『影の軍隊』・仏映画第七夜 メルヴィル監督にしか撮れない渋い作品・1969年  | 吐夢の映画日記と日々の雑感

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懐かしい名画、最近の気になる映画のことを書いています。

好きなのは戦前のフランス映画です。

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(影の軍隊)

1898年生まれのジョゼフ・ケッセルという作家さん、馴染みが薄いかもしれま
せんが、書かれた作品、または映画化された作品を知ると
一度や、二度耳にした事のある作品が多いですね。
フランスにはジャック・ベッケルと言う監督や、ジョセフ・ロージーという
大監督がいて、名前が紛らわしく
私も混乱していまいそうでした。
アルゼンチンに生まれ、ソ連で幼少期を過ごしその後フランスに移住し、ソルボンヌ大学を出たという方です。

第一次大戦や、第二次大戦中に
すでに作品は刊行されていますが、戦後、カトリーヌ・ドヌーブ主演で映画化され
た(昼顔)は1929年に発表されているんです。
この作品は
第28回ヴェネツィア国際映画祭で最高の金獅子賞を受賞しています。
映画化された(モロッコ慕情)は1931年に刊行。(サン・スーシの女)は
1936年の刊行
今夜取り上げます(影の軍隊)は1943年に刊行されたものです。
映画化は1970年、監督は
ジャン・ピエール・メルビルです。
わたしが過去に投稿した作品(過去を持つ愛情)も(将軍たちの夜)も
彼ジョゼフ・ケッセルの原作なんですよ。
さて、(影の軍隊)ですが、
ドイツ占領下のフランスを避け
1943年にアルジェリアで
刊行された本を
ロンドンで読んだメルヴィルはすぐさま映画化を決意。
25年後、ようやく
その夢が実現したのです。
1937年に従軍し、ドゴール将軍率いる『自由フランス軍』に参加したメルヴィルは
自らのレジスタンス体験を踏まえて映画化に取り掛かった。

ケッセルは第一次大戦では仏軍に志願、パイロットとして活躍。第二次大戦でも
(自由フランス軍)の兵士として戦う。
そんな時にドゴールから
レジスタンスに関する小説の執筆を嘱望されたのが
(影の軍隊)である。


メルビル自身、第二次大戦中にレジスタンス活動をしているので
本作品にもその経験は活かされている。











キャスト

リノ・ヴァンチュラ
ポール・ムーリッス
ジャン・ピエール・カッセル
シモーヌ・シニョレ
クリスチャン・バルビエ
ポール・クローシェ
クロード・マン
アラン・リボール
セルジュ.レジアニ

リノ.ヴァンチェラの作品では
カラーは全く違いますが
(冒険者たち)と並んで
この(影の軍隊)が一番好きな作品となりました。
重厚でかつメルヴィル独特の画面。大人って表現は当てはまらいんだけれど
俳優さんの醸し出す演技が
とても、大人的ハイレベルといえばいいかなーー
いいんですね。
137分という長さがあっという間。

ヴァンチェラのつぶやきの語り部で話は進められていきますが、
まず、選ばれた俳優さんが
みな素晴らしい。

あらすじー

1942年10月のこと。

土木技師のフィリップ・(リノ.バンチュラ)は、収容所に向かう車の中に
いた。

フィリップは要注意人物として、マークされた。
用心深く、独立独歩型で
冷淡な皮肉屋ー取り扱い注意とされた。ドゴール派の疑いがあるが、自白せず。
証拠不十分で釈放になった前歴がある。

そして数ヵ月後、突然、ゲシュタポ本部へ移されることに
なったが、

しかし、すきをみて、脱出に成功。
この 夜の逃走シーンは
割に長い。メルヴィルらしい
丁寧なシーンです。
街の中をひたすら走り
理髪店に駆け込む。
店主(セルジュ.レジアニ)が
″何か?″と問うと
″髭をあたってくれ″。


レジスタンス運動に身を投じていたフィリップは
その日、マルセイユに着いた。
フェリックス(P・クローシェ)、
ル・ビゾン(C・バルエ)、ルマスク(C・マン)等と
一緒に裏切り者ー同志ドゥナ(A・リボール)の
処刑に立ちあうことになっていた。
フェリックスはフィリップに言った。
″こいつがお前を売ったんだ
ゼフィールと無線係もだ″
″早く処分しなかったのは私のミスだ″

まだ、若いドゥナを銃殺にするのか絞殺にするのか
処刑とは言え
これは殺人である。
全員が初めての経験で
怖くて震えそうになるが、
ボス(ポール.ムーリス)に
心酔しているフィリップは冷静に処刑を実行した。


それからしばらくして、フェリックスは、ジャン・フランソワ(J・P・カッセル)に会った。
フェリックスはジャンを
抵抗運動仲間に誘い込んだ。

一方、新任務のためリヨンに潜入したフィリップ。
新任務はカナダ士官二名
イギリス空軍士官三名
死刑予定のベルギー人二名の救出作戦。
その任務にジャンを推薦したフェリックス。
まず、ジャンの仕事は、名高いパリの女闘士 マチルド
(シモーヌ・シニョレ)に、通信機をとどけることだった。
彼はそのついでに、学者である兄のリュック・ジャルディ(ポール・ムーリス)を訪ねたが、読書にふけり、
音楽に耳を傾ける芸術家肌の兄をジャンは
心よくは思わなかった。

リュックがレジスタンス運動のボスであることを弟のジャンは知らない。

例の救出作戦はジャンが
海上に待機する潜水艦に皆を運ぶのだが、
ボートに乗せたひとりは
マフラーで顔を覆っていた。
ジャンは思う
″この体型の人物はどこかで見たような?いつか兄貴にも話そう″と。
まさに、その兄貴なのに?とわたしは気づいたが
思わず笑った。

だから、
意外にも潜水艦のフィリップの
ところへやって来たのは、
ジャンの兄のジャルディだった。けれどわたしには意外ではなかったのでーす。

やがて無事、その任務を果したフィリップはロンドンにいた。
ボスの表彰式のため。
ロンドンも空爆が激しい。が
酒場は若い兵士たちで
満ちていた。
女性兵士も混じってジルバに興じていた。

やがて、フィリップのところへ
フェリックスの逮捕が知らされた。

早速、次の
救出作戦を展開したが、
失敗に終ってしまった。

フィリップが再び逮捕されたのは、それから間もなくであった。
独軍の残虐な処刑に、もはや最後と思っていた彼を救ったのは、知略にすぐれたマチルドであった。
それからしばらくたった頃、隠れ家で休養をとっていたフィリップを、ジャルディ=ボスが訪ねて来た。

彼の来訪の目的はマチルドの逮捕されたことを告げるためと、口を割りそうな彼女を、射殺するということだった。
マチルドに助けられたフィリップ。ル.ビゾンも、助けられたことがあり
彼女の、射殺には反対したが、
現在、仮出所中の彼女も、それを望んでいる、とボスは言った。
それから間も無く、
エトワール広場を一人歩く彼女の姿があった。
車を止めてマチルドに呼びかけ弾丸をあびせたのは、彼女を尊敬するジャルディ、フィリップ、ル・ビゾン、ルマスク等仲間たちだった。

しかし、遅かれ早かれ、彼等の上にも、同じような運命が待ち受けているのだった。
捕らえられたフィリップは
独軍の士官に促され
銃殺刑場に向かうのだった。

本作品の何に引き込まれたかと言えば
作りも丁寧、わかりやすく
そして各々の俳優がそれぞれの場面で主役であり
役者の個性が
十二分に生かされているからか。
理髪師の役はほんのちょっとの出演でしたが、
セルジュ.レジアニの
友情出演。

そしてストーリー展開に無理がない。

紅一点のシモーヌ.シニョレが
すでに貫禄の域にあるが
おみ足がキレイなのは新発見。セリフ少なめに黙々と演じるのが彼女のカラーで、
だから、
どの作品でも貫禄がある。

メルヴィル作品は
(サムライ)、(恐るべき子供たち)とこの(影の軍隊)が最高の三本かもしれない。