★ローマの休日とワイラーと赤狩りとオードリー★



月半ばにテレビ番組アナザーストーリー、
≪オードリーとローマの休日≫と題して放映されていました。
なぜ、ローマの休日は今でも愛される作品なのか。
なぜ、不朽の名作なのか。
番組の中の一部で、ウイリアム・ワイラー監督の娘で
映画祭などのプロデユーサーをしていると言うジュデイ・ワイラーが
紹介と案内をしてくれた部分だけを
文章で再現してみますね。ご覧になられた方もいらっしゃるかも知れませんが
非常に興味深いと思います。

ローマの休日は単なる甘いラブストーリーではなかった。
もっと深い深いメッセージがあった!!
監督が伝えたかったメッセージとは何か。
そこにオードリーはどう関わっていたのか。
総てを見ていた少女が語る
ジュデイ・ワイラーは毎日オ-ドリーに会いたさに撮影現場に通ううち
この映画にかける父の深い思いを知ることになる。
ジュデイも作品に出演しているんですよ・
トレビの泉で、ペックがカメラを貸してくれないかと話しかえるあのシーン。


かわいらしい少女、彼女がジュデイ・ワイラーです。
ジュデイ・・・75歳は語りました。

単なるハッピーエンドで二人がくっついて終わるえいがではないでしょ・
父にはこの作品でどうしても伝えたい願いがあった・
ワイラーといえばアカデミー監督賞3度の受賞
ノミネート八回・
ハリウッドの巨匠中の巨匠だ
ローマの休日の監督に決まったのが1948年、
その頃ハリウッドは未曽有の混乱状態にあった。
ハリウッドに巻き起こった恐怖とは赤狩り
第二次大戦後アメリカに吹き荒れた
ーー共産主義者排斥運動ーー
第二次世界大戦後の冷戦を背景に、主にアメリカとその友好国である西側諸国で行
われた。
映画界にもその矛先は向けられた
名だたる監督や俳優が証言台に立たされ
共産主義者かどうか問い詰められた。
ーーーーーー密告者、告発者の中にはエリア・カザン、ロナルド・レーガン、
ウオルト・デイズニー、ゲーリー・クーパーーーーーー

ーーーーーーの容疑者の中にチャールズ・チャップリン、ジョン・ヒューストンや
ウイリアム・ワイラーの名も・

父はあの頃ハリウッドにかなり嫌気がさしていた。
赤狩りのおかげでお上が認める映画ばかりになっていましたから。
゛連中の眼が届かない外国に出たい!゛
そんな狙いにうってつけだったのが全編ローマが舞台の  ローマの休日だった
実は赤狩りとも深い関わりがあったのです。
書いたのはダルトン・トランボという人・

赤狩りへの証言を拒み続けて 投獄された男だ。
ローマの休日はトランボが出所後、ハンターという偽名で執筆した作品だった。

ワイラーはハンターがトランボであることを知っていた。ただし
映画会社には内緒にしていた。なぜなら事実を知れば会社は一銭たりとも
出資はしないでしょうから。
でも映画会社の出資が決まるとすぐに
赤狩りで疑いをかけられた人たちを何人も雇ってローマに連れて行った。

例えばカメラマン役のエデイー・アルバートも妻の共産者疑惑で騒がれた人物。
グレゴリー・ペックもワイラーの 反赤狩り運動にいち早く賛同した
数少ないスターだった。
さらにスタッフも赤狩りで追放されたものをかまわず雇いあげたワイラー。
ローマなら赤狩りの目も避けられる  しょぼくれるなみんな  行くぞって・
ハリウッドから逃げるようにローマに渡った撮影チーム。
その不安を一気に晴らしたのがオーデイションで決まった主演女優だった・
最初父がこだわっていたのは新人  ってことだけだったの。
だれも見たことのない人。。とにかく映画会社のだれもが口出しして来ない新人が
欲しいって。
そしたらそこにオードリーが来たのよ  私だけじゃなくみんなが見とれちゃった
の。
現場に新鮮な風が吹いて太陽みたいにみんなを照らしたのよ。
まさにパーフエクトなマッチングだった。
オードリーを得て俄然意欲を増したワイラー・

★撮影直前、彼が頻繁に足を運んだ場所がある。
今は一見何の変哲もない通り だが、撮影当時は様子が違った。
    願いの壁ーーー作品中にペックがオードリーを連れて行くシーンが
あります。



戦時中ここで子供をつれた男が空襲にあった。この壁の後ろに避難して祈ったら
爆弾はすぐに落ちたが怪我ひとつしなかった   だから後でここにお礼の札を
かけたんだそうだ・。ワイラーはこの場所がすごく印象に残ったらしい。
戦争を伝える場所として・
第二次世界大戦が終わったのは。ローマの休日撮影の僅か七年前。
戦時中ワイラーはイギリス空軍に参加。空襲の様子などを撮影していた。
一方オードリーはナチス占領下のオランダに暮らし
まさにワイラーが所属するイギリス空軍による爆撃を経験していた
戦争中は敵国  二人に限らず この映画に関わる皆がそんな因縁を抱えていた。
空襲から逃れた人々が祈りを捧げた壁  これを見て父ワイラーの心は動いた
赤狩りから逃れるよりももっと大切なことがあると気づいたのです
だからあのシーンを入れた。伝えたかったのは
それぞれの立場で戦争の記憶を持つ私たちだけど
手を携えて未来へ進もうということ   せっかく戦争が終わったのだからって。
ワイラーの願いが最も色濃く表れているのはラストのあのシーンです。

 


゛国と国との友好の見通しについてどうお考えでしょう?
という記者の質問に

゛必ず成し得ると信じます  人と人との友情を信じるように゛

ペック ゛恐れながら自社を代表して申し上げます。
妃殿下のご期待は決して裏切られることはないと゛

このシーンは父ワイラーの一番大事な願いを伝えています。国のレベルの結びつき
だって結局はすべて人と人との友情によるものでしょ。
どんな状況でも友情だけは失ってはいけないと。・
でもなかなかいない。その願いをこんな風に表現できる女優は。
本当に美しくて完璧な瞬間だと思います。
まあ監督も結構がんばったけれどね。
オードリーを通じこの映画に平和へのメッセージをこめたワイラー
オードリーにはその後も名監督たちからの出演以来が殺到。
彼女は瞬く間に世界一のスターとなったのである。