『去年の夏突然に』・マンキウィッツ作品第三夜 ・・1959年度作品 | 吐夢の映画日記と日々の雑感

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ジョセフ・L・マンキウイッツ監督作品もう一本
 

≪去年の夏突然に≫を取り上げます。
 

この作品はミステリー作品としてもいけるのではないでしょうか。
 

欧米作品って 心の病 というものを扱った作品は意外に多いですよね。
 

国民性なのでしょうか、
 

ヒッチコックの≪マーニ‐≫や、≪フレンジー≫、
 

リズ主演の≪愛情の花咲く樹≫などもそうですし・・・

マンキウィッツ作品、本日は
 

二大女優――――キャサリン.ヘップバーンと
 

エリザベス.テーラーの競演で、テネシー.ウィリアムズ原作の
 

(去年の夏突然に)。


 


E.テーラーという女優は
 

当時、日本ではあまり受けが良くなかったようですが、
 

わたしは特に嫌いではありません。
 

見かけの美貌に比べ、役柄としては
 

結構けなげに男に尽くすというものが多く、
 

30代になってからの彼女の演技力には
 

目を見張るものがありましたもの。

1949年の≪若草物語≫のエミーの役はとても可愛かった。
 

1950年の≪花嫁の父≫、
 

1951年
 

≪陽のあたる場所≫、

1954年≪雨の朝パリに死す≫
 

1956年≪ジャイアンツ≫、1958年≪熱いトタン屋根の猫≫
 

1959年
≪去年の夏 突然に≫、
 

1960年

≪バターフィールド8≫で
 

アカデミー主演女優賞を受賞し、
 

1965年≪いそしぎ≫、
 

≪クレオパトラ≫の後、
 

1966年の≪バージニア・ウルフなんかこわくない≫の二度目の
 

オスカー受賞まで約15年を一気に駆け抜けましたね。

 

で、≪去年の夏突然に≫の頃は一番美しいときでした。

それから、個人的に大好きな女優、
 

キャサリン・ヘップバーンといえば、皆様は一番に思い浮かべるのは
 

純情な中年女のつかの間の恋を描いた ≪旅情〕でしょうね。

そう、彼女のイメージとしてはあれなんですよね。
 

アカデミー主演女優賞を四回も獲得している大姉御でしたが....

小さい頃からバレーを学んでいただけに
 

画面で見る彼女の動きは蝶のように軽やかに動き回るーーー
 

気がついておられました?
 

背筋をピンと伸ばし、颯爽と歩く、
 

まあー一般的な性的魅力はないにしても
 

どこかかわいらしい、本当の意味の女性らしさを
 

持ち合わせた素敵な女性だと思います。
 

医者を父に持った彼女は心理学の博士号を貰ってから、
 

女優になった才媛です.
 

その育ちから滲み出る上品でしかも飾り気のない、
 

地味な彼女の生き様がいつも画面から漂ってきます。
 

≪フイラデイルフイア物語≫や≪素晴らしき休日≫、≪雨を降らす男≫、
 

≪アフリカの女王≫、≪旅情≫、≪招かれざる客≫、≪黄昏≫
 

などなどあげれば切りがありません。
 

若い頃に共演作が多かったスペンサー.トレーシーとは、
 

生涯を通じての友であったといいます。
 

ハリウッド黄金時代ーーーー
 

さっぱりとしたアメリカの良心がそこにあるといった出演作品が多い中、
 

これから紹介する映画は全く違った珍しく個性的な作品というか、
 

特異な題材の戯曲の映画化です。

しかも名作といわれた
 

≪去年の夏突然に≫デスが 彼女の役柄はとっても怖い役柄でした。
 

さあーどんな役どころなのでしょうね?

テネシー.ウイリアムズの舞台劇の映画化です。
 

≪欲望という名の電車≫、≪熱いトタン屋根の猫≫がそうであるように、
 

テネシー.ウイリアムズの原作ものはとても異端なストーリーであり、
 

屈折した心理のとても陰湿な印象です。

 

心の裏側に棲む本心の醜さを抉り出すというか...
 

さてストーリーに入ります。






フロリダのどこだかの街の金持ちの未亡人がキャサリンの・ヘップバーンの役どころ。
 

亡くなった良人はりっぱな博士。お金は山ほどある。
 

そこに一人息子(セバスチャンという)がいたが
 

今は死んでしまっている。
 

その嫁は選りに選って選んだキャサリン(E.テーラー)だが、
 

  今 精神病院に入っている。
 

ここにキャサリンの主治医――モンゴメリー.クリフトが登場。
 

以後博士と呼ぶ。

セバスチャンの死因は旅先で心臓麻痺で亡くなったということになっている.
 

息子が生まれてから可愛がって可愛がって育てた.
 

夫人が若い頃はいつも一緒に旅行をし、旅先で恋人に間違われたり、
 

キレイな親子と言われることが自慢であったが、
 

今は淋しく邸に一人で住んでいる。
 

キャサリンは病院でも評判が悪い患者であった。
 

夫人が歳を取ってきて、キャサリンと旅に出た息子にとって
 

若くてキレイな嫁のほうが今はいいに決まっている。


夫人はキャサリンと出かけた息子が旅先で亡くなったことで
 

彼女を恨んでいた。
 

キャサリンはその時の記憶の一切を失っている。

夫人は博士が研究中の精神療法の手術をやってくれれば
 

病院の新設への寄付を100万ドル提供するといってきた。
 

博士はそれよりもキャサリンの病気が何に起因するものかを突き止めたかった。
 

二人の話しは当然食い違い、病人であるキャサリンは不利であり、
 

肝心のところが思い出せない.
 

 どうも心臓麻痺ではないらしい。
 

が、夫人はそんなことより息子を死に追いやることになった二人の旅行、
 

つまり自分を捨てて、キャサリンを選んで出かけたことが許せない。

病院の理事から明日にでも手術を施せと言われ、
 

ある実験を夫人の邸ですることにする.
 

博士はキャサリンに潜在意識を呼び戻す注射を打ち、質問をしていく。
 

彼女の脳裏にあの日のことが浮かんできて
 

ぽつぽつと話し出す。
 

いろんなところを旅行していく中で ある避暑地での出来事ことを。
 

セバスチャンは彼女に透けて見える真っ白の水着を着せて一緒に海辺へ行く。
 

当然男たちが寄ってくる。
 

セバスチャンは男色趣味で女性に興味はなかったのですね。
 

キャサリンは飾り物だったのですね。つまりキャサリンの美貌で男たちをひきつけ
 

て、寄ってきた男たちに、セバスチャンは金をばら撒いて部屋に連れ込む。
 

たくさん、たくさん、次ぎから次ぎへと。
 

キャサリンは別の部屋で置いてきぼりでしたが、結婚してから
 

ずっと寝室が別だったので、旅先で部屋を別にされても何ともなかった。
 

当然のことと受け止めていたのです。


ある日海辺の(有料の浜辺で一般の人は入れないが)店で
 

お茶を飲んでいるところに
 

たくさんの男たちが缶やブリキで作った楽器を
 

ガラガラ鳴らしながら柵の向こうからのぞきこんでいる。
 

うるさくなり、耐えられなくなったーー心臓の動悸も激しくなってーー
 

セバスチャンは表へ出た。
 

そこに男たちが押し寄せた。
 

その中にはセバスチャンの知っている顔もあった.
 

彼は丘の上へ逃げて逃げて追い詰められ
 

廃坑の中へ連れ込まれ、なぶり殺しにされたと言う.
 

それは人間に食いちぎられたような死体の姿だったと・・・


お金で男たちを買い、それも次ぎから次ぎへと..
 

彼らは怒り、ばかにするなと徒党を組んだのです。


話しを聞いていた夫人は“そんなのは嘘だ” と
 

顔色が徐々に変わってくる。

“セバスチャンは潔癖症だった、ありえない。“


どちらの話しが本当か....
 

話し終えたキャサリンはぐったりとしていたが、
 

同席していた理事長は
 

どうやらキャサリンの話しは本当のようだな..と.

 

博士がは夫人の傍によっていき、
 

“息子さんは早くから狂っていたんですよ。”というと
 

夫人は博士の手をとり、

“さあーセバスチャン、
 

2階へ上がってお昼寝をしましょう.....
 

.今度は..夫人は狂ったんですね。

母親――――夫人の方が病んでいて、とうとう狂ってしまった.
 

キャサリンは正常だったのです。
 

怖いですね.この母親、
 

ヘップバーンはこんなグロテスクな母親の役もやれるんですよね。
 

演技の巾が広いんですね・


じゃーなぜキャサリンはこの息子と一緒になったのかは
 

説明すると長くなるし
 

そんなに重要なことでもないので省きます。


大女優の共演でもう迫力満点の見応えある作品でございました。


製作  米国  1959年度
 

監督  ジョセフ.L.マンキウイッツ
 

出演  エリザベス.テーラー/モンゴメリー.クリフト
 

    キャサリン.ヘップバーン
 

原作  テネシー.ウイリアムズ