『霧の波止場』・・仏映画特集最終回 霧のル.アーブルで芽生えた恋の行方は・ | 吐夢の映画日記と日々の雑感

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(霧の波止場)
こんばんは。
いつもご訪問ありがとうございます。

フランス映画特集、今夜で一旦打ち切りましてまた
日を改めて 投稿いたしますね。それまで、また作品温めておきます。
で、今夜は取り敢えず
最終回ということで、
マルセル.カルネ監督の
(霧の波止場)で締めくくります。

ーーーー
フランス映画を鑑賞、投稿しているうちに
いろんな事実に気づかされました。
今夜取り上げる作品(霧の波止場)はマルセル・カルネの男女のロマンスもの
しては二作目の作品ですが、
考えてみると大体
カルネは(天井桟敷の人々)にしても(北ホテル)にしても男女の愛を描いてい
るんですよね。とはいえ
アメリカ映画の西部劇や日本の時代劇がお膝元で生き生きと描かれるように
元々、フランス映画はロマンス、ジュ・テーベ  の世界なんだ。

で、その(霧の波止場)なんですが、
女優、ミシェル・モルガンがジャン・ギャバンの恋の相手をしているのですが
作品の中では16,7歳、実際は18歳らしいのですが、とてもとても
見えない、大人の色っぽさのある大人の女性に映ります。

さて、この恋の映画、湿っぽさのない悲恋ものなんですが
なぜ、名作と言われるか考えてみました。
それは脚本ーーージャック・プレベールという方のセリフの世界観でしょうね。
それと、モルガンさんの養父に扮する嫌な男ーーーミシェル・シモンや
ギャバンの恋敵のルシアンに扮するピエール・ブラッスール、そしてデビュー
間もないミシェル・モルガンという俳優陣がギャバンを食っている。
ミシェル・シモンといえば  (旅路の果て)でルイ・ジューベと競演した名優
であり、ピエール・ブラッスールといえば(天井桟敷の人々)でルメトールを
演じたこれまた名優ーーーそう、(夜の門)で死神を演じた役者さんです。






そして、脚本家のジャック・プレベールさんはといえば
(天井桟敷ーーー)の脚本も書き、詩人でもあるからして、
当然、夜の門から生まれた曲ーーー枯葉♪の作詞も彼の作。
作曲家ジョセフ・コスマの曲にも相当作詞をしているようで、イブ・モンタン
エデイット・ピアフやグレゴあたりにも詩ーーーシャンソンを書いている大した方
なんですね。
1930年代後半から1945年あたりまで20本位、シナリオを書いていて、
ジャン・ルノワールやカルネやジャン・グレミヨンといった名監督、
またギャバンやモルガン、アルレッテイ、ブラッスールたち俳優と映画の仕事を
しているが   詩人という肩書きも持っている方。

ストーリー





霧が段々と濃くなる国道を外人部隊の脱走兵のジャンを乗せたトラックが走っていた。
もうすぐ、ル・アーヴルの港町に着くという時に犬を引きそうになって
ジャンは横からハンドルを切って、犬を助けた。
運転手と言い合いになったが、そこはまあ何事もなく礼を言って別れた。
犬は恩に着たのかジャンの後を追ってどこまでもついてきた。白に黒のブチの可愛いワンコだ。
そして程なく、ジャンはル・アーヴルの波止場の酒場に辿り着いた。
パナマ亭という酒場だ。そこは人生の落伍者が寄り集まると言われている酒場だった。
そこでジャンはミシェルという画家に出会った。
彼と人生で避けるべきことについて語りあったジャンは、
ネリーという美しい女性にも出会った。
何もかも嫌になって脱走したジャンであったが、
何だか人生が明るくなった気がした。
生きる目標が出来たねと
画家は笑って、服と靴と帽子と絵具箱とを残して
入水自殺をしてしまった。
パナマ亭のパナマ氏(パナマ帽をかぶっているのでそう呼ばれている)は
ジャンに軍服を脱がせ、画家の所持品一切を与えて着替えさせた。
そこでジャンは絵も描いたことのない画家となった。
ネリーという女性は家出娘で今は養父ーー名付け親であるザベールの家に
身を寄せていた・
ザベールという男は嫌な男で養父でありながら
ネリーを自分の店ーー雑貨店で働かせているのを恩に着せて何とか妻にしようと
虎視眈々と狙っていたがネリーはひどく彼を嫌いで、彼女も人生に何の希望もな
い毎日だった。また町のチンピラのルシアンも彼女を口説いているが
ネリーはこの男も嫌いだった。
ザベールはルシアン等と盗品故買だかの関係があり、その身辺は
汚く、
ルシアンはネリーを脅迫して、ネリーを自分のものにしようとしていた。
そこをジャンに助けられた。
腕っぷしも強くチンピラとはいえ、優男のルシアンとは大違いで
ネリーがジャンに惚れるのに時間はかからなかった・
脱走兵のジャンはもう命知らずで怖いものなし。ルシアンにとってジャンは
邪魔な存在となった。
ネリーがジャンに惚れているのがしゃくに障る。
ジャンはネリーと二人で、ヴエネゼーラに高飛びしようかと思いつく。
ある日、二人で遊園地へ遊びに行くと。、ルシアンも女を連れて来て居り、
ジャンの機嫌を損ねるようなことをしでかし、
ルシアンはほほを張り倒される。
ルシアンはジャンの背後からを゛今に見てろ、きっとやつを殺してやる゛とつぶやいた。
ザベールはネリーがジャンと高飛びすることを知り、
嫉妬でかっとなり、ネリーを暴力で手に入れようとするが、
来合せたジャンがザベールをなぐり倒したが
打ち所が悪くザベールはその場で即死。
ネリーを救うための正当防衛ではあるが、
脱走兵の身の上では、出るところへも出られない。
逃げるほかはない。
ヴエネゼーラ行きの船は予約してあるので、
ネリーは画家としてひとり船に乗ってくれと頼む。
あとで必ず追うからと約束をしてジャンは乗船したが
ネリーのことが気にかかり、ジャンはやはり下船しザベールの雑貨屋へ行くの
だった。
ネリーは心配ないから船に乗って、後から追うからと送り出した矢先に
近くで見張っていたルシアンの手に握られた銃がジャンの背後に向かって
火を噴いたのだった。
銃声に、店からとび出したネリーは、
ジャンを抱きあげた。
ジャンはつぶやいた゛キスをしてくれ、時間がないんだ゛
ネリーが唇を寄せたと同時にジャンは息絶えた。
ずーっと一緒だったわんこは船室で待っていたが汽笛が鳴っても帰ってこない
主人に、ワンコはリードを振放って走り、下船し、まるで主の死を悟ったかのように
港を駆け抜けて行った・・・・

単なるラブストーリーだといえばそれまで。
でも、味のある役者の演技が冴え渡り、せりふが
いかにもフランスらしい哲学的で・・・薀蓄のある会話で・・
行き場のない二人のカップルが出直そうとして・・・やはり運命は・・・・
マルセル・カルネのシニカルな演出で心に残る名作でした。