『わが愛』銀幕の女優有馬稲子さんパート② 井上靖原作(通夜の客)より・ 1960年度作品 | 吐夢の映画日記と日々の雑感

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≪わが愛≫ーーー井上靖原作 通夜の客より


こんばんは。いつもご訪問ありがとうございます。

 

さて、有馬稲子さんのパート①は(浪花の恋の物語)を取り上げましたが

 

今夜は稲子さんが女優としてやっていく決心をした渾身の作品 

 

   ≪わが愛≫の紹介です。

 

これは井上靖原作の≪通夜の客≫の松竹映画化作品です.

 

昔の女優さんてどうして、皆さん 声が魅力的なのでしょうか.

 

若尾文子さん、久我美子さん、岸 恵子さん、

 

有馬稲子さん、高峰秀子さん、八千草薫さん・・・

 

皆さん少し低めの声でしかも 色っぽくて 品がある.

 

今の娘のようなきんきん声、甘ったるい声ではない。

 

それが、若くても大人の魅力の美点ともなっていたのである。

 

ニックネームはネコちゃん。

 

少しけだるげな声としぐさ。見方によればふてくされたような

 

 投げやりにも受け取れる・・そして寂しげな表情・・

 

それが彼女の魅力である。

 

上記に列している女優さんはみなさん華やかで魅力ある女優さんですが、

 

内面はどうも男っぽいという共通点がおありですよね・

 

まあそれくらいでないと女優さんの仕事は勤まらないかもしれません。

 

ネコちゃんの場合はそのギャップがとても大きい。

 

そんなネコちゃんの今夜の作品の役どころはとても女として可愛く

 

一途で芯のあるステキな女性。

 

ストーリー

 

太平洋戦争が終わって四年後のこと・

 

もと新聞記者の通夜の席に

 

そこに座っている客の誰もが知らない一人の女性が焼香にやってくる。

 

無論、喪主である記者の妻も知らない婦人である.

 

ひっそりと、言葉少なに頭を垂れ、水島きよとだけ名乗って帰っていく。

 

 

喪服の彼女は 居酒屋で一人お酒を飲みながら

 

過ぎ去った三年間の恋人との生活を思い浮かべる・・・・・・・・

 

用事を済ませたらきっと帰ってくるからと言い残して出かけたまま、

 

久々の東京で突然倒れかえらぬ人となってしまった恋人。

 

世間☆一般社会では不道徳と言われる男女の仲であるが、

 

女は命がけでなんの代償も求めず、力いっぱい男を愛した.

 

新津(佐分利信)は新聞記者を辞めてから、鳥取の山奥に篭り、ある研究をしてい

 

た.

 

そこに、ひっそり、しかし情熱を持って彼を愛する一人の女性が

 

寄り添って一緒に生活していた。

 

ーーーきよ(有馬稲子)は 新津がまだ記者をしていた若い頃、

 

仕事で使っていた待合女将の姪であった.

 

待合とは今で言う泊まることも出来る小料理屋といったらよいかな。

 

柳橋あたり・

 

京都のお茶屋のようなもの。

 

きよは少女のころから新津が好きであった.

 

17歳のときだったか。きよは身を寄せていたその叔母の待合で

 

新津はいい仲だった芸者の秀弥(乙羽信子)と飲んでいて

 

きよも一緒に同じ部屋で寝ることになった。

 

蚊帳の中で川の字に寝たときに新津がきよに囁いた・・・

 

゛大きくなったら浮気しようね゛

 

きよはその言葉がずっとずっと忘れられなかった。

 

戦時が始まり、きよも少女から大人の女性へと美しくなっていく。

 

新津もいつしかそんなきよを愛するようになる。

 

そして、記者を辞める決心をした新津は戦争体験の本を書くために

 

鳥取の山の中へ篭る。

 

きよはあとを追っていく。

 

 

その粗末な家での隠遁生活の中で、村八分に合いながらも、

 

二人だけの生活はきよにとっては幸せな毎日であった。

 

 

次第に里の人たちとも打ち解け、

 

きよの立場を知ってからでもやさしく接してくれ

 

穏やかな日々.2年、3年の歳月が過ぎた。

 

が、彼女の胸の中では、いつこの穏やかな生活が壊れるか

 

不安を感じない訳ではなかった.ーーーーそして突然の男の死.

 

二人暮らした想いでの家、そこを去る日彼の形見を大事に大事に

 

抱きしめ、二人の間を認めてくれていた里の人と別れ

 

山を降りる時に男の声が訊こえたーーありがとうーー

 

その時きよの心にこみ上げてきた感情は

 

   ”わたしは3年間愛して愛して愛したんだわ”と幸せな気持ちであった・

 

哀しいけれども過ぎた情熱を懐古しながら、どんどん下るのでした.

  

   わが愛の確信に満ちて・・・

 

妻子ある男との許されぬ愛.

 

美しいおだやかな山々を背景に恋の苦しさ、妖しさ、

 

甘美さ、馥郁たる香り、激しさ、切なさ、哀しさを、余す所なく、謳いあげた珠玉の作品である.

 

有馬稲子さんの着物姿もなかなか良いですねえ。

 

里の生活だから、紬に織りの帯です。

 

着物での現代劇はこれしか知らない。

 

淋しげな顔立ちなので笑顔の方が良いんだけど、

 

やはり淋しい顔.

 

信じていても不安が何時も付きまとう.。仕方ないけど.

 

引き返せないのでしょう、

 

個人的にはそういうことは余計なお世話だからして

 

わたくしには なにもご意見はない.

 

ただ言えるのは、きよにとって愛の代償ではなく、

 

後悔もなく一生懸命愛することが出来たと言う

 

満足感で十分だったのでしょう.

 

どんな形にせよ、精一杯の誠意が与えられない男はつまらんし

 

惚れる価値がないと言うところでとめておきましょう.

 

しかし稲子さんキレイ.そしてものすごく作品に入れ込んでいるのが
伝わってきます。

 

喪服姿....もキレイ.

 

自然体の着物姿がとっても良い。

 

何かの番組で稲子さんが話してらしたが

 

この≪わが愛≫の出演で女優として

 

生きていく決心をしたそうで

 

彼女自身が一番好きな作品だそうです。

 

製作 松竹  1960年度作

 

監督  五所平之助(一時代を築いた監督)

 

原作 井上 靖 (通夜の客)

 

出演 有馬稲子
   佐分利 信
   丹阿弥谷津子
   乙羽信子
   東山千栄子 
余談ですが・・時代ですねえ。こうやってみると
井上靖さんの作品。。(猟銃)に始まって(あすなろ物語)、
(氷壁)(天平の甍)(風林火山)(あした来る人)(憂愁平野)(ある落日)
(額田王)(本覺坊遺文)などなど結構映画化されてる・・・