野生動物狩猟期間は終わり少しホッとしたが、山には一年を通しおびただしい数の罠が仕掛けられているので心からホッとはできない。
その中には違法罠が多くあり、その監視もされていない。
なので、当然違法罠にかかる生き物たちが多く存在している。
その中のひとりが我が家にいる鹿ののぞみちゃん(♀推定3歳)だ。
犬たちの散歩中にのぞみちゃんと出会った。
のぞみちゃんの場合、脚を深く傷つけられていたので、治療を試みた。
わたしたちが住んでいる市では、違法罠にかかった動物は種を問わず放獣し傷を負っているなら治療をする方針だが、それを行うのは「善意ある一般の人」ということで、救護には行政はかかわらないようだ。
行政から飼育許可を得るためにわたしたちは違法罠を告発することになった。
告発する際に仲のいい友人以外の関係者から心配の声があがっていた。
・わたしや同居人、仲のいい友人たち告発しても問題ないという判断。
たとえば、「仕事がなくなるかもしれないよ」「ここで暮らしにくくなるかもしれないよ」「腹いせされるかもしれないよ」「村八部になるかもね」など多くのことを言われた。
何度も、「本当に告発してもいいの?」と聞かれたので、わたしは「告発してはいけないの?」と問い返した。
数名がそう言うのは、みんなわたしたちの生活を気にかけて心配してくれているからだが、みんなが心配してしまうことになるこの社会のあり方がおかしいということがよくわかる。
間違ったことをしていない者が生きにくくなる社会というのはかなりおかしい。
わたしたち自身も含め心配している人たちが安心して過ごせるようにと、家に防犯カメラを数台設置しセキュリティー会社にも入った。
今できる安全・安心対策をしているが、今の社会のあり方を見ていると「心から安心できるね」とは言えないわたしがいて、野生動物の救護の場合には特に覚悟が必要だと思った。
・覚悟→野生動物を救護する覚悟、適切にお世話する覚悟、生きにくくなる覚悟など。
現在の鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律は時代に取り残されたものであり、真に野生動物を考え守る法律ではないので、現在の物事には対応ができない。
実際、時代に合ったことはイレギュラーとして扱われ、対応してもらえないことが多くある。
時代は進みここに暮らしている人々もその時代に生きている。すべての人間ではないものの、人間はその時代に合った感性や行動などを具えていく。そのため、法律を見直し他種多様なことに対応できる法律や規則が必要だ。
行政は法律を厳守する立場から、対応ができないということになっているのではないだろうか?とも思う。
しかし、今後もイレギュラーはあると思うので、それに対応できる行政になっておかなくてはいけないと思う。
わたしとしては保護活動にイレギュラーなことが増えていくといいなと思っているし、わたし自身そういう活動ができればいいなと思う。
法律に不備があるので、それを整えていくのもわたしたちひとりひとりの行動が必要だと思っている。
そして、今のこの社会では動物を守ったり救護したり擁護すると「過激」というレッテルを貼られやすい。他の社会正義運動でもそうだと思う。
このことについて、ずっと昔から疑問に感じていたし、おかしいと思っていた。
この「過激」というレッテル貼りには気をつけなければいけないと思う。
西崎文子・武内進―編著『紛争・対立・暴力-世界の地域から考える』岩波ジュニア新書、2016年。にこのように書かれている。
「メディアでよく使われる言葉や、定型化したニュース報道に疑問を持つことです。(中略)メディアや政府が広報に使う言い回しは、繰り返されることによって私たちの意識の中に浸透していきます。使い勝手もよく、ついつい鵜呑みにしてしまいがちです。しかし、その使い勝手の良さが、さまざまな問題に気づく機会を奪ってはいないか、立ち止まってよく考えてみることも大切でしょう」(viii)。
一般的に浸透していることに疑問を持つことがとても大事であり、それが現実に目が向くステップになると思う。
人間がやっていることを自分の目でよく見てみるのがいいと思う。
「過激」というのは、何をやっている(主張している)かではないだろうか。
社会的に弱い立場に置かれている者や傷ついた者、困っている者を擁護し救護することは非難させることではなく、本来称賛されることだ(自分で自分を褒めてる表現に・笑)。
政府にとって都合よく物事を進めるのは、ここで生きるわたしたちのための政治ではない。
我が家はのぞみちゃんやすぐるちゃんを救護したことで、「頭の痛い人」などとバカにされることもあるが、「やさしいな」と言ってくれる人間もいる。
社会が鹿に「害獣」とレッテルを貼っていることで、鹿の保護は本当に大変だと感じている。
しかし、人間であるわたしは普段通りに生活をしていて、いきなり銃で撃たれることも、罠にかかり脚に傷を負うことも、毒物を盛られてもがき苦しみ死ぬことも、電気柵に接触して電気が体内に残り苦しむこともない(が広い世界ではあると・・・)。
今野生動物たちの身に起きている悲惨な現状を知ってほしいと思うし、気づいてほしいと思う。
いつまでも、他者を苦しめ命を奪うことをしていてはいけない。
そして、動物を擁護する人間が生きにくくならない社会にしていきたい。
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くくり罠にかかった脚は想像以上に深く広く傷ついていた。
そのことがはっきりと判断出来た時点で再生治療をあきらめた。
のぞみちゃんの脚の回復を望んでいただけにショックが大きかった。
のぞみちゃんは激痛に耐えながら一日一日を懸命に生きていた。
のぞみちゃんが経験した痛み、孤独、不安、恐怖などこの苦しみをわたしたち人間が与えいるのだ。
そのことについて、よく考えてほしい。
苦は避けるべきことだ。