本格的な雨が降り続いている山里です。
シカのすぐるちゃん(オス5歳)は雨の中、クッションを口で咥えて放り投げたり、転がしたりしてごきげんよく遊んでいました。
イヌたちはトイレに行くとき、体が雨に濡れにくい場所を移動して用を足していました。
ところで、少し前に県が運営する施設でジビエ利用が行なわれているのを知り、施設に意見書を届けていました。内容はジビエ利用の見直しをお願いするものです。
しばらくして施設から返信が届きましたが、その内容は木に鼻をくくったような返事で、「当室では小学生等を対象に『いのちの教育』事業を展開しており、有害鳥獣として捕獲・駆除された鳥獣類の『いのち』の有効活用は、『人と動物との繋がり』を知る上で貴重な機会であると考えます」と書かれていました。
わたしの意見など一切聞く気はないということは、施設の返信からわかりましたが、「いのち」の有効活用が人と動物との繋がりを知る上で貴重な機会であるという施設の考えはおかしいと思ったので、施設に再度、意見書を届けることにしました。
その上で、施設が行なっている「いのちの教育」を調べたところ、思いもよらぬ繋がりがわりました。
つながり
2012年(安倍政権)公益社団法人knots(ノッツ) と奈良県(当時荒井知事)が「いのちの教育展開事業」を連携協定締結。ノッツは2000年NPO法人として設立。2010年公益社団法人に認定。
ノッツは介助犬、災害救助犬、盲導犬、警察犬等のワーキングドッグのデモストレーションなどの「ワンワンフェスティバル」という啓発イベントの開催を行なっており、企業との連帯イベントも行なってきたということです。その後「ワンワンフェスティバル」は「りぶ・らぶ・あにまるずフェスティバル」として開催することになったそうです(なんと、わたしたちは昔、このイベントにイヌと参加していたのです)。その他、ドッグランでもふれあい教室やしつけ教室、ドッグスポーツ大会など行なわれ、これらは大好評だったということです。
また野生動物の分野では、兵庫県立人と自然と博物館との共同から大きな影響を受け、駆除された野生動物有効活用としてイヌのおやつを製造(2004年~)。ここには書ききれませんが、ノッツとは数々の組織や企業の繋がりがあります。
ノッツは2021年にオープンした公的機関である「こうべ動物共生センター」の啓発、教育事業運営を委託されており、そこでは獣医師による体験プログラム「お肉はどこからくるの?」という授業が行なわれていました。こうべ動物共生センターは日本動物病院協会とも繋がっており、人と動物のふれあい活動(CAPP+付添犬)も行なっています。
動物利用を肯定する組織や企業などのつながりによって「いのちの授業」も行なわれていることがわかりました。
「いのちの教育(ニューメイン・エディション)」
「いのちの教育」は気づき・共感・責任という「動物のことを振り返り命のつながりに気づき共感する心を育てる」ことを目的とすると書かれています。
ヒューメイン・エディションの定義は「共感性、思いやり、責任感、敬意をすべての生き物に対して発達を促す社会的過程」ということですが、社会的背景などの種々の要因からこの定義は流動的なものであると述べられています。
奈良県の「いのちの教育」の説明にこのように書かれています。
「私たちと動物の関わりに気づき、動物にも感情や要求があるということ、動物の『いのち』が私たち人間と同じであることを感じ、それぞれの動物の『いのち』がよりよく生きるために私たちがどのような責任を負っているのかを考えることを目的としています」。
いのちの教育プロジェクトでは、動物を3つのカテゴリーに分け子どもたちに話が行なわれます。
「ペット・家畜・野生動物」
その中で家畜は「お肉を食べる」「ミルクを飲む」「毛を使ってセーターを作る」などの関わりへの気づきを与えるというものです。
そして、「大切ないのち」なので、「感謝していただきましょう」と子どもたちはおとなから教わるのです。
奈良県の資料にはこのように書いてあります。
「私たちは、毎日たくさんの食べ物を食べて生きていますが、それらは全て他の生き物『いのち』を頂いているのです。私たちは、食事の前に手を合わせて『いただきます』と言ってからご飯を食べますが、『いただきます』その前に、人間は利用する動物に責任を果たさなくてはいけないことを学びます」。
これは家畜への「5つの責任」を適切に行ないましょうということで、子どもたちは動物福祉を学びます。
資料には
「人間だけでなく、地球上の全ての生き物は、他の生き物の『いのち』を食べて生きています。私たちが毎日食べているお肉や卵、魚なども、動物の『いのち』なのです。そうした『いのち』を食べて生きていることに感謝しているのです。
と書かれています。おかしいですよね。
野生動物に関しては、自然環境の保護を意識できる内容にはなっていますが、野生動物利用を否定しておらず、人びとが持つ「思いやり」の心を摘む内容だなと思いました。
「いのちの教育の問題点」
- 家畜やその他の動物の「いのち」を「食べる物」「利用するもの」として決定付けられているということ(動物利用が前提としてある)。
- 食べ物を食べる時に「手を合わせていただきます」の一般化。
- 植物と中枢神経のある動物を同じ「生命」として位置づけていること。
いのちの教育プロジェクトでは、こどもたちに「いのち」を食べない選択肢はなく、「大切ないのちだから犠牲にしないでおこうね」とはなりません。大切ないのちをいただくのだから感謝していただきましょうとなり、その際は「みんな」宗教的な儀式を行なわなければいけないという問題があります。
すべての人間が動物を食べていないにもかかわらず、食べているかのように子どもを教育し、それ以外の選択肢を与えないのは意識や認識、価値観の誘導でしかありません。
「感謝していただく=いただきます」と言うことについては、地域によって違いがあり、学校給食前に宗教的な儀式を子どもたちに強制的に行なわせる学校方針について疑問を持った方が過去に学校を訴えていますよね。
植物と動物を同じ生命と理解するのは正確ではなく、正しい教育ではありません。
なぜ、このような「いのちの教育が」行なわれているのか?
政府が畜産の消費の維持や増進を考えていることがひとつにあると思います。
政府は畜産支援に大変力を入れていますよね。
今、どのようなプロパガンダが行なわれているかに焦点を当てることが大事と以前友人からアドバイスを受けました。
この「いのちの教育」には、他の思惑もありそうだなと思ったので、引き続き気にしておこうと思います。
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一部の参考文献
農林水産省「畜産農家・関係団体に対する支援」(最終閲覧日:2023年4月26日)。
knots「奈良県『いのちの教育展開事業』連携協定事業」(最終閲覧日:2023年4月26日)。
knots「(公社)Knotsの活動と25年の歩み ― 小さな結び目は社会を変える―」(最終閲覧日:2023年4月26日)。
こうべ動物共生センター「獣医師体験プログラム『お肉はどこからくるの?』」(最終閲覧日:2023年4月26日)。