『近松物語』・日本の女優さん14 香川京子さん ・ 1953年度 | 吐夢の映画日記と日々の雑感

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香川京子さん









日本の女優さん14
香川京子さん
《近松物語》

香川京子さんと言えば
私の場合は
(東京物語)に登場する
父親 笠智衆さんの末娘京子が
浮かぶ。

巨匠たちに愛され続けてきた女優さんである。

1949年に18歳でデビューして
12作目が成瀬監督の(稲妻)
13作目が
1953年の小津監督の(東京物語)と今井正監督の
(ひめゆりの塔)です。

22歳。(山椒大夫)、(近松物語)、

成瀬監督の(驟雨)を経て
1957年の(どん底)から
黒澤明監督作品の 常連になっていきます。

近所のチョットきれいな
お姉さん的存在で、
高峰秀子主演の(稲妻)や
原 節子主演の(驟雨)に
登場する学生っぽいお姉さんは気さくで気取らず、どこか
品があって......と香川さんそのもののような役が印象深いです。
(悪い奴ほどよく眠る)、
(天国と地獄)と黒澤作品では、両方共、三船敏朗さんの
妻役。
今年封切られた
(天使のいる図書館)まで
現役で活躍!と息の長い女優さんです。
八千草薫さんと並んで
永遠の乙女‼️

さて、で今夜は
溝口健二監督の ≪近松物語≫を取り上げます。
お嬢さんが、道行き の相方を
務めるまでの大人女優さんに
なられた作品だから。

本作品は、≪雨月物語≫や
《西鶴一代女》に勝るとも劣らないと
わたくしは思っております。
緊張感に満ちた愛の昂揚を描いてすがすがしい.

ストーリー

総師屋という店の内儀...
お部屋様と呼ばれているおさん(香川京子)
その手代茂兵衛(長谷川一夫)

ケチで傲慢で情のない主人に嫁いでから
笑った事があっただろうか。
おさんは優しい、控えめな女性である.
実家の兄が金のむしんに来た事で胸を痛めていた。

主人は下働きのお玉(南田洋子)にも言い寄っていて困った
お玉は茂兵衛と言い交わした仲だと嘘をつく。

ある日おさんの困ったのを見かねた茂兵衛は
今で言う私文書偽造、つまり主人の実印を勝手に使おうとした、
しかし,思いなおして主人に詫びるが、主人はお玉の事もあって
決して茂兵衛を許さなかった。
屋根裏に閉じ込められた茂兵衛はここを出て上方へ行こうと
お玉の部屋に別れを告げに来た。しかし、そこには
おさんが寝ていた。

夜這いしてくるあるじをとっちめ様としたのだが
運悪くもうひとりの手代に誤解され、
濡れ衣を着せられたまま店を飛び出る。

おさんは主にわけを説くが聞こうとしない、
とうとう嫌気のさしたおさんも店を出てしまう。
ここまでは疑惑であり二人の間に憎からずと思ってはいても
愛などなかった。

偶然あったおさんと茂兵衛は結局、一緒に旅立つ。
追っ手は密に迫る。何故なら公にすると、不義密通者を出したかどで、
店はお取りつぶしになるからだ.

しかし、この取り潰しを狙う商売敵も手代を抱き込んだりと
話しはややこしくなってくる。

茂兵衛の実家もおさんの実家も巻き込んでしまう。
しかし,最初は愛も芽生えてないただの主人と手代だったが
逃げる旅路で次第に二人は一時も離れられないほど
愛し合うようになるのである。
ラストはふたり裸馬に乗せられ、市中引き回しとなるわけだが
このときのおさんの安らかな笑みが痛々しい。
茂兵衛も晴れ晴れとしている。

もう離れなくても良いからだ.

疑惑を事実にさせてしまったのは他ならぬあるじである.

周りのものが目に入らなくなるほどの愛.
家族や家のことなどもうどうでもよい
その理性を失った、転がるように道行の運命に身を任せる二人.

随所に名場面があり、映像の美しさを堪能させてくれます。
茂兵衛がおさんを肩に乗せ、湿地を渡る場面や、
小船で愛を語るシーンは墨絵を思わせる、宮川一夫のカメラが
絶品です.

効果音も抜群で、特に拍子木の効果は歌舞伎を意識してかつ
成功している。

抑制の利いた完成度の高い作品となっています。
チャンバラスター長谷川一夫の唯一の芸術作品出演映画である。

制作  大映  1954年度
監督  溝口健二
撮影  宮川一夫
 
1954年度キネマ旬報ベストテンの
         第5位