今日は午後から、生物多様性の講義と日本哲学会第2回秋季大会、公募ワークショッ「動物倫理における理論と実践の関わり」のオンラインに参加しました。

 

「動物倫理における倫理と実践の関わり」では、生田武志さんと伊勢田哲治さん、井上太一さんたちのお話を聞くことができました。

 

著述家で翻訳家の井太一さんは、日本の哲学・倫理の世界の問題点など、言いにくいであろうことをはっきりと発言されていました。空気の動きが滞っている場所に外からの新鮮な風が吹いた感じではないでしょうか。

 

お話を聞いた感想はたくさんありますが、野生動物に関して取り上げられた内容をまとめたいと思います。

 

野宿者ネットワーク代表で『いのちへの礼儀』の著者である生田さんは、人間に害を与えている野生動物の捕殺は必要だという考えであり、野生動物の捕殺はこの先も続くという意見でした。

 

生田さんは、ご自身の家に出てきた多くのダンゴムシが自分の生活に害を与えたので、殺虫剤で殺したということです(殺虫剤は昆虫の命を奪うだけではなく、人体や環境に実害あるものです)。

 

野生動物に対する生田さんの知識は社会で一般的に言われているものであり、それを主軸に話されているので危惧します。

 

シカの個体数が増えているという認識のもと生田さんは捕殺を肯定していました。

 

シカの個体数が増えた理由に生田さんはオオカミ不在説を持ち出し、シカは農業被害をもたらすので殺す必要があるのではないかという意見でした。

 

シカの個体数はについては、個体数の「回復」であり、個体数の増加ではありません。

 

またオオカミ不在説は国内外で否定されており、オオカミはシカの個体数を減少させているのではなく、シカの行動を変化させているということ明らかになっています。

 

生田さんは野生動物の存在や野生動物を取り巻く現状をよく調べることなく語られており、それが政府にとって都合のよいことなので生田さんの発言が社会へ与える影響を心配します。

 

野生動物の「捕獲」やジビエは国策なので、国策に異を唱える人はこの社会にほぼいない現状です。

 

質問では「野生動物が人間を襲ってきた場合も野生動物を殺してはいけないのか?」というものがありました。その質問に対して井上さんは、防衛行動であれば倫理的な問題はない場合があると話されていました。この内容は野生動物を人間と捉える井上さんの考えです。

 

わたしが人間から襲われた場合、相手に抵抗する行動をします。例えば、抵抗する場合に相手の体を叩く、蹴るなどの行動をすると思います。これは防衛行動であり相手への暴力ではないということです。人間を襲ってくる野生動物に対しても、防衛行動であれば野生動物に攻撃しても倫理的問題はないということです。

 

しかし、防衛行動であれば動物を殺してもよいのでしょうか?

 

ニュースを見ていると、動物に襲われたという人の多くは軽傷で重傷を負う人は少ないです。それなのに、その動物を殺そうとするのはおかしいのではないでしょうか。

 

他の国では、野生動物による死者が出ても、その個体やその動物種を殺さないニュースがあり、動物の殺害を回避する社会があります。

 

動物が襲ってきたので殺してもよいか?という問いに、わたしは殺す発想ではなく回避する発想を持つことが大事だと考えます。

 

どのような理由があっても、動物を殺してもいい理由にはならず、わたしたちは動物を殺さないためにはどうすればよいかを考えなくてはいけません。

 

野生動物たちが人間を攻撃するのは、人間による身の危険を強く感じた時です。

 

つまり、防衛行動なのです。

 

恐怖を感じている相手に対して必要なのは「共感」です。恐怖を感じ防衛行動を取り攻撃してくる動物の感情に共感して、人間は動物を怖がらせないようにどう行動すればよいかを考え、環境や行動を工夫する必要があります。

 

野生動物に遭遇したときの対処方法はこちらの記事に書いています。下矢印

 

 

野生動物が人間を攻撃してくるのは、野生動物に対する人間の配慮ない行動が主な原因です。

 

今日のお話を聞いて、生田さんの考えは結論ありきになっているのでは?と思いました。人間に害を及ぼす生物は殺して問題を解決しようとするのは、野生動物を捕殺しないで良い方法や農業被害を防ぐ方法など考えられておらず、問題の本質に到達していなということではないでしょうか。

 

野生動物が人間を襲ってくることについても同様です。野生動物が人間を襲わないようにするにはどうすればよいかなど、野生動物に対する接し方を考えなくてはいけません。それらを考えずして野生動物との平和共存はありえません。

 

動物倫理には予防原則が大事であれば、野生動物に対してもその原則を当てはめるべきではないでしょうか。

 

生物への理解を深め生きている者を尊重して傷つけないように思いやりを持ち、動物に配慮した活動や犠牲を生み出さない工夫をすることがわたしたち人類に大事なのだと思いました。

 

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