(恐るべき子供たち)・仏映画特集第6夜 古典か 新しい波か メルヴィル監督の・1950年 | 吐夢の映画日記と日々の雑感

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(恐るべき子供たち)

こんばんは。
 

いつもご訪問頂きましてありがとうございます。
 

さて、仏映画特集第6夜は
 

コクトー原作
 

メルビル監督の
 

(恐るべき子供たち)を。

制作 監督
ジャン・ピエール・メルヴィル

原作
ジャン・コクトー

脚色
ジャン・コクトー 、 ジャン・ピエール・メルヴィル

撮影
アンリ・ドカエ

キャスト

エリザベス
ニコール・ステファーヌ

ポール
エドゥアール・デルミ

アガータ
ルネ・コジマ

ジェラール
ジャック・ベルナール

マイケル
メルヴィル・マルタン

ポールの母
マリア・シリアキュス




ストーリー

雪の降る夜だった。
 

工事中の校舎は男子生徒に
 

とって格好の戦場となっていた。
 

シテ.モンチェのコンドセ高等中学校の中庭を、走り、叫びあい、雪球を投げあう少年たちの姿が飛びかっていた。

雪合戦と呼ぶにはあまりに
 

激しい遊びだった。

ポール(エドゥアール・デルミ)は死にそうな思いで、ダルジュロス(ルネ・コジマ)を探していた。

ところがポールは、ダルジュロスの姿をかいまみた瞬間

 

彼が投げた激しい雪球で
 

胸を射ちぬかれ、気絶してしまう。

それが奇跡の、そしてこの悲劇のはじまりであった。

ダルジュロスの意識的な行為ではなくとも、
 

ーー美しさは常に特権をもたらすーー
 

彼は教師に好かれていた。
 

それだけに
 

この事件は副校長の頭を悩ませるのだ。
 

雪球に当たって倒れたポールは、ダルジュロスを庇った。

副校長は大した事件にならず胸をなでおろした。

若者は時々、悲観的になるが
 

それでいて現実感を伴わない。ーー死ーーという概念は想像を超えていた。

ポールの姉エリザベート(ニコール・ステファーヌ)は、負傷して帰ってきた弟と、

 

つきそってきた友人ジェラール(ジャック・ベルナール)に
 

悪態をついた。
 

やっかいが増えたと言わんばかりに。

瀕死の母の看病とそのうえ、弟まで病人になってはたまらないという心の重さにも加えて、
 

エリザベートとポールの二人だけの部屋に
 

弟の親友と名のる他人が
 

侵入することをポールが簡単に許したことが
 

腹立たしいのであった。

エリザベートは奇跡を信じ、奇跡が起こることに生き馴れていた。
 

どうやら
 

エリザベートにとって
 

ポールは恋人以上の異性であるようだ。
 

憎まれ口を利きながらも甲斐甲斐しく世話を焼いた。
 

ジェラールの気持ちはどうなんだろう。
 

エリザベートはポールとの間に他人が入り込むのは
 

ゲームを中断されるような
 

気がした。

母(マリア・シリアキュス)の侍医がボールを診察して、
 

大した事態ではないが、もともと心臓が弱いので
 

大事を取って
 

通学を禁じ、療養を命じた。
 

使用人も辞めて困ったが、
 

医師が
 

家事も出来る看護人を
 

手配してくれた。
 

こういったことが
 

エリザベートにとっての奇跡であった。
 

おそらく幼児の頃から
 

可愛がってきた弟ポールに対する気持ちは今も変わらず
 

可愛くてしようがないのだろうが
 

ポールにとっては
 

うっとおしくもあり、
 

″頭が変になったのか″と
 

そっけない。
 

この姉弟の間に恥じらいはなかった。
 

二つのベッドがある
 

厚い殻のような部屋で
 

二人は暮らし、体を洗い
 

着替えをした。一体の体を共有するように
 

何の秘密もなかった。
 

別世界の人間となったダルジュロスを思い
 

突き刺さる痛みを感じたポール。
 

彼とは今後何の接点もなくなるのだ。
 

ダルジュロスは校長にコショーをかけて退学になった。


やがてポールの健康は
 

少し回復したが、ダルジュロスが放校されたという知らせを聞いて、彼の心は芯から痛んだ。

母が死んだのはそれから間もなくのことだった。


ジェラールの叔父が三人を
 

海辺の旅行に招いてくれた。
 

狭い世界で生きてきた二人には見るものすべて
 

珍しかった が、豪華な雰囲気にも臆することなく
 

堂々と振舞ってみせた。
 

姉をうっとおしいと思いつつも
 

彼女なしでは何も出来ないポール。

氷や炎のようなエリザベートは生ぬるさを嫌悪していて
 

同じ性質をポールにも求めた。

この海辺は
 

カンヌか、ニース かな。

エリザベートはファッション・モデルとして働き始めた。
 

彼女は仲良くなったモデル仲間のアガート(ルネ・コジマ)をちょくちょく家に連れてくるようになった。

アガートは誰の眼にも、ダルジュロスに酷似した少女だった。
 

ダルジュロスが学園祭で
 

女役を演じた写真とアガートは似ていた。


ポールはアガートを無理に遠ざけ、しかも彼女を愛し始めていることをひた隠しに隠した。
 

殊に、いかにしてエリザベートにさとられずにすむか苦心しながら、秘そかにアガートに伝えようとした。

悲劇はいつしか決定的にしのび込んでいた。
 

やがてエリザベートは、金持ちのアメリカ人マイケル(メルヴィル・マルタン)と結婚するが、

 

マイケルは謎の自動車事故死を遂げた。
 

それ以来、エリザベートはますますポールに固執するようになっていった。

ある夜、ポールはアガータに対する愛情をおさえることが出きず、手紙を書いた。

 

   “あなたがもし私を嫌いならば、自分は死ぬ以外にない……”。

不運にも、その手紙はエリザベートの手に渡ってしまった。
 

このようにして悲劇の幕は切って落とされたのだ。

エリザベートは行動を開始した。

 

彼女はポールに、アガータはお前など愛していない、やがて

 

ジェラールと結婚するだろうといい、ポールへの愛に懊悩するアガータには
 

ジェラールと結婚するべきだと説得した。

アガータとジェラールは結婚した。

 

偶然、ジェラールは新婚旅行の旅先でダルジュロスに会ったという。
 

そのとき託されたダルジュロスの“毒薬”をポールに手渡した。
 

それこそポールにとっては“宝物”なのだが、

 

エリザベートには、ポールが今、その“宝物”を飲みほして、

 

自分も死ぬことだけが二人の奇蹟の唯一の解決なのだった。

エリザベートの予感どおり、やがてポールはその“毒薬”を飲み込んだ。

 

最後のポールの手紙を受けとったアガータは大急ぎでエリザベート邸にかけつけた。
 

もはや手のほどこしようがなかった。しかし、
 

ポールはこれまでのことをすべて打ち明けた。かすかな息で真実を告げたのだ。
 

アガートは黙って聞いた。
 

歪んだ策略の真相が紐解かれたのだ。
 

″エリザベートのせいね。
 

だまされたのね私は″

″もう遅いよ″
 

ポールは生汗と虫の息の下から
 

エリザベートに
 

″怪物め″と出せる限りの声で
 

蔑んだ。

″許さない″というアガート。

エリザベートは
 

″あんたを彼女に渡すなんて絶対に嫌よ″とポールに言った。そして

エリザベートは、ポールの死を確認すると、
 

引き出しから銃を取り出し
 

自らの胸に銃口をむけた。

★ メルヴィルさんの世界は見事ですね。

キャストの年齢的なハンデも感じさせない。

姉のエリザベート役は
 

ニコル・ステファーヌで26歳。
 

弟のポール役は24歳の
 

エドゥアール・デルミットが演じている。

メルヴィル自ら選んだというジュゼッペ・トレッリの協奏曲。
 

当時はヴィヴァルディの作品と思われていたのかタイトルバックには
 

ヴィヴァルディと
 

記されている。

バッハ曲のようですが美しい曲です。

殺人鬼は息もつかず
 

ナイフを振り下ろすことを
 

彼女の本能は知っていた
 

まるで蜘蛛のように
 

夜の奥深くに糸を張りながらーー
 

ゆっくりと果てることなく
 

進むのだ・・・

 銃声が鳴り響き、エリザベートが仰向けに倒れ、ポールの部屋を囲んでいた屏風が
 

瞬時にパラパラと崩れる
 

このラストシーンは、

聞くところによる
 

ピガール劇場のエレベーターを活用したというカメラワークと
 

音楽の劇的効果により、
 

すばらしいものとなった。


ドラマティックなラストシーンをいくつも撮っているメルヴィルだが、
 

様式的には
 

恐るべき子供たちは
 

極めて古典的であって
 

また新しい波のようでもある。

コクトーはこのラストに反対したらしい。
 

絶命した姉弟が一枚のシーツに包まれて

 

天国にのぼるシーンを加えるべきだと主張したらしい。

 

  がどちらが良かったのだろうか?


アンリ.ドカエはヌーヴェルバーグの映画作品を支え、

 

その後ハリウッドでもカメラを回している。

1949年、
 

ジャン.ピエール.メルヴィルが
 

(海の沈黙)で
 

デビュー時、
 

ドカエも撮影デビュー。

以降 主なドカエが撮った
 

作品群、

恐るべき子供たち
 

死刑台のエレベーター
 

いとこ同志
 

大人は判ってくれない
 

太陽がいっぱい
 

生きる歓び
 

シベールの日曜日
 

将軍たちの夜
 

サムライ
 

仁義

 

街頭ロケでもどこでも
 

手持ちカメラで撮ったドカエの撮影は
 

あらゆる監督から引っ張りダコであった。

この作品の原作は
 

最もコクトーらしい作品と言われ
 

運命の受託がテーマかなあ

恐るべき子供たちは
 

古典文学の悲劇を思わせるものだ。

ジェラールがダルジュロスから受け取った毒薬を
 

エリザベートは二人してそれを飲み干すことが“奇跡”の完成と悟るのだった。
 

閉ざされた空間の中で、子供の秩序を生き抜こうとする姉弟の間のちょっとした
 

ほころびから
 

吹きこぼれるものを
 

受け止めることが出来ない。

能を思わせる舞台装置での圧巻のラストシーン。
 

エリザベートのニコール.ステファーヌの見事な悲劇女優ぶりは圧巻。
 

一度は観ておくべき作品だと思います。

 

 

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