「で?俺たちはいつになったら元の世界に戻れるんだ?」

 

レジスタンス用に与えられた部屋で、アランは不服そうにソファに寝転がっていた。

 

「もう魔族倒し終わったんだろ?それならこれで物語は完結!めでたし、めでたし。じゃなかったのか?」

 

「私に文句言わないでよ。っていうか、命かけて無事に戻ってきた私に言うのがそれ?ねぎらいの言葉くらいかけて欲しいもんね」

 

向かいの椅子で、メグミがムスっとする。

 

彼女は続けた。

 

「そもそも、何で私があんたの部屋に?普通そっちから来るべきでしょ!」

 

「お前が勝手に来たんだろ。まぁ、もちろん俺たちだって心配してなかったわけじゃないぞ。出発間際に言ったろ。“死ぬな”って。こうして無事にお前が戻って、ホッとしてるんだ。ただ、怪我したって聞いてたから、無闇に会いに行かないほうがいいと思っただけだ」

 

「ふぅん、そう。じゃあ、そういうことにしといたげる」

 

ツンとそっぽを向くメグミ。

 

「あ~、もう、相変らず可愛くねーな」

 

メグミはクスッと笑って、アランに向き直った。

 

「冗談だよ。そんなことより、聞いて!あんたに伝えるべきか、ちょっと迷ったんだけど・・・」

 

神妙な面持ちでそう切り替えるので、アランもさすがに身を起した。

 

メグミは、教会のシスター・アンナが自分たちと同じ現実世界の人間であること、そして物語がどうすれば終わるのかを、ゆっくりとアランに聞かせた。

 

アンナには、誰にも言わないでと言われたけど、さすがに一応は仲間であるアランには黙っておくわけにはいかないと思ったのだ。

 

けれど、彼の次の言葉で、メグミは打ち明けたことを若干後悔する。

 

「・・・すまん、アンナって、誰だっけ?」

 

「は・・・?あんた、会ったことないの?」

 

「教会なんか行かねーもん。接点あるわけないだろ」

 

マジか・・・。

 

メグミはアンナの人物像から説明するハメになった。

 

「あんたがあのまま主人公続けてたら、絶対アンナまでたどり着いてなかっただろうね。どうりで本が私を頼ってくるわけだわ」

 

「当たり前だ!俺がロビンと結婚したら気持ち悪いだろうが!この本が勝手に人選ミスっただけだろ」

 

「んー、まぁ、あながち間違いではないけど。とにかく、ちゃんとアンナのことは知っておくべきだよ!明日あたりアンナと改めて話しに行こうと思ってるから、アランも私について来ること!」

 

そう言うと、彼は少し面倒くさそうな顔をした。

 

どこまで他力本願なんだコイツ。

 

「けどよ、お前、仮にロビンと結婚したとしても、そしたら元の世界に戻るわけだろ?結婚した途端にロビンがボッチになるじゃん。それと、そのアンナって奴も、現実世界ではもう死んでんだろ?物語が終わったら、そいつはどうなるんだ?まぁ、俺には関係ねーけど」

 

珍しく、アランがまともなことを言う。

 

メグミは「確かに」と素直に疑問を持った。

 

「分かった。それも含めて聞いてみる。彼女ならきっと、この後どうすべきかを知ってるはずだから」

 

「なんか、攻略本見ながらゲーム進めるみたいでズっこいな」

 

そう言って、彼はニッと笑った。

 

 

 

翌朝、メグミとアランはアンナの部屋を訪ねた。

しかし・・・。

 

「ノックしても返事がないね。出かけてるのかな?」

 

「こんな朝早くからか?」

 

「もしかして、花壇の水遣りをしてるのかも」

 

 

 

教会にいないことも確認し、中庭へ探しに来てみた。

 

しかしやはり、そこにアンナの姿は無かった。

 

代わりに、別のシスターが花壇に水をやっていた。

 

「すみません、少しいいですか?」

 

「はい、何でしょう?まぁ!メグミ様ではありませんか!もうお加減はよろしいのですか?」

 

「はい。お陰さまで。ところで、シスター・アンナを見かけませんでしたか?私たち、用事があって彼女を探してるんです」

 

「アンナは今日、非番なのですよ。残念ながら、わたくしにも彼女の居場所はわかりません。魔族がいなくなって、シスターにも城下への外出許可が出始めましたので、もしかしたら城から出ているかもしれませんね」

 

それを聞き、メグミとアランは顔を見合わせた。

 

「城下まで探しに行く?」

 

「俺、一応城の監視下に置かれてる身なんで。もし出るとしたら、手続きが面倒だぞ」

 

あ、これは、捜索を私に押し付ける気かな・・・。

 

「分かった。それならこうしよう。私は城下へ行く。あんたは城の中を探す。そうだ!ゼノンのところに行けば城中の猫の目を借りて見つけることができるかもしれない!あんたはゼノンにアンナ探しを依頼して!見つけたらケータイで・・・って、そんなものなかった。レジスタンスの部屋に集合で!絶対サボるんじゃないわよ」

 

「任せとけ!!」

 

一抹の不安を覚えながらも、メグミは城下へ出かける許可を取りに行った。

 

その後、アランはメグミに言われたとおり、ゼノンの下へ行こうとした・・・が。

 

「ゼノンって、どこにいるんだっけ?」

 

この世界で携帯電話が使えたら・・・。

 

アランもメグミも同じことを思いながら捜索を再開した。

 

当のアンナ本人が、まさに西塔のゼノンの部屋にいるとも知らずに・・・。

 

 

 

 

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気が付けば、小説は約3か月振りの更新ですね・・・。

もっとさくさく進めたいのですが、現実はちまちま書いてようやく投稿できる量になるという。

自動更新で、次話は火曜日くらいに更新しようと思います!

そこからはまた更新が滞る予定です・・・。

それでもFWを続けて読んでくださるという方はぜひぜひお待ちくださいっ!