雨が止み、晴れたのはよかったが風が強いため、犬と鹿たちは室内ですごしている。

 

明日は穏やかな気象状態になるといいね。

 

ところで、わたしたちの社会では農業被害対策などとして何十年にも渡り野生動物の個体数管理を行ってきている。

 

しかし、全国各地で解決に向かった地域はほとんどない。

 

鳥獣による農作物損失対策には「シカの個体数が減れば農作物損失が減る」「野生動物を『駆除』すれば個体数が減る」という単純な仮定がされているが、シカによる農作物損失は、そのような単純な話ではないのだ。

 

狩猟や「駆除」は、シカの個体数を一時的に減少させるが、そのことで、シカの個体数が増える。

 

シカを殺すことで、環境収容力に余裕が生まれ、生き残ったシカの生存率を上げる。

 

さらに、生物学的働きがあり、狩猟圧が高まるとシカは出産率を高める。

 

このことは、数々の研究で明らかになっている。

 

そして、シカによる農作物損失はシカの数ではなく、シカが生息する周辺の環境状態によって大きく左右される。

 

シカの生息地の森林状態や森林と田畑までの距離などが強く影響していることも研究で明らかになっている。

 

例えば、シカの生息環境に食べ物が少なければ、シカ個体数が少なくても農作物損失をまねく。

 

逆に、シカ生息地の質が良く、食べ物やシカの生活の質が良ければ(隠れる場所や出産場所、休む場所、飲み水があるなど)、シカは人里へ脚を運ぶ機会が減る。

 

北海道大学の揚妻直樹氏の研究によると、シカの個体密度と農作物損失の間には必ずしもきれいな比例関係が見出せないということだ。

 

「駆除」は野生動物にとって食物生産性を変化させるものではない。

 

よって、「駆除」で野生動物の個体数を減らしたとしても、個体数は回復する。

 

考えるべき点は、生物の基本性質を基に、農作物等の損失をどう抑えるかになる。

 

シカやその他の動物種は、生存のため食糧のある地へ移動をする。

 

そのため、農作物損失対策には、農作物損失を誘発している環境条件を見つけ出す必要がある。

 

そのことが分かれば、わたしたちはどのように対処すればよいかわかるだろう。

 

現在の山が野生動物を養えるだけの環境でなければ、その山を野生動物が豊に生活できる環境に整えなければならない。

 

それらを無視して、森林開発を進め、環境破壊を行い、野生動物を「駆除」して殺すのはおかしい。

 

以前から気になっていることがある。

 

狩猟や「駆除」はシカ個体数を減らす効果がないことは何年も前から明らかになっているということだ。

 

効果無いことが明らかになっているにもかかわらず、野生動物の個体数管理を止めないのはなぜなのだろうか?

 

ジビエや狩猟には大きな癒着構造があるからかもしれないが、狩猟や「駆除」がシカ個体数減少につながらないことを知りながら、シカを殺し続けて死体利用しているなら、酷い話である。

 

その他に、再生エネルギー建設などによる自然環境破壊をして、野生動物の生息地を奪い、生活や行き場に困った野生動物たちを大虐殺する行為も非常に酷いことである。

 

野生動物個体数管理が人間の思うような結果が得られないとわかっている現在で大事なのは、非致死的にどのようにして農作物等を守るのかである。

 

その為には、農作物等は適切な小規模防除柵で守り、その他に森林生態系の回復、自然環境開発の規制などを同時進行させるという遠大な活動が必要だ。

 

そして、他の国が行っている、野生動物の避妊プログラムも検討すべきだ。シカの避妊プログラムの情報では、サウスカロライナ州フリップアイランドで避妊研究が最も成功していて、「5年間で鹿の個体数が60%減少した」という報告がある(わたしは非致死的であっても野生動物の個体数管理に賛成ではない)。

 

荒廃した自然環境を生物が生存できる安定した環境に整える間に発生した農作物等の損失は、政府がその補償をして人びとの生活を守ってほしい。それが政府のやるべきことだ。

 

わたしたちは、今までも今も人間都合で他の動物種を苦しめ、個々の動物たちの命を奪っているが、そろそろ本気で地球で生きている意味を考えなくてはいけない。

 

参考文献

Why deer killing programs don’t solve conflicts with deer THE HUMANE SOCIETY(最終閲覧日:2022年5月2日)。

 

Hunting has increased deer population, not reduced it greenwich time(最終閲覧日:2022年5月2日)。

 

 

揚妻直樹 「シカの異常増加を考える」 HOKKAIDO UNIVERSITY

https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/54808/1/65_2_108_116.pdf

 

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