《Z》  ・サスペンス映画第五夜 政治サスペンス1969年度作品 | 吐夢の映画日記と日々の雑感

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懐かしい名画、最近の気になる映画、映画への思いなどを綴っています。特に好きなフランス映画のことを書いていきたいです。

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本日は≪Z≫・・・・政治サスペンス映画の決定版を・・・

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イヴ・モンタンとコスタ・ガヴラス監督は
切っても切り離せない関係にある。

モンタンは進歩的な思想人として知られいて、
ソ連各地でのシャンソンの公演でも聴衆を熱狂的な感動に
包んだばかりでなく、
スペイン亡命作家や、コスタ・ガヴラス監督等の
左翼作家達と友情を保った間柄にあった。

モンタンはガヴラスの三部作、
≪Z≫や、≪告白≫,≪戒厳令≫には
自分のことのように積極的にその製作に打ち込んだという。

以前・ジャン・ルイ・トランテイニアンの作品として、《Z》を取り上げて欲しいとのことでしたが、
今夜、やっととりあげます。
この作品は1969年度の作品なのですが、
ドロン作品でお馴染み・・常連さんの脇役陣が勢ぞろいで
その楽しさもあります。

親戚の人々に会ったようなたのしさ....

ドロン特集をしていなければ
何の気なしに通り過ぎる俳優さんたちでしたが
おかげさまであの人もこの人も・と顔見知りとして
楽しめました・


名前は、まだはっきりと整理できていないのですが、
主役のトランテイニアンや、ジャック.ペランを除けば
まるでドロン作品のようなメンバーの豪華キャストです.

作品は政治サスペンス,最もわたしの好きな分野です。


松本清張の一連の黒い霧を思わせるモヤモヤ感、
サスペンスから、

政治的、社会的告発に重点が移って行き、

あまりに面白く展開したことがサスペンスを期待する向きには

途中で犯人がわかってしまう不満があるだろうが

それでもわたしには抜群に面白い作品だと満足している。


ストーリーは・・・


大学教授で博士と呼ばれている、議員でもある反体制政治家の
ボス(イヴ・モンタン)が
ギリシャとおぼしき国に講演をするために降り立つ。
厳重な警戒体勢は反体制派が取り仕切っている。

右翼側、警察、憲兵隊は非協力的で、というよりもむしろ
会場の提供さえ体よく阻み、民衆も真っ二つに分かれていた。

その朝、反体制の党員のもとに
匿名電話がかかり、博士を暗殺するという情報が
入ったためであった。


そんな講演の後、
博士は会場の向かいのホテルへ移動しようとして
群衆の中を割って入ってきた三輪車に道を塞がれる。

荷台にいた男がいきなり博士を棍棒のようなもので殴打した。

博士は意識不明の重体だった。

ある議員がその三輪車を追っかけ、
彼もその運転手に殴打されたが、
運転手が警察に尋問された隙に逃げた。

運転手は酔っ払い運転を装い、警察署長も憲兵隊長も
それを認め、荷台にいた男も、途中で逃げていた。

そしてなぜか、警察はこの事件を強引に事故で処理しようと
検事にその旨を報告した・

博士と別居中であったエレーヌ(イレーネ・パパス)は
博士のもとへ駆けつけたが彼はそのまま息を引き取っていた。

ここに予審判事(ジャン・ルイ・トランティニアン)と
新聞記者(ジャック・ペラン)が登場。

予審判事はひとうひとつの証拠を取上げ、
具体的に調べていくが、
だれを調べても、
警察の息がかかっていて、
事故死という壁から
突破できないように思われた・

しかし、ひとりの証人が名乗り出た。

判事に会いに出かける途中で
彼も襲われたが
幸い怪我で済んでいた。

病院のベッドに警察署長と憲兵隊長が現れ,偽の証言をすると
偽証罪に問われる。
オマエの思い違いだろうといった。脅しをかけてきたのだ。


そのあと、予審判事が訪ねると新聞記者もやってきて、
彼の話に登場する人物は、
逃げた三輪車を追っかけた議員を襲った犯人の名だとわかった。

その後、逃げた三輪車の荷台にいた男が心臓病を装って入院し、
その証人を殺そうとしたが、
記者がいたために未遂に終わり、
予審判事に捕まってしまった。

そして博士の死体解剖をさせた予審判事は
医師の話から
死因は車からの転落ではなく
棍棒のようなもので
頭を殴打され、
頭蓋骨陥没が原因だという確証を掴み、検事に報告した。

しかし、右翼側とまではいかなくても彼もまた,組織の人・・・。

あらぬ波風を立てたくない・
検事総長共々、予審判事を抱き込もうとしたが、
彼は、ゆるやかな脅しにも,権力にも屈しなかった。

容疑者を誘導尋問によって
吐露させ、
警察と憲兵隊長が黒幕であることをはっきりとさせた。

芋づる式に大物が捕まり、
検事や法の機関の大物
警察署長,憲兵隊長他関連者は逮捕され、

雑魚は刑・・5年から10年と決まった。


しかし、その後、憲兵隊も警察署長も不起訴となり、
トカゲの尻尾のようにまた権力を蘇えらせた。

予審判事は職を解かれ、反体制の幹部達は流刑。
記者は公文書の偽造という罪で社会から
抹殺されていくのであった・・・・。



映像を武器として
国家権力と対決していく、ガブラスの映画姿勢が
なんとも素晴らしい作品です・

確かにサスペンスとしても楽しめるのだが、
そう決めるとガヴラスにお目玉を頂戴するかもしれない。

本当の戦慄と恐怖をはらんでいる作品とはこういう作品を
指すのではないだろうか。

公開当時、ギリシャではもちろん上映禁止。

トランティニアンの
本ものの正義感と
ラストの挫折ぶりに
なんだか感動を覚えました。

ジャック・ぺランもまだ若く、初々しい。

モンタンは
渋さと知性と静かな熱情を漂わせ歌手ではない彼の
演技が光る。

不条理が最初から最後まで付きまとうが、
トランティニアンの予審検事が次々と暴いていく過程は
胸がすかっとする・

しかし,やはり、不条理のラストが待っていた。

大好きなイレーネ・パパスはやはりキレイだし、
ミキス・テオドラキスの音楽は随所で光りますし、
この音楽も耳に心地よいですね。

1969年度、仏、アルジェリアの合作