《心の旅路》文芸ロマン第二夜 ジェームス.ヒルトン原作・1942年度作品 | 吐夢の映画日記と日々の雑感

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懐かしい名画、最近の気になる映画、映画への思いなどを綴っています。特に好きなフランス映画のことを書いていきたいです。

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≪心の旅路≫







『心の旅路』1941年に出版されたジェームズ・ヒルトン作の小説である。



その年のニューヨーク・タイムズベストセラー小説リストの2位になっている。

監督 マービン.ルロイが

グリア.ガースンをヒロインにメガホンをとっています。



グリア.ガースンについて

少し触れましょう。



≪チップス先生さようなら≫,≪ミニヴァー夫人≫、

≪心の旅路≫、≪キューリー夫人≫というところが

代表作でしょうか。



その中でも最も彼女の魅力が観客に受けた作品は

≪心の旅路≫でしょう。



いかにも優等生という雰囲気とエレガントで威厳の中にも

どことなく母性を感じさせる容貌は、アメリカ人の最も

好むスターでありましょう。



1908年、北アイルランド生まれ。

小学生からロンドン大学卒業までずっと優待生で通し、

広告会社に勤務するかたわら演劇に興味を持ち、アマチュア劇団に参加。

ローレンス.オリヴィェとも共演。

ハリウッドのプロデューサーに見出され、≪チップス先生さようなら≫で

デヴュー。



ウイリアム.ワイラー監督の≪ミニヴァー夫人≫でアカデミー主演女優賞を

獲得。



美しさにもいろいろなタイプがあるがこのひとのそれは

典雅なまでの気品と溢れる知性、それらを合わせた

どう表現したらよいか、静かな澄み切った湖のような、

話をするのも恐れ多いような雰囲気。

麗人というにはあまりに俗っぽ過ぎる表現である。

高貴な清廉な貴婦人というに相応しい女優である。



だからこそ彼女の女優生命はあまりに短い。



そういった雰囲気がハリウッドでは彼女の素材を生かす作品に

限りがあったのであろう.。



受けた教育の高さは全身に一分の隙もなく、静かな上にも

華やかさまで漂わせた彼女はわずか2,3年の華で終わってしまうのである。



だが、私の大好きな作品、≪心の旅路≫では、

記憶喪失の男を助け,恋に落ち結婚するが、

交通事故で記憶喪失前の記憶を取り戻し,

自分の事を忘れてしまった男に

迫るでもなく、じっと耐え、そばで自分を思い出してくれるまで

必死に見守る健気な女性を演じる彼女は

観るものの心を捉えて離さなかった。



そういった役どころが彼女についてまわり、ついに

華麗に咲き誇ったハリウッドのこの女優は

≪キューリー夫人≫の後は再び華麗な華を私たちに

見せてくれることはなかった。



だが、≪ミニヴアー夫人≫、≪心の旅路≫、≪キューリー夫人≫の

3本の作品だけで充分私たちに深い印象を植え付けた事は

確かである。

文芸ロマンに相応しい

作品だと思います。





    ≪心の旅路≫

監督 マービン.ルロイ

出演  

スミシー=チャールズ....ロナルドコールマン    
ポーラ..... 

グリア.ガースン



  ストーリー





第一次大戦が終わった1918年。

戦争で記憶を失ったチャールズは自分の名前も

思い出せない記憶喪失となり、精神病院に収容されていた。

何処で生まれたか、両親のことも、自分の名前もわからない。



彼は病院を抜け出した。

雑貨屋で不信をもたれ、病院に連絡しようとした店の主人を見ていた
ポーラという踊り子に
助けられた。


彼女は言葉も満足に喋れなくなっているこの男のことが

放っておけずに、自分の泊まっているホテルヘと連れて帰る。



彼はひどい熱で彼女は必死で看病した。



次の公演先に一緒に連れて行こうとした矢先に

病院を抜け出た事をおまわりが溜まり場のバーにやってきて

喋った為にマネージャーは危険だと言って
同行は取りやめになった。



彼女は決心して巡業についていく事を止め、

彼と逃げる事にした。



ふたりはメルブリッジの町へ逃れ、そこで所帯を持った。

新しい家も買い、ふたりは幸せに酔ってその家の鍵を開けた。。。。



三年の月日が流れ、

楽しい日々、病院でつけられた名前スミシーと

ポーラに男の子も生まれ、

作家として独り立ちしようとしていたスミシーであった。



彼に,リバプールの出版社から,採用通知が来た。

出かけた彼は大通りで事故に会い、戦争中の記憶が戻った。



もちろん生家の住所や名前も思い出した・

しかし、それと同時にこの三年間の記憶は失われてしまったのである。



帰れば分る!と汽車に乗った。

帰り着いた我が家はその日が父の葬式の日であった。



姪のキティに会ったのもその日だった。



大学へ戻って教鞭をとろうとした。

キティは15歳。この少女は一目でこの叔父に恋をし、

自分が一人前になるまで結婚してはいけないわと彼に迫った。

チャールズは父の後をついで事業を存続するため、活躍をはじめた。



実業界のプリンスとして新聞にも載った。

3年4年と経ち、キティもレデイになり、チャールズも彼女の

魅力に結婚を考え始めていた。



しかし、いつも気になっていることがあった。

事故に遭ったときにコートのポケットに入っていたどこかの鍵だ!。



いつも肌身はなさずに身に付けているその鍵を

チャールズは時おり眺めては何かを思い出そうとするが

どうしてもダメだった。



彼は休暇をとってキティと出かけようとしていた。



新しく雇った秘書は頭も切れ仕事もてきぱきとこなし、

チャールズの片腕となっていた・



そう、ポーラであった。



ポーラは"実業界のプリンス”としての記事を見て、

すぐにこの会社に応募してきたのだった。



自分を見ても何の反応も示さない夫に

自宅に帰ってから毎日、毎日泣いた。



それでも今、自分が三年間一緒に暮らした妻だと名乗り出ても

彼のあの頃の愛が戻るとは思えない。



彼が自らかつて愛したポーラという女性に会いに来るまでは

どうしても待つつもりであった。



ポーラは夫が失踪してから病気になり、男の子も死に、

舞台に戻ったがそれも上手くいかずに夜学で速記を習い

何とか働いていた。そして弁護士に相談したがスミシーの

消息はつかめず、死亡とみなされていた。結婚は無効となった。

そんなときの新聞記事だった。。。。。。



チャールズとキティは結婚式を控えていた。



教会で式のリハーサルをしていて、チャールズはじっと

祭壇に見入った。



まじまじとキティの顔を見た。



うつろなそのチャールズの顔にキティは

自分への彼の愛は本物ではないと

分った。

キテイは、自分の幸せだけを考えていた事に気付いた。



チャールズの心の中にいる誰かを女の直感で彼自身よりも

分っていたのである。



キテイは彼にその人を捜すように示唆した。



チャールズは姿を消した。



それを聴いたポーラは詳しくその時の様子を執事から聞き、

急ぎメルブリッジへと出かけた。



メルブリッジのホテルで社長と秘書としてふたりは向き合った。



記憶を取り戻したあの事故の様子をポーラはひとつひとつ

聞き出し、彼の記憶を引き寄せてゆくのだった。



だが、その日は無駄だった。



それからチャールズとポーラは新しい付き合いが始まった。



チャールズは以前にも同じようなことを感じるといった

ポーラへの親しみを感じた。



それが何だかわからない。。。



だが、チャールズはポーラに結婚を申し込んだ。



ポーラにとってそれはスミシーとの再婚ではない。



あくまでもチャールズとの結婚であった。

それでも嬉しかった。



政治家となったチャールズ。

ポーラはレイニエ夫人として

華やかな毎日を送った。

観劇や舞踏会。。。



首相のダンスの相手をもするポーラは

社交界でも花形であった。



三回目の結婚記念日。

喜ぶ夫。



だが、ポーラにとって幸せの形は違っていた。



いつか思い出してくれる夫をひたすら待った。

ポーラにとっては

今のチャールズの妻という仮の妻を演じているようなもの

であった。

一人苦しむポーラ。



ある人からもらったというネックレスを

チャールズに見せた.



彼は彼で何かに苦しんでいる妻に気付いてはいる。

愛し合ってはいるが

なにかが満たされていないのである。



マーガレットという仮の名もポーラには苦しい。



ポーラは思い出の場所へ旅をするといって出かけた。



見送るチャールズ。



メルブリッジのチャールズの工場でストライキが起こり、

彼は出かけた。



話し合いは上手くいき解決した。



町を歩いていて

前にも一度見たような景色に彼は不思議な感覚を

味わった。



病院を思い出しそこを訪ねた。



そしてそこから

記憶を辿っていった。



霧に霞むあの家まで辿り着いた。



ポーラもこの町にいた。

ホテルで男の人があの家のことを尋ねたと聞いて

彼女も急いだ。



家の門を開け、恐る恐る玄関の扉に近づいた

チャールズは鍵を穴に

差し込んだ。



扉は静かに開いた。

後ろの門からポーラが

    ”スミシー。。。。あなた。。。”と呼んだ。



    ”ポーラ...”とふたりはひしと抱き合うのでした。



おわり・  



1942年度作品