先日、シカの研究者から学習資料を届けてもらった。

 

その中に、馬毛島に生息するマゲシカたちの生態記録の動画があった。

 

その動画を視聴した感想は、限りある空間で生息するシカたちの過酷さはわたしたちが想像する以上のものであるということだった。

 

マゲシカの生活は、メスシカは島の中央部(食料が比較的多い場所)で生活をし、オスシカは海岸沿い(潮風が強く食糧に乏しい場所)で生活をしており、繁殖期以外はオスとメスは棲み分けをしている。

 

その理由は、オスとメスの争いを避けるためや生存率を上げるためと言われている。

 

メスシカが生活する島の中央部は木々や下草植物があり子育てする場所に適している。

 

オスシカが生活する海岸沿いは食糧が乏しく、オスシカは食糧確保のために、争うことがしばしばあるそうだ。

 

しかし、オスシカたちは互いの損傷を回避するため、不要な争いはしない。これは、繁殖期であってもそうだったのだ。

 

若いオスシカが争っていると、争いを止めるために成熟したオスシカが若いオスシカたちの仲裁に入る。

 

このことからもシカは社会的動物であることがわかる。

 

馬毛島で生活するマゲシカたちの生息頭数は、約500頭程でその数は数年安定しているということだ。

 

馬毛島で生息できるシカの数は、約500頭が限界ということだ。

 

生息頭数が安定しているのは「自律的密度調節機構」が働いているからであり、一年のうちに3分の1のオスが死亡するそうだ。

 

産まれてきたオスの子どもは、2歳を迎える前に半数が死亡することもあるという。

 

このようなことから、馬毛島で生息するマゲシカはメスの個体数が多く、オスの個体数は少ない。

 

マゲシカにとって天敵のいない馬毛島で、シカたちが一定の生息頭数を維持していることは興味深い。

 

厳しい環境下で、種として個々として独自の生を生きるマゲシカたちは、今、生存の危機に直面している。

 

馬毛島では2000年から2011年にかけ、「島の生物相と生態系機能の一部を失い、海洋生態系にも悪影響を及ぼす違法開発が行われてきた」。そして、2020年、馬毛島のほぼ全域を自衛隊の総合基地としての開発計画が公表された。

 

これは、島の中央部で生活をし、子育てをしているメスの生息地が奪われるということだ。

 

島のほぼ全域とする開発は、マゲシカの生息地を全て奪うことと等しい。

 

よって、マゲシカは生存不可能となり、絶滅してしまう可能性が極めて高いと推測する。

 

自然環境破壊を伴い、生態系に悪影響を与える開発に、わたしは反対だ。

 

このような開発は戦争さえしなければ行われない開発だ。

 

わたしたちの国は戦争しないと決めている。その国がなぜ、武力に固着するのか。

 

他の国から自国を守るには武力が必要という声があるが、武力を保有しているがために戦争が起こるのだ。

 

わたしたちの国は戦争しないと決めたのだから、政府は戦争につなげることを行わないでほしい。

 

人びとの安全な生活や、人間活動に翻弄される野生動物たちの苦しみを考えられるおとなになろう。

 

そして、それぞれの種の生き方、個々の動物たちの生き方を尊重しよう。

 

他の動物種に迷惑をかける人間活動ではなく、可能な限り、他の動物種を困らせたり、他の動物種の命を奪ったりしない選択をし、人間として正しいであろう行動を心掛けられるよう、わたしたちは共感能力や想像力に磨きをかけていこう。

 

参考文献

生きもの地球紀行「馬毛島の四季・ニホンジカ オスたちの試練」NHK

立澤史郎「マゲシカの生息状況と保全上の課題.」日本鹿研究12: 38-45.

 

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