(前回の続き)
さあ、コロナならぬこの色仕掛けのピンチを弟二郎はどう切り抜けるのか、
それともハニートラップに陥るのか?
危うし弟二郎の運命やいかに。
(モノローグ)
……参ったな。このままじゃどんな処に連れて行かれるか分かったもんじゃないぞ…
(ブツブツ…)
まさか手元不如意だと言っても、実際そうなのだが……それですんなりリリースしてくれそうもないしな・・・(ブツブツ・・・)
「ねえ、さっきから何をブツブツ言ってるの? 大丈夫よウチのお店は検温、消毒、それにアクリル板で仕切ってあるし、ノンアルしか出してないから安心よ」
(アチャー、先手を取られた…どうしよう…逃げるか?)
しかし逃げるは卑怯。ここは肚を据えて。
「これこれ、冥土殿 どこまで行かれるのかな?」
「スペイン坂のお店よ」
(うう、西班牙まで連行されてはかなわん。
もうこうなったら覚悟を決めて、司法取引に持ち込むしかないか)
「冥土殿、実は今日はこれだけしか持ち合わせがない。
これでお水一杯だけでもいい。冥土殿のハングリーもあろうけど、
今日の処はこれで勘弁してもらえまいか」
「……」
目を見詰め合う二人。
「分かったわ。それじゃ店に行かないで、これで一緒におうどんでも食べましょう」
「かたじけない」
二人はうどん屋に入って行く。
いらっしゃいませー。何名様ですかぁー。
(見りゃ分かるだろうが・・・)
お二人様ですねー。こちらのお席にどうぞぉ
タッチパネルにタッチしてご注文してください。
「この定食でいいのかな?魚とおしんこも頼めるかな」
「ぎりぎりね」
「ところで、どう思う、昨今の再延長による一連のコロナ疲れ……」
「確かに私の周りの者もうんざりして疑い始めているわ」
「と言うと?」
「大きな声じゃ言えないけど、これは、一部の医者と製薬会社、それに一部のマスコミの陰謀よ、という子までいるわ」
「だろうな……誰でも憶測しそうな事だな。
デモクラシーの時代にこれだけ長期規制されたら」
「私はちょっと過剰、過保護くらいにしか思っていないけど……」
その時、突然、タッチパネルがピカッと光って、
「カシャッ」と言うシャッターの音がパネルから聞こえた。
「なんだ?」
「ん? ナニ、今の?」
店員に向かって「おい、このパネル光ったぞ。大丈夫か?」
「そうですか。本社からコロナで置くように言われて……大丈夫ですか」
「……どうやら盗撮、監視されてたみたいだ」
「誰に?」
「多分、さっき言った連中だろう。聞こえたかな?」
と言ってパネルの裏側を見てそのまま伏せる。
「えっ、それって人権侵害じゃないの?」
「そう、もし証拠が見つかれば、確かに重大なプライバシーの侵害だ」
「けど、告発しても証拠隠滅されてて、なかった事にされる可能性が高いな」
「でもなんでこんなパネルに?」
「インターネットに繋がっているとオペレーションができるからさ」
「そんなの怖いわ」
「国民の思考をデータベース化できると同時に、
恐怖でコントロールもできる」
「えっ、まさか……マインドコントロール?」
「大がかりに国際的に仕組まれた、ウィルス作戦なんだろう」
「そのうち言論統制してくるだろう。
表現の自由を封じ込める手を、非常事態宣言無視とかで……」
「えっ、するとアメブロ書くのも今のうちなの?」
「そうかも知れん。今のうちに一杯書き留めておいた方がいい。
アンネの日記みたいに……多少緊張感があった方がいいものが書ける」
「↓このシャシンも?」
「何だか食欲が無くなって来たわ」
「いや、それが奴らの狙いでもある」
「どういうこと?」
「このコロナ禍に打克つためには、快食、快眠、快便、
そして快働が必要なんだ。
栄養と休養と適度な運動で新陳代謝、体循環を続けている限りは
コロナウイルスなんかに負けないように人間の体はできている」
「……」
「人間は普通危機に陥ったりすると焦ったり思考停止になったりする。
でも、正しい習慣をコツコツ地道に繰り返していると勝機を見出せるものだ。
つまり規則正しい生活習慣で健康管理に務めていれば大丈夫さ」
「そう言われれば少しホッとするけど、
……おかず冷めちゃったわ」
「残りはTake Out にしてウチでチンすればいいさ。
ご馳走様。それじゃこれから行くところがあるので、これで失礼するよ」
「あっ、待って」
「また逢えるといいね。楽しかったよ。冥土殿」
「アデュー」
と、風のように去っていくのでした。
第4話 end 吟