曇り時々雨の予報だったが、シカの研究者が奈良公園のシカの調査を行うのでわたしも同行させてもらった。
調査前にシカさんたちに挨拶する(カーミングシグナルを出す)と、オスシカさんもメスシカさんもわたしに近寄ってきた。
オスシカさんはわたしの足に頭や首を擦りつけて甘えてきた。
挨拶にきてくれたオスシカさん。
シカのその姿を見ていた研究者は「ぼくはまだ甘えられたことはないな~」と言っていた。
わたしの服などに我が家のシカたちの匂いがついていたこともあって、奈良公園のシカたちはわたしに非常に友好的だった。
それ以前にシカたちと平和的にかかわるには、シカたちに「わたしはあなたに危害を加えないよ」とカーミングシグナルで伝えることが最も大事だ。
メスシカさんもわたしのズボンに頭をスリスリ。
シカせんべいの販売所近くには数頭のシカたちがおり、その中に過去、負傷してか体が小さく栄養状態が悪いメスシカさんがいた。
この子だ。
このシカさんは耳が切れ、鼻は過去に負傷した後があり鼻の一部が無い状態だった。
やせ細り毛並みも悪い。そして、白い目やにが出ている。
少し観察していると、健康状態のよいメスシカさんが、このシカさんを鼻でつついていた。
健康状態の悪いシカさんは「やめて」と言っている。
他の場所でも、健康状態の悪いメスシカさんがいて、健康状態のよい体の大きなメスシカさんにつつかれていた。
食べ物に困っている奈良公園のシカたち(やその他に棲むシカたち)は、食べ物が絡むと多くは自分より弱い個体を追い払おうとする。
そうやって体調の悪いシカさんは食べ物にありつけず、どんどん衰弱していく。
奈良公園ではこのような野生の状態に人間が酷くかかわっているのが大きな問題である。
今日は「小鹿公開」イベントのため、鹿苑(ろくえん)に収容されていたメスシカとその子どもたちが奈良公園内に放たれる日だった。
調査中、奈良公園内からシカの大きな鳴き声がいたるところから聞こえていたのは、このイベントが理由であると理解ができた。
鹿苑から奈良公園内に親子を放つ状況を見ていた研究者の話によると、鹿苑に収容されていた親子シカたちを鹿苑は一気に放ったそうだ。
そのタイミングが母親たちがお腹をすかせているタイミングだったらしく、母親たちは今まで生活していた場所に一目散に走っていったそうだ。
そのため、子どもたちは母親と離れることになってしまった。
鹿苑しか知らない子どもたちからすると、外の世界は異世界であり、右も左もわからず固まるだろう。
しばらくして、食事を終えた母親たちが子どもたちのいる鹿苑付近に戻ってきたそうだ。
しかし、母子再会できない親子が続出したという。
調査中に聞こえてきたシカの声は、子どもを必死に探す母親の声だった。
わたしが鹿苑に行くと、鹿苑の中に入ろうと、仕切られたフェンスの側を行ったり来たりする子どもがいた。
そのすぐ側を見ると、物陰に身をひそめる子どもたちがいた。
子どもたちは、母親とはぐれたのち、鹿苑に戻ろうとしていたそうだが、職員がその子どもたちを無理やり奈良公園の方へ行かせていたという。
なんと酷いことかと思う。
このような虐待的なことを行う鹿苑に後日意見しようと考えている。
外界に放置された子どもたちは頼りの母親がおらず、どれほど心細いことか……。
このような場合、親子がすごしていた鹿苑のスペースを開放し続け、子どもたちが外界に少しずつ慣れるようにするべきだ(外界が怖いならすぐに、今までいた鹿苑に帰れるようにする)。
他の国では、野生動物の野生復帰のさいは必ず、リハビリを行い保護動物が少しずつ外の世界に適応するのを待ちリリースしている。
鹿苑しか知らない子シカたちを全く知らない地に放置する結果となった今回の出来事は虐待であることから、鹿苑はシカたちが困らない対策や対応を今後行うべきである。
母親が側にいても、子どもたちが外の世界に適応するまで、鹿苑はシカたちがいつでも慣れた場所に来れるよう解放しておくのがいい。
母親と再会できずにいる子どもたちは、衰弱し命を落とす場合や他の事故に遭遇することもあるだろう。このような人為的な死や事故は防ぐべきだ。
奈良公園のシカたちは人間活動に翻弄され苦しんでいる。
外界に適応せず、衰弱して死亡するのは「自然淘汰」であると言われるが、人間が酷く介入している奈良公園には通用しない。
シカを人間都合で利用するのではなく、シカが苦しまない環境作りを奈良公園や鹿苑はするべきではなかろうか。
鹿苑などは、妊娠したシカを施設に収容するための理由付けをしてそれを正当化しようとしているが、奈良公園のシカは「野生動物」だと言い切るなら、「子鹿公開」イベントやシカを奈良公園に縛り付けるシカせんべいによる餌付けをやめるべきではないだろうか。シカせんべいを奈良公園のシカに与えることの理由付けをし「例外」としていることから、奈良公園はシカたちを解放する気はないということだろう。
最後に、一年以上生き延びていた若いオスシカさんにお母さんがグルーミングしている写真をどうぞ。
子どもは安心した気持ちよさそうな表情をしていて、母親は愛情たっぷりな優しい目で子どもの体を舐めている。
平和的な動物ちをわたしたちは苦しめるのではなく、動物たちに利益をもたらす発想や行動をしていこう。
母親と離れ離れになった子どもたちが命を落とす結果とならないでほしいと心から思った。
にほんブログ村のクリックをよろしくお願いします。
↓↓↓