伊奈町の地域政党「改新みらい」の冨井篤弥です。

 

昨18日は、令和6年第2回伊奈町議会の最終日でした。

最終日は、提出議案の議決が行なわれました。

 

今回の令和6年6月定例会では、私ども「改新みらい」では、1つの議案について反対いたしました。

 

その議案は、第34号議案――伊奈町の放課後児童クラブに、指定管理者制度の導入を可能にする改正条例案です。

 

○改新みらいにおける反対議案(1件)

・第34号議案 伊奈町放課後児童健全育成事業実施条例の一部を改正する条例

 

○第34号議案の反対理由の概要

①児童クラブに指定管理者制度はそぐわないため。
②児童クラブを含めて、町は子どもの育成、支援、教育に責任を持つべきであるため。
以上二点の理由から反対しました。

 

○第34号議案の反対討論の内容

 本案に反対いたしました理由は二つございます。
 まず一つ目に、児童クラブに指定管理者制度はそぐわないということです。
 本条例改正案は、児童クラブに指定管理者制度を導入できるようにするというものでございます。しかしながら、児童クラブに指定管理者制度を導入することのメリットが中、長期的な視点で見ますとございません。
 その訳を今から説明してまいりたいと思います。

 はじめに基礎として、公民連携、PPPの手法の一つである指定管理者制度とはどういうものでありましょうか。
 簡潔に説明いたしますと、公的施設の管理や運営を民間に任せることができる制度です。
 一般的には、公平な競争のなかで委託先を選択し、ノウハウを持った民間に任せることで、限られたコストで質の高いサービスを実現しようという仕組みでございます。
 先日の文教民生常任委員会でも町側の説明でございましたように、一般論としては、指定管理者制度を導入することは、公共の事業を市場原理に置く事により、コスト削減とサービス向上を期待することができます。
 ただ、言うまでもございませんが、指定管理者制度も導入がふさわしい事業とふさわしくない事業があります。本制度の使いようによっては、事業の質が低下したり、利用者の満足度を下げたりといった失敗という結果を招くこともあります。

 児童クラブはどうでしょうか。
 児童クラブに求められるサービスとしましては、放課後や長期休暇の際に、保護者が帰宅できる時間まで、子どもを公平かつ安心安全な環境で預かるということが第一に挙げられます。
 では、求められるサービスの実現のためには、何が必要でしょうか。
 三つございます。
 一つ目に、子ども達のことを良く知り、子ども達から信頼される支援員の方の配置が必要です。
 これには、支援員の知識と経験と信頼の三つの要素を充実させることが必要になってきます。
 知識と経験という点では、子どもについての専門的知識や対応の経験だけではなく、預かっている子どもについての知識や適切な対応という経験が求められます。
 また、子ども達から信頼されることも、安心安全な学童保育のためには大切です。
 よって、児童クラブのサービスを充実するには人材育成と、子どもの入学から卒業まで切れ目のない支援ができるという継続的な人員配置と運営が肝となります。
 人材育成には、有資格者の育成も必要です。放課後児童支援員になるためには、子育て、教育、福祉関係の資格保有者でない場合、2年以上の実務経験と専門教育が必要になります。
 知識や経験、信頼は時間をかけて作られるものであり、人材育成は児童クラブのサービス向上のためには必要不可欠になってきます。もちろん、その為には、人材確保と金銭的投資が必要であり、雇用の安定なくしては成り立ちません。
 支援員の質が、まず一番に児童クラブに求められるサービスを満たすためには必要となるのです。
 そして二つ目に、その支援員の方々が安心して働けるような運営体制が必要です。
 雇用条件、休暇、福利厚生などに問題がなく、支援員の方が無理なく安心安全かつ長期的に働けるような環境は、サービスを受けている児童の安心安全の確保にも直結します。
 故に運営者は、預かる子ども達の安心安全と同じレベルで、支援員の方々の安心安全を保障しなければなりません。
 最後に三つ目として、児童クラブは社会福祉事業であることを自覚し、サービスを公平に提供できる運営者が必要です。
 放課後児童健全育成事業実施条例第1条の児童クラブの目的に沿った運営を行い、第4条に掲げられている児童クラブのサービスといえる活動内容を公平に実施、提供することが求められます。
 以上の三点が、児童クラブに求められるサービスを実現するには必要となります。

 では、児童クラブに指定管理者制度を導入すると、より一層、公平かつ安心安全な環境のもとで子どもを預けられるサービスとなるのでしょうか。

 また、コスト削減を図りつつサービス充実を実現するという、町の導入目的を達成することはできるのでしょうか。

 まずサービスの充実という面では、児童クラブは前述いたしましたように、支援員の育成や良好な労働環境の形成に力をいれることによって達成できるものです。また、保護者の多様なワークスタイル、ライフスタイルに対応することで、サービスの充実を図るのであれば、運営時間を延ばす必要があります。その場合、子どもや支援員の安心安全を確保するため、支援員の増員、雇用も必要です。
 つまり、必然的に人材への資金投入が必要となっていきます。

 サービスの充実のためには人材への資金投入という新たなコストが見えてきました。
 では、児童クラブでコスト削減を図るためにはどうすればいいのでしょうか。
 それは、収入や黒字を増やせる事業展開をするか、経費削減を行うことが考えられます。
 収入を増やす方法としては、児童クラブに英会話など有料メニューをつけるといった方法がございますが、これは民間学童や塾、習い事といった民間事業者の役割です。
 遊びを主とする健全育成を行うという、放課後児童健全育成事業実施条例の第1条の目的にも逸脱し、社会福祉事業に求められる公平性という観点からも、好ましくありません。
 無論、有料メニューを実施する場合でも、コストはかかります。オプションということで、参加する児童、参加しない児童がでてきますので、有料メニューで安定した利益を継続的に出すためにはかなりの工夫が必要となってきます。
 もっとも、収入を増やす簡単な方法としては、サービスそのものの値上げ、つまり保育料の値上げが挙げられます。
 しかしながら、今回の放課後児童健全育成事業実施条例の改正案では、「保育料」に関する条項には触れられておりません。案でも現状維持となっています。よって、仮に改正され、それの下で指定管理者が保育料の変更を行うとすると、町や議会の承認が必要となってきます。
 そもそも、児童クラブは社会福祉事業であるため、保育料の値上げによって、家庭の経済状況が原因で利用できないということがあってはなりません。利用できない状況となれば、待機児童になる可能性もあり、子どもの安全が脅かされることになります。町としても、それは望んでいないと思います。

 従いまして、児童クラブでコスト削減を行うためには、経費削減という手段を取らざるをえません。
 施設管理とは違うため、運営者にできることは限られており、創意工夫で増収を図ることが難しい分野であるからです。
 ただ、児童クラブは、運営経費の多くを人件費が占めています。
 よって、コスト削減を行うとなると、支援員の人件費を削ったり、福利厚生を削ったりといった方向に向かいやすくなります。固定費や人件費以外の見直しを行なっても、効果は限定的であるからです。

 こうしたことから、児童クラブの運営において、サービスの充実の為には人件費を増額する必要がありますが、コスト削減のためには人件費を削るしかないということが分かりました。
 結論として、コスト削減とサービス充実を両立することはできないため、児童クラブの運営に指定管理者制度はそぐわないといえます。
 人件費などのコスト削減によって、短期的には、町としては委託料を減らせるといったことにつながるかもしれません。
 しかしながら中、長期的には、人件費のカットや、運営が変わることなどによって支援員の流出を招き、質の高い人材を確保することも難しくなることから、結果としてサービスの低下につながります。そして、サービスの低下は子どもの安心安全を脅かすことにもつながりかねないことをここで忠告いたします。

 つづいて、本案に反対いたしました二つ目の理由として、児童クラブを含めて、町は子どもの育成、支援、教育に責任を持つべきであるからです。

 さて、ご承知のとおり、我が国の人口減少は深刻な問題となっております。
 特に少子化の勢いは止まらず、埼玉県の令和5年の合計特殊出生率は1.14となり、記録の中では過去最低の数値となりました。
 少子化の原因は、一言で説明すれば、政府や行政は子どもや子育てについて、これまでずっとフリーライダーをしてきており、そこから脱却しきれていないという点に尽きます。
 以前の日本社会は、子どものいる家庭は、基本的に男性が働き、女性は家庭で子育てを実質無償で引き受けていました。誰かが子どもを産み、育ててくれるから、それにタダ乗りしようというのが今までの政府の姿勢であった訳です。
 無論、従来のこうした価値観は男女平等に反するので、是正され、男女の雇用機会の均等や、女性の社会進出が推進されました。一方で、それまで女性が主に担っていた子育てについて、その子育てを引き受ける様な支援策を政府は直ぐに展開することができませんでした。政府はフリーライドをし続けてしまったのです。
 結果、フリーライダー問題が発生し、子どもが社会的にみて過少にしか生まれないという、経済学的に言えば市場の失敗とも言える状態になっているのです。
 では、少子化という市場の失敗が起きており、この問題を解決するのであれば、政府や行政に求められる行動は、経済学の基礎に則るのならば、子育てに関する財政支出を拡大して適切な支援事業を展開することです。

 したがって、今回の町における児童クラブの指定管理者制度導入のための条例改正案は、少子化という問題を解決したいのであれば、全く正反対のことをしようとしている訳です。
 それは、指定管理者制度が行政のコスト削減を図る目的として導入されることからもいえます。実質的に子育てに関する財政支出を縮小することになるからです。

 こうして仮に規制緩和をして、市場原理に児童クラブを任せるとなると、一つ目の理由で説明したような、サービスの低下を招くというところに繋がるのです。

 結果、市場の失敗の問題は解消されず、少子化を更に悪化させる原因の一つになります。
 少子化対策や子育て支援については、短期的なコストや利益を考えて、財政支出を渋るようでは、解決できる問題も解決が遠のいてしまうのです。

 よって、伊奈町が少子化対策に真剣に取り組み、子育てのしやすい町を本気で目指されているのであれば、児童クラブを含めて、町は子どもの育成、支援、教育に責任を持たなければなりません。
 児童クラブは、町が責任をもって運営し、子どもや保護者の皆様に充実した支援を行う。そういった姿勢が求められます。町の児童クラブがこれまで培ってきたノウハウや信頼をここで捨てるのは損失でしかありません。

 以上、第34号議案に反対する二つの理由を説明してまいりました。
 短くまとめると、私どもが指摘する問題点は二つです。
 一点目に、児童クラブに指定管理者制度を導入した場合、サービスの充実とコスト削減は両立しえないこと。
 二点目に、少子化という市場の失敗に対応するのならば、児童クラブの指定管理者制度導入は相反する解決策であるということ。
 これら指摘する問題点、つまり懸念していることにつきまして、その懸念を払拭できるような有力な賛成討論がございましたら、伺いたいと存じます。

 今回の児童クラブの条例改正案は、今後の町の子育て支援や教育にも大きく関わってくるものでございます。仮に、本条例改正案を本気で通されたいのでございましたら、いま示しました問題点や懸念事項に対して、町民の皆様に納得できるようなご説明を何卒、お願い申し上げます。
 以上で、改新みらいを代表しての反対討論を終わります。

 

 

 

以上が改新みらいの第34号議案の反対討論の内容です。

そのほか、本議案についての反対討論を五味雅美議員が行いました。

 

また、賛成討論につきましては、藤原義春議員と、上野尚德議員が行いました。

 

なお、賛成討論では、改新みらいが指摘した問題点や懸念について、その懸念を払拭できる反論はございませんでした。

しかしながら、第34号議案については賛成多数で可決となりました。

 

 

改新みらい

冨井 篤弥