『用心棒』・和製ウエスタン・1961年度・三船敏郎 | 吐夢の映画日記と日々の雑感

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  黒澤明監督作品



製作  東宝  
1961年度作品
監督  黒澤 明
撮影  宮川一夫
出演  三船敏郎
仲代達矢
東野英治郎
山田五十鈴
司 葉子



和製 西部劇
(用心棒)のこと

1970年代テレビで、三匹の侍などに見られるような
それまでの時代劇、チャンバラとは、
違ったリアルで荒々しいテレビ時代劇がこぞって放映されるように
なった.

これは、おそらく黒澤明の痛快娯楽時代劇としては最も面白い
≪用心棒≫のヒットの影響であろう.

≪七人の侍≫は別格として後に述べる楽しみとして
とっておきます。

それまでの時代劇は様式美優先のものでしたが、
この用心棒は完全に西部劇の影響濃く、
もともと、黒澤監督が
ジョン.フオードの大フアンであり、西部劇の
フアンであったことから、
こういう娯楽作品を作るのは得意だったと思うのである。
完全に和製西部劇なんですけれど、
マカロニウエスタンの
(荒野の用心棒)は
黒澤用心棒がベースですよね。


その後に作られた
≪椿三十郎≫の少し軽妙なタッチの作品も大好きですが。

黒澤作品としてはこの後作られた≪天国と地獄≫が
ピークのような気がします。

なぜなら、偉大な監督、と言われ続け、問題作や、ヒューマニズム
といった、テーマに束縛されてしまい、才能があるからかえって
ご自分の本来好きな西部劇のような
肩を抜いて楽しめる映画に
取り組めなかったように思うのですが。。。

それが、この作品で子供がおもちゃを得た時のように、
又、水を得た魚のように、彼の娯楽作品としてのあらゆる
才能と、また、観客を喜ばせる妙を心得た
エネルギーを
一挙に注ぎ込んで作られたように思う。

過去、或いは当時 優れた時代劇は作られたが、
手放しで楽しめる痛快と言う名の作品はこれが最初であろう。

セットの宿場町は、完全に西部劇のゴーストタウンであり、
殺し屋が身に付けたマフラーや、持っているピストルなど
時代劇としては非現実的である.
砂塵の舞い上がる程の殺陣のシーンのド迫力、
その人物設定など、完全に西部劇そのものである。

これが、西部劇と比べ完璧に抜きん出ているのは、
宮川一夫のカメラワークであろう.

洗練された彼のカメラは
いくら黒澤の指示とはいえ、あの
(羅生門)で証明されている筈だ。

そのストーリー展開もやはり唸らせるものがあり、
殺陣のシーンというよりアクションシーンと呼ぶほうが
ふさわしい。

ドラマとしても面白く、
配役、シチュエーション、どれを視点において観ても
第一級の”痛快娯楽時代劇”である.

黒澤作品では、最初一分間の出演→通行人であった仲代達矢が
三船敏郎相手の敵役から始まって、
三船が黒澤映画を卒業した後の主役へと変わるその過程として
観ても面白いのではないでしょうか.