『ビッグ・ガン』・ドロン作品・《伊.仏合作》1972年度 | 吐夢の映画日記と日々の雑感

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≪ビッグ.ガン≫
アラン.ドロン生誕80年ということで、昨日に続き、
ドロン作品を取り上げます。

85全作品の内
未鑑賞作品が三作位ですか。
昨年11月に亡くなったわたくしのパートナー犬の名前も
ドロンちゃんとつけた位の
ドロンさまファンでございます。
姿 形が二枚目だからではなく、生き様、生き方が
二枚目なドロンさんの
ファンでございます。

さて、今夜の作品、
《ピッグ ガン》の
ドウッチョ.テッサリ監督は、
マカロニ.ウエスタンのジュリアーノ.ジェンマを
発掘,育てた職人監督である。

ドウッチョ監督は、
アランドロン.の孤独と影の魅力をいち早く見抜き、
ドロンの作品の中でも一段とハードなアクション、
悲劇の主人公を演じさせた。

ドロンの殺し屋作品の中でも、
これはシチリア人の殺し屋という特異な殺し屋である。

それは、マフイア発祥の地、シチリーという島と
シシリアンという血塗られた
歴史をもつシシリー出身という点にある。

多くのイタリア映画に繰り返し,繰り返し、描かれた場所。
ゴッドフアーザーにしろ、シシリアンにしろ、
シシリアの殺し屋の特質は
家族をことのほか大切にし、激情的で、誇りも高く、
復讐心も強い。

ビッグ.ガンでは、そんな性質を背負う殺し屋を演じるのである。

アランの実生活で、従軍時代に使って慣れていたのか?
M1911A1というコルトの自動拳銃が、この作品に登場する。
また、
各作品にこのコルトの大口径オートマテイックが頻繁に登場する。

ビッグ.ガン....その名のとおり 大きな口径 である。
また、組織の大物と言う意味ももつ。

家族だけがすべてだった凄腕の殺し屋が
支えを失って、その復讐に燃え、組織のボスに牙を向き、
そして組織の崩壊へと追いやっていく。
しかし、ドロンの苦い結末は...

一度見たら忘れられないシーン、そしてドロンさんの
表情である。

簡単なストーリー

ミラノに本部を持つ
イタリアの犯罪組織の一員であるトニー(ドロン)は
息子の7歳の誕生日を機に組織から足を洗おうとしていた。

ボスのニック(リチャード。コンテ)に掛け合うが
この世界から足を洗うには深入りしすぎたと
応じてはくれなかった。

一度決めたら突き進むトニーだったが、数日後、
妻と、愛する息子が出かけた直後、ベッドから起きて、
彼らを見送ろうとして窓ガラス越しに見たものは、
トニーの
車に仕掛けられた爆弾が爆発し妻と息子が車と共に炎上する光景だった。

ーーーこの窓越しに見るドロンの表情が
      この映画のすべてを語っている。--
妻子は即死であった。

愛するものを失ったトニーはいまや,組織への復讐を誓った。

悲しみの中、シシリーから出てきた両親と共に、
葬儀を行うトニーにまたもや組織は銃弾を浴びせてきた。

自分で、仇を裁こうなどと思ってはいかんよという
神父の言葉にも
氷のように凍りついた表情には届かないようだった。

パリ幹部(ロジェ.アナン)を、
彼の情婦サンドラ(カルラ.グラビナ)を
利用して消した。

コペンハーゲンで幹部達が集まると言う情報をくれたのも
サンドラだった。
そしてその幹部をすさまじい車の追跡と銃撃で倒したトニー。
だが、彼も負傷し、組織に脅されている昔からの親友に匿われ、
ボスを倒す機会を待つトニー・

傷つき、サンドラと共にミラノへ帰ってきたトニーは、
彼女とシチリアの両親のもとに逃れた。

折りしもシチリーでは
ボスの娘の結婚式が
行われようとしていた。
神父を通して、和解を望んで来たボス.

最初は拒んだものの、神父に説得のもとに
トニーは両親,サンドラと教会へ出向いた。

式も終わり花嫁を囲む人たちにまぎれ外へ出たトニーは
車でやってきた親友に笑顔で
近づき、車の窓へ顔を...

トニーの心臓めがけて銃口は発射した...。
たったひとりの親友も組織に屈したのだった。

えっ?という表情のままの死であった・

サムライで見せた、冷静沈着で、寡黙な殺し屋が
ドロンのあたり役ではあるが、
その後の作品に見られるキャラクターにも通じる、
本作品でのポーカーフエイス...氷のように凍りついた表情の下に、
燃え上がる激情を持つこんなキャラクターの方が
ドロン本来の魅力かもしれない。

すべての作品に彼の実生活での経験が魅力となって投影される。

本作品も、
外人部隊での経験、各地を放浪した過去を持つデビュー前の彼。
そんな二枚目の胡散臭さなど、
もろもろが 凝縮された一編であろう。

この作品も非常に画像がきれいです。
イタリアン流殺し屋は、走り、飛び,撃ち、
徹底的にアクションにこだわったドウッチオ監督の
演出に美しいドロンの顔は苦痛にゆがみます・

コペンハーゲン、シチリーと美しい画像は随所に見られ、
これで、ラストがボス打倒の結末なら..フアンとしては
思わないでもないが、

このにがーい結末は、≪ポーカー.フエイス≫のラスト
≪冒険者たち≫のラストと共に忘れることが出来ません。

悲劇の朝、
復讐
裏切り と食入る画面の迫力に只々、堪能しました・

ドロンの一貫した人物像では
ありながら、
一作一作違った魅力で観客をあきさせないもの。。
それは何なのでしょうね。。。

いつも申しますように、
彼のデビュー前の経験、過去を隠さずに画面に投影する・・

恥ずかしさなど微塵もなく、むしろ開き直りと潔さが
役の上での魅力を一層増してしまう、

あの美貌がすべてをプラスへと導いてしまう。

あの美貌が邪魔をしたと、批評家の雀たちが過去に
言っていましたが、逆です。

あの美貌だから彼の謎めいた過去が生きてくるのです。

生き様が役に全て投影される俳優は彼のみでしょう。

イタリアン.アクションの最高傑作といってよいでしょう。

1973年度作品
ジャンニ.フエリオのサントラ盤もいいですよー・