『その男ゾルバ』・豪快で やんちゃで、アクの強い 存在感 アンソニー.クィーン | 吐夢の映画日記と日々の雑感

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好きなのは戦前のフランス映画です。

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やんちゃで豪快でそれでいてアクも強い
魅力ある俳優アンソニー・クイン  (その男ゾルバ)

こんばんは。
いつも御訪問いただきましてありがとうございます。
日本の女優さんのシリーズはボチボチと進めてまいりますが、

西洋の俳優さんにもちょっとづつスポットを充ててみたいと思います。
まずは、
★アンソニー・クインさん★

一言で言って血の気の多い駄々っ子というか
暴れん坊という印象が強いクイーンですね。

我々のもう少し前の世代の男性方には
すこぶる人気のあった俳優さんです。

男臭さの中にどこか茶目っ気と愛嬌がある。
アクの強さが魅力だと聞いております。
国籍が何処だろう?という程、
多国の人物を演じて、観客を唸らせるのは彼と
アレック・ギネスのふたりでしょね。

1936年のデビュー以来
2001年に没するまでの出演作品は100を超えるという。

主役でもさることながら
そのエネルギッシュな大物バイプレーヤーぶりも
独特で特異な存在なのでした。

資料によると
アイルランド系の父とメキシコ人の母から1915年に
誕生している。

その当時、
二枚目が悪者をやっつけるというハリウッドの映画では
最初は当然彼等の引き立て役として重宝されたようである。

セシル.B.デミルの大型映画にはうってつけだったようで
主役ではなかったが
そこでアクション物にたくさんでていたようだ。

10年ほどそんな役回りが続き、M.ブランドが映画で演じた
”欲望という名の電車”の舞台に立つ事になり、
それがきっかけで
あの名作、
  ”革命児サパタ”(1952年)に

出演。で
アカデミー助演賞を獲得した。


マーロン・ブランド扮するサパタの兄の役・
それからアラビアのロレンスでは、
ハウエイタット族の長 アウダ・アブ・タイの
豪快な役どころ・



(ナバロンの要塞)ではギリシャ軍の将校かつレジスタンス闘士のスタブロス大佐。


後はご存知..
フェリーニの ”道” での
獣のような人間らしさのかけらもないザンパノ役で
我々の前に登場したわけですね。


因みに 役名の ザンパノとは  イタリア語で悪のことで悪漢の象徴。
ジェルソミーナの意はジャスミンの花のことで  純粋 を意味する・
この名前で作品の言いたいテーマがわかりますね・
そして、二度目の助演賞を勝ち取る”炎の人ゴッホ”と続く。

私の鑑賞した彼の作品はたかだか10本くらいのものですが
あの、
やんちゃで愛嬌があってそれでいて優しい目(黒目がちの澄んだ目)をした
クイーンの独特な図太い演技が大好きです。

”ナバロンの要塞”、ではどうか死なないで!!と思い
”日曜日には鼠を殺せ”では悪役とはいえどこか間が抜けていて
憎めなかった。

”アラビアのロレンス”では
アカバの町を略奪し馬にまたがる彼、アウドは
ロレンスよりもファイサル王子よりも豪快な魅力に溢れ
私を魅了したし、

”その男ゾルバ”は彼の作品ではわたしのもっとも好きな作品である。

ギリシャの風土に溶け込みそのたくましい生命力と
いつものぎらぎらした迫力が全然感じられない軽妙な演技は
ゾルバ=クイーン??と思う程良かった。

”砂漠のライオン”ではリビアの遊牧民の長として
このとき65歳位かなあ...なんとも枯れた慈愛に満ちた
聖父のような姿...
そしてナバロンで見せたこの人に任せておけば安心だ・・・という
戦略や、ロレンスで見せた豪快さを、後半見せながら、
死につくときの何ともいえない崇高さとも言おうか
魅了されました。
そして2001年に86歳でお亡くなりになりましたが
その5年位前に(雲の中で散歩)というキアヌ・リーブス主演の作品で
彼が恋する農園の娘のおじいちゃん役、80歳くらいですか・・・
もう可愛くて最期のいい作品に出会えました・

ともあれ、脇に回っても、敵役になっても
いつもクイーンの存在は光っていて我々を魅了してやまなかった。

という事で、今夜は好きな作品、
   ”その男ゾルバ”を取上げようと思います




”その男ゾルバ”  1964年度作品
製作  米
監督  マイケル・カコニヤス
出演  アンソニー・クイン、アラン.ベイツ
    イレーネ.パパス、リラ.ケドローバ

  あらすじ
亡くなった父の残した炭鉱を再開しようと
ギリシャはクレタ島に渡ろうとしていた
英国の作家、バジル(アラン.ベイツ)は、
待合所で不思議な魅力を持つゾルバ(アンソニー.クイン)と
出会った。

強引にゾルバはバジルに現場監督として雇ってくれと言い、
バジルは何となくO.Kしてしまった。

島に着くと一軒しかない安ホテルに落ち着く事にしたバジル。
ホテルの経営者はもう、老年と言った方がよい未亡人であった。
彼女はフランス人で昔は踊り子だったようだが
何人もの男たちを遍歴した女性で、
ここではよそ者でもあり、孤独でもあり、
ゾルバを最後の男として愛している。

バジルは見るもの、聞くもの珍しく興味を持った。
閉鎖した炭鉱の再開ではやはり朽ちた柱などが倒れ、
最初から無理だった。

そこでゾルバは発想を変え、
バジルに製材所をやろうと提案した。
とてつもないことを思いつくゾルバは自分でもわかっていて
失敗してもいいか?とバジルに打診した。

O.Kしたバジルに嬉しさを身体で...ダンスで表現した。
そのおおらかさにバジルは益々ゾルバに魅かれていった。

炭鉱はバジルのものであるがその上の山は修道院の所有物。

ゾルバは修道士達を天性のユーモアで説得し、山の木の伐採を許してもらった。
さて、頂上から海まで、ケーブルを張って木を降ろす計画だったが・・・・。

ゾルバは酒を愛し、女を愛し、人生を謳歌し・・・・
だが失敗も多い憎めない男。

ホテルの女主人が昔の栄華を
唯一の自慢として話すのを黙って聞いてやるゾルバ。
例え、バジルにとって苦笑いの話でもだ。

女を真に理解するゾルバは
この女主人にとって今何をしてやればいいかを
よく知っていた。

結婚も約束し、
ウエディングドレスも用意してやろうと思っていた。

しかし、ケーブルの材料の手配の為に島を離れたゾルバは
酒場の若い女と一緒で何日も島を留守にした。

帰ってきたゾルバに敏感な女主人は泣いてゾルバを責めた。

老いの不安と体調のすぐれない彼女はただただ、ゾルバとの
結婚を願っていた。

着飾れば着飾るほどに老醜の浮き上がる彼女に
まるで幼女のようにゾルバは接した。

バジルとて彼女をレディとして扱った。

さて、
島にはもうひとり美貌の未亡人(イレーネ・パパス)がいた。

島の男たちは彼女をものにしようと虎視眈々と狙っていたが
彼女は誰にも冷たく、心も開かなかった。

中でも、男たちのリーダーの息子は
彼女に本気で熱を上げていたが
見向きもしない彼女に仲間たちは、
彼女の家の窓を割るなど嫌がらせをしていた。

いつもの嫌がらせに、たまたま居合わせたゾルバとバジルは
彼女を助けた。

生憎の雨に蝙蝠傘をそっと差し出したバジルに
未亡人は島の男たちに向けるきつい眼差しとは違う
優しい目を返した。

未亡人から届いたお礼のクッキー。
咄嗟に隠したバジルだったが、
久しぶりに帰ってきたゾルバは
すぐにそれを見つけ、
未亡人の気持ちを汲んでやれと世話を焼いた。

何日かしてバジルは未亡人を訪ね、その夜はそこに泊まった。

それを知ったリーダーの息子は海に身を投げて死んだ。

逆恨みをしたそのリーダーは仲間達と一緒に
礼拝に来る大勢の信者達の前で彼女を取り囲んだ。

ナイフを持って彼女に迫る彼を一旦はゾルバが救ったが、
目を離した隙に彼女はリーダーに刺され死んだ。

何故?未亡人が独身の男と恋に落ちて、姦通在なのか??
ここにギリシャ悲劇を盛り込んでいるのでしょうね。??

バジルは紳士だ。
自分のせいで彼女を死なせてしまったことを悔いた。

体調のすぐれなかったホテルの女主人は病が重く、
死期の近い事を知っていた。

バジルの立会いの元、ゾルバは彼女と式を挙げた。

死期の迫った彼女の財産を狙って島の女たちが
ぞくぞくと集まって来た.

まだ息を引き取ってもいないのに黒衣の老女達が
部屋の中にまで入ってきて座り込み何を盗み取るか
見回しているその姿は背筋が寒くなる。

しかし、これはギリシャの古くからの習慣なのだろう。

入って来られた彼女にしてみれば
”お前はもうすぐ死ぬんだ”と言われているようで切ない。

”怖くない,俺がそばについているんだよ”とゾルバは
彼女を抱きしめ、そしてその腕の中で息を引き取った。

振り向くと部屋にはベッドと彼女だけになっていた。

異国人,まして異教徒の彼女は
教会の墓には葬る事は出来ないのだと
ゾルバはバジルに言った。

可愛そうだというバジルにゾルバは
”死んだ彼女にはもう何も分らんさ”と吐き捨てた・
人生を謳歌し、豪放磊落なゾルバの言葉だからこそ
ギリシャの風土に培われた諦観が滲み出ています。


木材運搬ケーブルはちゃちなものだったが一応,竣工式というか
試運転を行ったバジルとゾルバ。

修道士や老僧も交え、始まった。
ものすごい勢いで下ってくる大きな木材。

三度目でケーブルの柱はドミノ倒しのように崩れていった。

焼けたマトンを頬張りながら大笑いをする二人。

”坊さんがびっくらこいで逃げていったぜ”ワハハと・・・・

”やっと腹の底から笑ったなあ”と
ゾルバはバジルの肩を叩いた。

明日は島を去ると言うバジルはゾルバに
島の  あの踊り、ダンスを 教えてくれと・・
二人ステップを踏むのだった。

強靭な生命力を感じさせるギリシャ人ゾルバ。

軽妙にそして温かく,真実を達観して豪快に生きるゾルバ。

几帳面な英国人作家とこの豪放磊落な正反対のギリシャ人との
奇妙な友情は最初から最後まで心地よく、ラストのダンスで
本物となった。

同じくギリシャの風土を描いた”日曜はダメよ”の
底抜けに明るいギリシャ人気質・

対照的な目線で描いた”その男ゾルバ”は
二人の友情が強い信頼関係となっていくのを縦軸に
愛、友情、生きる事の素晴らしさ,歓び,苦しみ、
そしてギリシャの風土に根付く”死”というものを真っ向から
どうだ!と言わんばかりにつき向けてきた。

ゾルバの恋人を演じたリラ.ケドローバはこの作品で
アカデミー助演女優賞を受賞。

愛と優しさ溢れるゾルバはクイーンあって生まれた作品。
不朽の名作でしょう.
 
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