に・・・

 

次第にエリートさんの力を借りなければ、いやどうしても助けてもらわなければと

 

次第に素直にエリートさんに引っ張られていくスタイガー署長の変化。。

 

これが特に特に見応えある展開のしっかりとした肉付けでもって

 

素晴らしいのである。

 

 

捜査の合間に登場する住民たちの黒人刑事を白い目で見ている緊迫した

 

対立の関係は当時の人種差別の緊迫感を盛り上げている。

 

人種差別の中でのサスペンスだが、当時としては、

 

まだまだこのくらいの穏便な映画を作るのがやっとだという

 

証明の裏返しでもあるか??

 

アメリカの根強い人種差別に、正に熱気が伝わる夜のシーンなど

 

60年代シネマの匂いがプンプンする作品だ。

 

 

ヴアージル刑事  シドニー・ポアチエ

 

ビル署長     ロッド・スタイガー

 

サム       ウオーレン・オーツ

 

レズリー     リー・グラント

 

監督       ノーマン・ジュイソン

 

 

      ストーリー

 

ミシシッピーの田舎町スパルタ・

 

パトカーの警官サムはがうだるような熱帯夜のなかをパトロールしていた。

 

サムはいつものコースを巡回。いつもちょっと車を止めて眺めるともなく

 

眺める家があった。

 

なぜならその家の中では若い女がいつも素っ裸で家の前を通る人を挑発するように

 

飲料水を飲みながらカーテン越しに裸をそれとなく見せつけるのだった。

 

今夜もその女はいた。。。

 

そしていつも寄るダイナー・

 

衛生的でもないし、ボーイも小汚い。そこでコーヒーを飲んで

 

二言三言言葉を交わし、店を出た。

 

そして、サムは殺人現場に出くわした。

 

被害者は町の有力者コルバート氏だった。

 

 

殺人事件など起きたこともない、扱ったこともないビル署長は

 

サムにすぐさま容疑者を探せと命じた・

 

そして

 

人種偏見の強い地方であるために、たまたま駅の待合室にいたよそ者の黒人は、

 

警官サムにいきなり、一方的に容疑者として連行された。

 

ところが

 

身分を問いただす中でその黒人はバージル・ティッブスという

 

フィラデルフィア警察の殺人課きってのエリート刑事で、休暇で帰郷の途中だった

 

ことが判明。

 

なんせ、初めての殺人事件、敏腕刑事に助けを求めたいが

 

そこは白人のプライドが許さん!!

 

頭を下げれないのだ・捜査に首を突っ込むつもりはさらさらなかったが

 

何故だかかかわることになってしまう。

 

次に 容疑者として逮捕されたのは少年ハーベイ。

 

 

だが、彼は左利きで

 

被害者の傷の受け具合と照合しないから少年は犯人ではないという論理の

 

ヴアージルの説明になぜか納得したビル署長は、渋々ではあるが

 

ヴアージルに協力を求めた。最初の登場から最期まで

 

くちゃくちゃとガムをせわしなく噛むビル・・・

 

田舎のいやあな署長の人物像が最高に嫌なやつに映る。。。

 

しかし、早く犯人を挙げて解決したくて焦るビルと綿密に状況を積み重ねていく

 

ヴアージルとの間は当然絶えず衝突するし、

 

諸に差別意識をむき出すビルやサムに

 

ヴアージルは感情を殺して捜査を続けた。

 

だが白人が黒人に調べられるという屈辱に

 

白人容疑者は怒り、ヴアージルの命さえ狙われるという事態。

 

捜査は困難を極めた。

 

これ以上続ければ命は保障できないとビル

 

捜査をうち切るようにとヴアージルに忠告したが、

 

聞きいれるヴアージルではなかった。

 

そして、有力者コルバート氏は他の場所で殺されて

 

現場まで車で運ばれたと推理したヴアージル。

 

ビルは

 

ダイナー(プレハブ式のレストラン)を出た後の、サムの不審な行動に気づいた・

 

サムの銀行預金を調べたビルは、被害者が奪われた600ドルと、ほぼ同じ額の

 

現金を預けていたことが判明。

 

彼を逮捕してしまう。

 

一方、被害者コルバート氏が、エンディコットという人物の

 

温室にいたという証拠を掴んでいたヴアージルは、サムの逮捕は

 

見当違いだと言ってビルに告げる。

 

サムは、貯めた小銭をまとめて預金しただけだと釈明するが、

 

ビル署長は信用しない。

 

ヴアージルは、

 

いつも裸で家の中を歩き回る少女デロレスを見ていたサムが、

 

それを知られたくなかったために道順を変えただけで、

 

犯行とは関係ないことを調べ上げていた。

 

そこに、デロレスの兄ロイドがデロレスを連れ、

 

サムに手を出されたと署にやってくる・

 

ヴアージルは、無実を証明してやった留置場にいる若者ハーヴェイから、

 

妊娠した女性が行くとしたらどこだ??と聞き、

 

その場所の情報を手に入れた。

 

その後ヴアージルは、エンディコット邸から独りで戻った被害者コルバート氏が、

 

工場の建設予定地に向かい、そこで殺害された証拠を見つけた。

 

サムの無実は明らかだと言い張るヴアージル。

 

被害者が殺害後、犯人の車でなく

 

自分の車で運ばれていることも証明した。

 

その夜、ヴアージルはビルの自宅に招待された。

 

一杯飲みながら、ビルとヴアージルはしみじみと語り合うのだった。

 

ビルが孤独でわびしい人生を送っていることも知る。

 

 

さて、

 

留置場のハーヴェイに頼まれたパッキー・という男が現れ、

 

ヴアージルは、デロレスの堕胎手術の相談に乗った、ママ・カリーバという

 

産婆の元に案内された。

 

 

デロレスの堕胎手術のために、金目的のため、被害者コルバートはを殺されたと

 

ヴアージルは踏んだ。

 

大金を持って現れた男の正体を、ヴアージルはママ・カリーバから聞きだした・

 

そこに現れたデロレスを追ったヴアージルは、

 

外で待ち構えていたヘンショー(ダイナーの小汚いオーナー)に、コルバート殺しを追及した。

 

黒人の前で妹の妊娠の事実を暴露され恥をかかされたと、

 

デロレスの兄パーディが現れ、

 

ヴアージルを襲おうとしたが、そこにいるヘンショーが妹デロレスの相手だということ、

 

全てを知った彼は怒りを露に銃口を変えるが、逆にヘンショーに射殺されてしまった。

 

ヘンショーを取り押さえられ、感情的な対立に苦しみながらも、

 

こうして事件は解決したのだった。

 

ビルはなんとヴアージルの旅行かばんを持って駅まで送ってきた。

 

ビル、゛ヴアージル、元気でな!゛相変わらずガムをくちゃくちゃさせて・

 

にこっと笑ったヴアージルは列車に乗り込んだ。

 

疾走する列車の窓に映るポアチエの横顔を捉えたカメラはズームでぐっと引き

 

やがてヘリによる撮影でまるで鳥になって空から見下ろすようなすばらしいショット!!

 

まさに大鳥瞰である。

 

殺人事件を追う都会の黒人刑事と地元の白人警察署長のにわかコンビの会話は

 

とにかく面白く、本人様たちは大真面目に演技しているのだが

 

見ているほうはすこぶる楽しい・。

 

ストーリーの面白さもさることながら、

 

反目し合う主人公たちの個性の競い合い。

 

演じる役者たちの素晴らしさ、

 

うだるような夏の夜の南部の“熱い空気”を見事に観客に感じさせる

 

素晴らしい撮影。

 

本作の魅力は語っても語っても語り尽くせない魅力いっぱいの作品だ。

 

レイ・チャールズの唄う主題歌に乗って走る列車のポアチエの横顔も

 

かっこいいよ・

 

能もないのにプライドだけで黒人エリート刑事に対抗し、

 

いつも覆され、、それでも徐々に偏見をなくして徐々に相手を認めていくという

 

不思議な男の友情を育んだ二人の絡み合いを存分に楽しませてくれます。

 

共演陣も豪華。

 

ヴアージル煮を信頼を寄せる被害者コルバート氏夫人に名脇役の

 

リー・グラント。

 

(招かれざる客)でポアチエの母親役だったビア、リチャーズが産婆さんの役。

 

能無しの警官サムにウオーレン・オーツ

 

犯人ヘンショーにアンソニー・ジェイムス

 

出番は少ないが、 町の大物で黒人嫌いの差別者にラリー・ゲイツ、

 

殺人容疑者ハーベイにスコット・ウィルソン。

 

少女デロレスにクエンティン・ディーン、

 

その兄にジェームズ・パターソンなどなど豪華なメンバーです。

 

 

この年1967年にはダステイン・ホフマンの(卒業)。

 

ウオーレン・ビューテイの(俺たちには明日はない)が公開されています。

 

それらを押しのけてアカデミー賞の多部門受賞を果たしています。

 

1960年代のアメリカ社会の闇を、しかし穏健に描いた。

 

犯罪映画の金字塔。