雪が舞う中、犬たちはお散歩に出かけた。ブラブラ散歩をするひよりちゃん(♀8歳)は、雪が降っていてもいつも通りに、途中休憩をしていたので、ひよりちゃんの体に雪が積もっていた。

 

寒波到来は、野生で暮らす動物たちを苦しめていることだろう。

 

その様子を観察している研究者の方たちがいる。野外調査をされている研究者の方たちには頭が下がる思いだ。

 

今日は北海道大学の揚妻准教授の論文「シカの異常増加を考える」を再読していた。その中で、「6.異常な野生動物はいない」という項目がある。

 

シカについて、近年は「異常」や「爆発的増加」など言われているが、揚妻氏は、異常な野生動物はいないと語っている。

 

その理由をこう述べている。

 

生物の性質は永い進化の過程で環境に適応するように獲得されてきた。その過程で異常な生物が淘汰されていたはずである。それでも人々が異常に感じるのであれば、その理由は二つあるだろう。

 

一つは、その生物がおかれている環境が異常だということである。不自然な環境に適応するためには、生物は普通と違う反応をしなくてはならない。つまり、一見、異常で不自然に見える生物の反応は、異常環境に適応するための正常な適応的な反応なのである。

 

わたしも、そのように考えている。劣化した自然環境で生存するために行っている行動が今のシカたちの行動で、それは正常な適応行動である。

 

二つ目の理由は、

 

人々が正常だと考えてきた認識が間違っているということである。1990年代のシカの増加には目に見張るものがある。しかし、シカの個体群動態の歴史を見れば、現状のシカの個体群が自然ではありえない異常レベルかどうかは判断できない。(中略)シカに関わる問題をひとたび「異常」「不自然」と表現してしまうと、次なる人間の発想はその「異常」「不自然」をどう正すのかという方向に向かう。(中略)しかし、それでは本当の問題から意識を遠ざけてしまうことになる。一見「異常」「不自然」に見える反応をなぜ動物たちが示すのか、何に適応した反応なのか、その原因を注意深く見極めて対処することが重要である。

 

シカは生態系を破壊すると言われており、その生態系を回復させるために、おどろく頭数を「駆除」しているわけだが、考えの背景には、人間の価値観を基準に行われていることも多々ある。

 

たとえば、「不自然」を「自然」に戻そう、と考える時、何を基準にしているのだろうか?

 

自然とはどのような状態を示し、どのような自然環境のことを言っているのだろうか?

 

人間が思い描く「自然」感を取り戻すことと、綿密に調査された科学的知見を基に行われる自然環境の健康を取り戻すこととでは内容も結果も違ってくる。

 

シカに対して使われている「異常」や「不自然」などの言葉は何の定義もなく使用されているそうだが、何かを実行する際、なんの定義もない語を使用し、結論付けているところも、人間的であると思った。

 

揚妻氏の指摘は本質をついており、非常に勉強になる。

 

綿密な調査を行い導き出された結論などは読んでいても気持ちがいい。

 

価値観ではなく、わたしたちはもっと科学に目をむけるべきだと思った。

 

寒波が到来していますが、気をつけてお過ごしください。

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