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「私と恵理子は、野上を殺害するために群馬の伊香保温泉に野上を呼び出したの、しかし、恵理子には尾行がついていたし、恵理子には何にも出来ないということがわかった。だから、お母さんにお願いしたのよ。野上は私が伊香保に行きたいといったら二つ返事で了解したわ。そして、ここで殺すしかないと思ったの。だから、私たちのアリバイが必要になったわ。それで、野上が利用していた鵜飼のアリバイ工作を使ったのよ。しかし、野上にも尾行がついていたし、簡単には野上が移動することはできない、だから、野上に似た男も用意したのよ。警察は野上が部屋を出る時に尾行するのだから、偽の変装した野上が外に出ていけば、その男を野上と思って尾行する。夜に野上が出る、しかし、その男は偽者。刑事が偽の野上を尾行している間に本物の野上が外へ出るということにしたのよ。車は使わないで・・・だから、新開刑事が、野上の車を運転することが出来たのです。それは、昨日のことです。刑事が追っていた男は偽者の野上で部屋に戻り変装をやめて外に出る。刑事たちは野上が部屋にいるものと思っていたのだと思うわ」

三浦真紀の完全なる筋書きの上に周到に準備されたものであった。

僕は「ということは、昨日は野上は伊香保にいた?」

「そうです。伊香保にいました。お母さんが来るのを待って殺害しようとしたのです。女一人では難しいと思いました。だから、お母さんが必要だったのです」

「もう一度聞きます。野上は殺害されているのですか?」

「はい、私が野上と温泉に入っている時に、後ろから・・・」

「死体は、どうした?」と、新開刑事が強い口調で尋ねた。

「埋めました。伊香保の山に・・・」

何ということだ、野上は殺されていたのだ。

伊香保にいた女二人とは、真紀と母親だったのだ。

そして、野上は、どこかの山の中に埋められている。

つまり、新開刑事が運転したことによって、死んだはずの野上の逆のアリバイを用意していたのだ。

新開刑事は野上の影として・・・

そして、このワタナベケーキ店に着き、野上の車は、ワタナベケーキ店の主人が、Nシステムの設置されていない道を運転し、どこかの山の中に車を放置する。

いずれ、警察は野上の車を発見するが、野上の所在は不明となる。

三浦真紀の考えた計画だったのだ。

まさか、母親も共犯となって動いていたとは予想すら出来なかった。

もし、新開刑事がアリバイ工作の鵜飼という男に会わなければ、この事件は解決することはなかったと思う。

僕は「どうして、到着場所がこの店なのですか?」と、一つの疑問を問いかけた。

すると、驚くことが分かった。三浦真紀が重い口を開いた。

「実は、ご主人は、私の母の兄なのです。だから、協力してもらったのです。勿論、恵理子も知っていました。だから、この店のケーキをでいつも買っていたのです。しかし、野上を殺すということまでは知りません。本当に、ごめんなさい・・・」

と、ご主人の腕にすがって泣いた。

「真紀、恵理子・・・」と、ご主人は言葉にならない声で泣いていた。

翌日、野上幸則の死体が伊香保の山中で発見された。

そして、真紀と恵理子の母親も逮捕された。

母親の三浦逸江の供述も一致していた。

親子三人による、野上幸則の殺害。

妹を思う姉、娘を思う母の、どうしようもない激情が産んだ悲惨な殺人。

その奥には、十数年前の、未解決事件が絡み、その恐怖から次々に殺人を犯した男。

一夜にして、命も地位も名誉も全てを失くした悲しい男の人生を見た。

南紀夫と鵜飼浩二の取調べにおいても、田中雅彦と中川和義の殺害についての供述も安永恵理子と一致した。

また、港区の堀田不動産についても、鵜飼からの供述により、不動産業が成り立たないために、アリバイ工作の裏ビジネスを全国展開していることも判明した。

二日後の全国の新聞には、今回の連続殺人事件のことが大きく載り、新開刑事には警視総監賞が授与された。

日光南署の今野刑事には、栃木県警本部長賞が授与された。

今野刑事は、娘の仏壇に手を合わせ、事件の解決を伝えた。

そして、京都の漬物屋の武田博之さんにも、ひき逃げの犯人が判明したということが伝えられたのであるが、田中雅彦と野上幸則は、この世にはいない。

「雪田さん、本当に有難うございました。これで、息子も成仏できたと思います。」

「いえ、武田さんの、手の火傷という言葉が事件解決の糸口になったのですよ。今度は、観光でお会いしましょう」と、電話を切った。

一月七日になっていた。

七草粥を食べようということで、新開刑事と岩崎弁護士が店にやってきた。

僕は、母親の習慣で、毎年一月七日には、七草粥を作って食べる。

「今年も七草粥か・・・雪ちゃんの七草粥も何回目だ。今年こそは旨いのを頼むよ」

「そうだよ。新開刑事の言う通りだよ。いつも、何かが足りない味だよ」

「贅沢言うなよ。精一杯作っているめんだから・・・」

「雪田社長、今年こそは頑張って下さいよ。僕も期待しています」と、新藤が言う。

「まかしとけ・・・」僕は言ったが、自信はない。

そして、旨いともまずいとも言わないみんなの顔。

その顔が僕の料理の出来を物語っていた・・・

四人で七草粥を食べながら、今回の事件の話になった。

「岩ちゃん・・・お見合いは?」

「当分はいいよ。それこそ、雪ちゃんはどう?」

「女というものは怖いよ。あんな綺麗な顔をして・・・」

「雪ちゃん、そんなものだよ。美人は怖い。うちのカカアは大丈夫だな?」

と、新開刑事。

「確かに・・・ハハハ」四人は大笑いだ。

「しかし、最初の容疑が岩ちゃんだったよな?」と、僕が言うと。

「そうだよ、俺がいたからこそ解決したんだよ」

「それはあるけど、岩ちゃんが殺人犯人を作ってしまったということは事実だよ。警察の情報を流さなかったなら、三浦真紀は、野上を殺すことはなかったと思うよ」

「それは・・・俺としても心が痛い。でも、どうして女に弱いのかとつくづく思い知らされたよ。弁護士に向いていないかもしれないな。しかし、俺は、あの姉妹や母親の弁護をしようと思っている。せめてもの罪滅ぼしになるといいけど?」

「弁護?いつも、岩ちゃんは、事件の関係者の弁護だな。それだけで食っていけるのかい?」

「大丈夫だよ。食えなくなったなら雪ちゃんの店でも手伝うから?しかし、やるせない事件だったよ」

新開刑事が「そうだな。溶けない手と足首・・・何か小説のネタになるような始まりだったな。姉妹の愛と母親の愛。普通の人たちが落ちていく理由なんかは何もないな。愛が強ければ人は殺人鬼にでも何にでもなる。野上という男とさえ出会うことがなければよかった。しかし、この世の中は男と女。男と女が存在している限り事件は起こる。それに、愛と欲望とが混じると引き返せない。いつも、いつも、引き返せない男と女だ」

「そうですね新開さん、引き返すことは出来ると思うけど、一度、回りだした歯車を止めることは出来ないということですね。車のギアのように壊れてくれたならいいと思いますよ。人も機械のようになれればいいかもしれませんね。感情という機械が、突然、意思を持ち動きだす。しかし、その機械を止めることはできない。もし、止めることができるのなら、それは人を思う愛しかないと思います。今度の事件は、人を愛することが逆回転したのかもしれません。せめて、ニュートラルで止まっていたなら、あの三人は殺すことはなかった。せめてもの救いは、安永恵理子の白百合だよ。必死で逆回転した自分を取り戻そうとしていたのかもしれないな?」

岩崎弁護士が「そうだな。その回転を止めることが出来たのは俺だったのかもしれない?弁護士としても人としても未熟だよ」

「岩ちゃん、自分をそんなに責めるなよ。三浦真紀は、自分の心の中の歯車をスタートさせたんだよ。多分、回そうか止めようかと悩んだと思う。しかし、回してしまった。一人の女として、いや、姉として三浦真紀は、妹を救ったことで良かったと思っているかもしれない?精一杯、弁護してくれよ」

「そうかもしれんな?しかし罪は罪だ。心の中のブレーキをかけるべきだった」と、新開刑事。

「ブレーキですか?ブレーキがあるから車は動く。人も車も同じなんですね」

「そうだよ、雪ちゃん、人もたまには心の中のブレーキを点検することが必要かもしれん。壊れる前に・・・車検があるなら、人検があってもいいかもな?」

「人検?それなら、ここにいる人は早速受けてもらいましょうかね?」

「みんなか?その前に、雪ちゃんの作った七草粥の検査が先じゃないかい?それにしても、まずいな・・・ハハハ・・・」

その後、岩崎弁護士他四名は、三浦真紀、安永恵理子、三浦逸江の弁護を引き受けた。

半年後。地裁での判決。

三浦真紀・殺人幇助罪 求刑 懲役七年にたいして懲役四年。

安永恵理子・殺人幇助及び道路交通法違反(轢き逃げ) 求刑 懲役七年にたいして懲役五年。

三浦逸江・殺人罪 求刑 懲役 八年にたいして懲役五年。

岩崎弁護士の尽力で、全員は求刑以下の刑期となった。

三人は、その後、上級裁判所に控訴することもなく刑が確定した。

終わり









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「雪田さんの言う通りです。もう、全てご存知なのですね?」

「えぇ、あなたの口から聞きたいのです?」

「恵理子・・・もう、全てが終わったわ。本当に全てが。雪田さん、いつごろから私を疑っていたのですか?」

「岩崎弁護士への執拗な態度です。確かに、恵理子さんのことを心配してのことだと思っていたのですが、それにしても警察の動きを知りたがることに疑問を抱いたのです。それと、立川のスナック美鈴へも野上と一緒に行きましたよね。そこで、あなたのことがおぼろげながら怪しいと感じたのです。恵理子さんと野上のことを別れさせようとしていたのに、野上に近づいている真紀さんを不審に思ったのです。あのスナックは、アリバイ工作の拠点の店です。そこに、あなたが現れたということは、それも、野上と現れたということは、不自然なのです。野上には多摩西部署の刑事の尾行がついていましたし、僕も、偶然に、あなたを見かけたのです。あなたが、あの店に行く理由は一つしかありません。それは、何らかのアリバイ工作の依頼なのです。そして、そのアリバイ工作の男、つまり、鵜飼浩二と会った。しかし、その鵜飼も昔は、野上の仲間だった。野上に紹介してもらうということは、真紀さん・・・あなたは、恵理子さんと野上を別れさせるために、女の武器を使い、野上に近づいた。妹よりも、私のほうがいい女とか言って・・・できたなら、恵理子と別れて一緒になって欲しいと。確かに、野上は、恵理子さんとのことを終わらせようとしていたと思います。つまり、恵理子さんも殺害しようとしていたと言うことです。野上は、長年、昔の仲間に脅迫され続けていた。もしかしたなら、恵理子さんも同じように脅迫してくるのではないかと?疑心暗鬼になっていたのでしょう?」

「その通りです。恵理子の身に危険が迫っていたと思います。野上は、とてもプライドの高い男です。今の、地位や名声を守るためなら、何でもしたと思います。それが、怖かったのです。私は、野上に秘密で鵜飼に会い、アリバイ工作を依頼したのです。鵜飼も私が誘いました。あの男も、野上に対して昔のことで脅迫していたので、私のことに協力するということになったのです。私は、野上にとって従順な女だと思われていたし、夜のことでも野上は私の思うとおりになりました。私は、恵理子のためなら何でも出来ました。恵理子も、納得の上でのことです。私にとっては、恵理子と野上の関係を断ち切れたならよかったのです。しかし、予想しないことが起きたのです。ある日、ホテルで泥酔していた時に、中川と田中を殺したということを話したのです。うすうすは、何かあるとは思っていたのですが、まさか、それが本当だとは信じられなかった。それで、恵理子に確認したのです」

「そうです。姉さんの言う通りです。私は、野上が二人の男を殺し、完全犯罪を実行したことを知っていました。ましてや、私も協力したのです。とにかく、田中と中川を殺害するということになったのです。田中は、中川よりも、金に執着していました。かなりの大金を毎月、貰っていたと思います。最初に、田中を殺すということになったのです。勿論、野上一人では無理です。それで、南紀夫と鵜飼浩二と中川和義を誘ったのです。金で動く人でしたから話は簡単に進みました」

「中川も?」

「中川は、最初に協力させて、それから殺そうと・・・中川から殺害した田中の死体を溶かして消滅させたなら完全犯罪となると持ちかけられたのです。溶かすということの提案は中川だったのです。運のいいことに、中川は自動車解体の工場で働いていたので、田中の死体・・・絞首した死体・・・を、工場の電動カッターで、頭と胴体、足、手と切断したのです。そして、八王工業へ出す車の解体ガラの中に入れて、横浜へ運ぶということになっていたのです。しかし、最近は、車のガラの中に鉄以外のモノを入れる業者が多く、検査が厳しいので諦めました。そして、さらに、田中の死体を細かく裁断してオイル缶に小分けして入れたのです。三日間にわたり処分するという計画でした。しかし、横浜電炉での機械トラブルで、手首が発見されたのです。それで、残っていた足首を他の場所に捨てようということになったのです。それが、日光なのです。丁度、今野さんの娘さんの命日の日の前日でした。それで野上は、私が命日に白百合の花を事故現場に置くということで、日光の中禅寺湖の山林の中に捨てようということになったのです」

「ということは、東京から日光まで足首を運ぶということで、アリバイが必要になったということですね?」

「はい、警察に疑われないように、移動はレッカー車を使いました。中川が運転して野上と私も同乗したのです。日光に着くと、荷台の車を下ろし、私は、野上と中禅寺湖に向かいました。そして、オイル缶に入った田中の足首を山林の中に埋めたのです」

「しかし、そのオイル缶は、偶然にも発見された・・・」

「もっと深く埋めればよかったのですが、野上には変な自信があり、適当に埋めても警察は分からないというのです。確かに、手は発見されていますが、他の死体は完全に溶けてしまっているのですから捕まらないという自信だったと思います。警察への挑戦?それは、昔、暴走族だったころの感情なのかもしれません?」

「そして、白百合の花を置くために事故現場に向かったのですね?」

安永恵理子の供述はしっかりとしていた。

丁度、店に到着した日光南署の今野刑事は大粒の涙をぬぐうこともなく恵理子の話しを聞いていた。そして・・・

「あなたは、どうして・・・どうして早く自首しなかったのですか?自首していたならば、他の事件にも関係しなくてすんだ・・・どうして・・・」

と、今野刑事は恵理子につめよった。

「野上が怖かったのです。私さえ黙っていたなら、何にもないと・・・それと、野上の後ろには暴力団もいましたし、しゃべったなら命はないと・・・言われ続けました。本当にごめんなさい」

「・・・白百合の花は?」

「告別式の日に見ました。葬儀会場に沢山の白百合の花が飾ってあったので・・・」

恵理子は、嗚咽していた。

僕は、この白百合という言葉について恵理子に尋ねた。

「恵理子さん、田中の手の中に紙が握られていたのですが、その紙には、し・・という文字が書かれていたのです。しという文字は、もしかして?」

「そうです。田中が中川に殺害された時に中川のアパートに私が忘れていたものです。野上、中川、南と私は、中川のアパートで田中殺害の計画を立てたのです。三人が打ち合わせている時に、何気なく書いたものなのです。それを中川の部屋のゴミ箱の中に捨てたのを覚えています。おそらく、中川と南と鵜飼が田中を殺害しようとした時に、暴れた田中がゴミ箱の中の紙を握り締めたのかもしれません?今野さんの娘さんの無常な気持ちがそうさせたのかもしれません?私は、何かあるたびに、しらゆりという文字を無意識に書いているのです。娘さんの魂が、そうさせていると思われて仕方がないのです。早く自首しなさいということかもしれません」

「そうでしたか?それで、田中は殺害され溶かされたということですね?」

「はい、手と足首だけを残して・・・」

「中川については、どうして京都なのですか?鴨川に捨てたのは?」

「野上の指示です。田中の殺害は失敗でした。それで、警察の捜査が自分に向くということを予感していたのです。プライドと自信に満ちた男ですが、気の弱い面もあったのです。それで、中川を呼び出して南と鵜飼とで殺害しました。そして、全く別の場所で土地勘のある場所として京都としたのです。死体の移動は、レッカー車を使い、さらに、鵜飼のアリバイ工作を画策したのです。中川の死体を車に乗せ、その車をレッカー車で京都まで運び捨てたのです。ここでも、野上の警察への挑戦がありました。死体が早く発見されるように河原に捨てたのです。自分たちは、アリバイ工作で安全だという自信があったのです」

「ということは、南が京都に行ったということですか?」

「はい、南と鵜飼です」

「しかし、その時に南は渋谷の会社に、恵理子さんと打ち合わせに行っていたのでは?」

「そうです。南に扮装したアリバイ工作の男です。鵜飼は南によく似た男を捜して工作員としたのです。色のついたメガネとカツラがあれば、人は騙せるものなのです。それは完全に成功したのです。野上は、警察との戦いに勝ったと思っていました。鵜飼という男の存在を警察は知らなかったのですから・・・」

「ところが、新開刑事が鵜飼という男を知り、僕が鵜飼と真紀さんの関係を知った」

「それは、野上の誤算でした。野上は警察の尾行について姉さんから聞いていましたから、警察の動きには慎重だったのですが、生来の警察に対する挑戦的な感情が墓穴を掘ったと思います。アリバイさえあったなら、警察は何もできないし、父親の力・・・つまり、警察官僚出身の代議士の力というものを過大に評価していたのです。慎重に動いていても、生来の本性というものまでは消すことができなかったのです」

「墓穴ですか?」新開刑事が口を開いた。

そして、続けて・・・

「確かに、警察としてはアリバイという証拠があったなら、なかなか動くことはできないと思っているが、どんな犯罪だとしても、完全なアリバイというものはない。それは、野上が暴走族の時からの驕りだ。過去の犯罪から逃れたとしても、二回目はない。その二回目が一回目の伏線となり過去の犯罪が暴かれてくるものだ。仮に時効だとしても、犯罪者は失うものが沢山ある。今の幸せな生活は、所詮、砂上の楼閣なんだよ。野上は、それすら忘れていたのかもしれない。忘れていたというよりも、忘れたかったのかもしれない?」

新開刑事は、諭すように三浦真紀と安永恵理子を見た。

そして・・・僕が尋ねた。

「そういうことがあったことを恵理子さんは真紀さんに話した?ということですよね真紀さん?」

「そうです。恐ろしいことに恵理子が関係していると頭の中は真っ白になっていました。それで、野上のことを調べていたのです。偶然にも岩崎弁護士との見合いの話が持ちあがり、野上のことを知ったのです。岩崎弁護士は警察からの情報を教えてくれ、必死で恵理子と野上を別れさせようとしました。しかし、野上は陰湿であくどい男です。秘密を知っている恵理子を手放すことはなかったのです。だから、私は野上に近づき、野上の女になったのです。あんな男に抱かれることは最悪の時間でした。でも、恵理子のことを思うと何でも出来る自分がいたのです。不本意ながら妊娠し堕胎もしました。恵理子には内緒でしたが・・・」

と、恵理子を涙ながらに見た。

「姉さん・・・そんなことまで・・・どうして私のために?」

「恵理子、あなたは、私と父親しかつながっていないけど妹なのよ。唯一の血を分けた姉妹なのよ。当然なのよ。お母さんも心配していたわ」

「お母さんが?」恵理子は驚いていた。

「そうよ、お母さんは何でも知っているのよ」

「えっ、この事件のことも、私たちのことも?」

「知っているわ。全てを・・・」

三浦真紀は、母親が何でも知っているということを伝えた。

真紀とお母さんとは二人でこの計画を練っていたということを、そして、お母さんは、今頃、野上幸則を殺害しているだろうということを・・・

全員は耳を疑った。恵理子も驚きの顔になった。そして、真紀はゆっくりと話した。








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「あの女はね・・・大きな荷物を持っているのよ。その荷物というのは、過去なのよ。過去を消したいから、アリバイ工作をしたのよ。詳しいいきさつは知らないけど、小耳に挟んだことがあるの。例のアリバイ工作を請け負っている男と話していたのよ。何でも、妹に関係しているらしいの? 妹の過去も一緒に消したい・・・そういうことを話していたわ。私が思うには、姉妹にとって何か大きな過去を引きずっているらしいの。妹のために、あの女は何かのアリバイが必要になった・・・それで、アリバイ工作を依頼したのよ。あの女と一緒にいた男は、どうも、恋人らしいけど、私が思うには、恋人というよりも、パトロンのように感じたわ。その男がお金を全部出すということで話が決まったのよ。どうみてもパトロンよ」

「彼じゃないのかい?」

「女の勘よ・・・間違いないと思うわ。あの女は、その男に完全に従っていたからねぇ・・・」

「どんな男なのかい?」

「そんなに男のことが気になるの?」

「いゃ、あんな美人を、愛人のようにしている男に興味があるだけだよ・・・で?」

「お客さん・・・まるで探偵のようね・・・ウフフ・・・年のころなら、30才過ぎかな。結構、いい男よ。高級な服と、高級な時計をしていたわ。少しだけ影があるような感じよ」

「ついでに聞いていいかい? 名前は?」

「えっ・・・お客さん、本当に好きよねぇ・・・まぁ、いいか・・・損にも得にもならないけど・・・その男は、幸則って言っていたかな? 上の名前は知らないわよ・・・幸則さんて、その女が呼んでいたわ」

幸則・・・もしかして、野上幸則のことではないのか?

もし、野上だとしたならば、一体どういうことなのだ?

三浦真紀と野上幸則は知り合い・・・いや、知り合いというよりも、男と女の関係?

僕の頭に中は、完全に真っ白になっていた。

「ママ、その男がその女のパトロンには間違いないの?」

「そうだと思うけどね?それにしても、そんなに興味を持っても何にもならないのに・・・」

「昔から、推理ものが好きなんだよ。一時は、推理作家になろうかと思ったこともあるし・・・生来の性分かもね?それと、ついでだから・・・何のアリバイか分かる?」

「作家ねぇ・・・まぁ、いいわ。私の知っていることなら・・・それは、あの女の妹のアリバイのようなことを言っていたわ。妹のことでアリバイ工作するって・・・それと、群馬とか伊香保とか聞いたような気がするのよ。それと、栃木という言葉も聞いたわ。それ以上は分からないわ」

ママは、どうやらそれ以上のことは知らないらしい。

僕は、その店を出た。

僕の推理が当たらないことを祈っていた。

そういう内容を、出口刑事に話した。

出口刑事にとっては何のことなのかは分からない。

しつこく僕に聞いてきたのだが、僕は、電話を切った。

そして、車に乗り栃木県へ向かった。

どうやら、この事件には、三浦真紀と安永恵理子も関係している。

さらに、この義理の姉妹には、人に言えない過去もあるのだ。

一方、新開刑事は、佐野サービスエリアに着き、そこで別の男からの指示を受けていた。

その指示の内容は、車のトランクの中にある服に着替え、日光インターチェンジで降りて、日光市内へ向かい、市内にあるワタナベケーキ店に行き、そこで車を降りる。

そこで、ワタナベケーキ店に入り、その店の主人に車のキーを渡す。

そこからは、電車で東京に戻るということであった。

仕事の対価は、そのワタナベという男から貰えと指示があった。

その服というのは、野上幸則のものであった。カツラまで準備されていたのだ。

大きく黒いサングラスもあり、一見すると野上の風袋のようであった。

おそらく、Nシステムを意識してのことだと推測される。

しかし、ワタナベケーキ店ということに、新開刑事は記憶をたどっていた。

日光南署で、安永恵理子のアリバイを調査した時に出た名前だと記憶がよみがえってきた。何故、このケーキ店なのだ?

新開刑事は指示されるままに日光市内へと車を走らせた。

そして、ワタナベケーキ店に車を停めた。

そして、店のドアを開けると、そこには、三浦真紀と安永恵理子の姿があった。

一体、どういうことなんだ?

カツラを外し、サングラスを取ると、三浦真紀は、言いようもない顔になった。

「刑事さん・・・どうして・・・どうしてなの?」

外では、店の中の異様な雰囲気を感じとったのであろうか。一台の車が急発進した。

尾行の警察車両が、その車を追う。

「三浦さんと、安永さんですね?」と、新開刑事。

二人は、ゆっくりと頷いた。

新開刑事は、二人を見て、ゆっくりと口を開いた。

「もう、これで終わりですね」

二人は「顔を見合わせ、どうして・・・」

どうして新開刑事に、二人がいるということが分かったかというと、警察には秘密に、僕と新開刑事だけで、内密に連絡をしていたのだ。

携帯電話を使うことは出来ないのに・・・

つまり、新開刑事は、運転中に僕からの連絡メールを受けていたということになる。

それは、簡単なことであった。

警察の上層部には内密にしないと絶対に出来ないことだ。

新開刑事は、もう一つの携帯電話を持ち、そこに僕からのメールを受信していたのだ。

僕からのメールを運転中に見るということは、さほど不自然な行為ではない。

下を向いた時に、左腕の中にしまっていた携帯電話を見ればいいし、トイレの中でも見ることはできる。

僕と新開刑事は、そのような策略を講じていたのであった。

尾行していた刑事たちも店の中に入った。

さきほどの逃げた車も警察によって確保されたという。

その車には、鵜飼浩二と南紀夫が乗っていた。

つまり、今回の事件は、全ては京都が発端であり、過去に暴走族であった野上幸則、南紀夫、鵜飼浩二、中川和義、田中雅彦が絡んだのであった。

そして、中山和義と田中雅彦は殺された。

京都でのひき逃げ事件の、僕の友人の武田博之の子供を轢いたのは、野上幸則と田中雅彦なのだ。

左の手に火傷の痕がある男は、田中雅彦。

その傷の整形をしたのは、野上幸則の知り合いの、東京にあった整形外科医であったが、十年前に廃業していた。この情報は、三浦真紀を調べていて分かったことであった。

つまり、三浦真紀は、過去に、その病院で看護師として働いていたのだ。

これは、偶然というか、岩崎弁護士が、三浦真紀に警察からの情報を話したことによって発覚したことであった。

ほどなくして、僕も着いた。

今野刑事も、すぐに到着するという。

ここからは、三浦真紀と安永恵理子の供述になる。

三浦真紀の供述だ。

「三浦さん、あなたは、妹の安永恵理子さんの過去について知っていましたね?」

と、新開刑事が尋ねた。

「はい、もう全てお話しします。恵理子は、東京で野上幸則と出会いました。まだ、二十歳でしたから、野上の大人びた雰囲気に心を惹かれたようでした。野上には、何人もの女がいたのですが、恵理子にとっては初めての男であり、丁度、そのころに家庭でのトラブルもあり、家を出て野上の世話になったのです。私は、恵理子のことが心配になり野上の過去を調べてみたのですが、素人の私にとっては限界がありました。恵理子は、野上に夢中になり、全ては野上の言いなりになっていったのです」

「あなたは何故、野上の過去にこだわったのですか?」

「私は、過去に整形外科で准看護師として働いていたことがあったのです。その時に野上に会っていたのです。深夜に、二人の男が病院にやって来ました。何でも、京都の代議士からの紹介ということで、院長も知っていました。一人の男の左手の外側の火傷の痕を治してほしいということだったと記憶しています。その時は、何とも思っていませんでしたが、二十年たって記憶がよみがえってきたのです。岩崎弁護士さんから聞いた、日光の左手の殺人事件のことです。最初は、同一人物とは思いもしませんでした。二十年も前のことですから・・・」

「それで、恵理子さんの彼が野上という名前を思い出した?」

「はい、一度、会った時に同じ男だと直感したのです。あの時に、整形をした男と一緒にいたということをです。でも、まだ、その程度でした。ある日、岩崎弁護士から、野上が殺人事件の容疑者ということを聞きました。それで、恵理子に尋ねてみたのです。最初は、何にも関係ないと言っていたのですが・・・」

安永恵理子が言う。

「私は、最初から野上のことを疑っていたのです。野上から京都にいた時のことも聞いていましたし、暴走族で、暴れていたとか・・・でも、私は野上に逆らうことはできません。大きな弱みを握られていたからです」

僕は、新開刑事の許可を取り、続けて尋ねた。

「逆らえないということは、今野刑事の娘さんのひき逃げということですね?」

安永恵理子は、目に涙を溜めて話した。

「そうです。私が今野さんの娘さんを轢いて逃げたのです。野上とドライブしていた時のことでした。野上が運転を代わってくれというので、私が運転したのです。少しだけ目を離した時のことでした。私は、車から降りようとしたのですが、野上は、逃げるように言ったのです。今でもあの光景を忘れることはできません・・・」

と、両手で顔を覆った。

「そのことを真紀さんに話したのですね?」

「はい、数年後になっていましたが、私の胸の中だけに留めておくことができませんでした」

続けて。

「姉に話すことで、少しは楽になったような気がしました。姉は、自首するように勧めたのですが、野上は黙っていたなら分からないといったのです。ですから、自首することはできませんでした」

「恵理子さん、ただのドライブということでしたが、本当は何だったのですか?他に何かがあったのでは?本当のことを話してくれませんか?」

「・・・実は、その日、野上は昔の仲間と会っていたのです。そのことが発覚することに恐怖を覚えていました。この事故で警察で取調べを受けたなら発覚するのではないかと?」

「仲間というのは、もしかしたなら、中川和義か田中雅彦ですね?」

「そうです。田中さんです。何か、脅されているように感じました。とても、苛立っていたのです。昔のことを・・・とか、いまさらとか・・・そして、帰りに、苛立ちを押さえるために酒を飲んだのです。ですから、私が運転を・・・」

「そうですか。で、脅されていたということは一体何なのでしょうか?聞いていますよね?」

「電話で話していた時に盗み聞きしたことがありました。昔、京都でのひき逃げが・・・もう、時効だとか?昔のことを今さら・・・金で何とかするとか?」

「野上は、田中と中川に脅迫されていた。京都の武田博之さんの息子をひき殺したのです。運転していたのは、左手に火傷の痕のある田中で、バイクの後ろに乗っていたのが野上。野上は、暴走族でしたが、殺しまではしていません。しかし、ひき逃げ死亡となると、野上も共犯ということで何らかの罪となるでしょう。それを恐れていたのです。それに対して、田中や中川が脅していたと思われます。それから、野上は東京に来て有名になったので、田中も中川も野上に対しての恐喝がエスカレートしたのです。当初は、野上も従っていたと思いますが、一生、このまま恐喝されるということに嫌気がさしていたと思います。それで・・・二人を殺害するということになった。恵理子さんは、そのことについて知っていますよね?三浦真紀さんも?」

僕は、姉妹の顔を見た。

二人は、顔を見合わせ、そして、三浦真紀が口を開いた。








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東銀座を出て、すぐの信号を右折し築地市場方面へ向かう。

勝鬨橋を渡り、最初の信号を左折したところにある公衆電話ボックスの

中の電話帳の138ページに、次の指示内容の紙が挟んである。

という内容であった。

つまり、追尾されるのではないかということを防ぐためだ。

それとも、完璧なアリバイを工作するための動きのように思えた。

新開刑事は思っていた。

携帯電話の電源も切るということになっていたのだが、もしかしたなら、この車の中にも盗聴のマイクが仕込まれているのではないかと?

そう考えると、うかつなことはできない・・・

ほどなくして、車は勝鬨橋を渡り、指定された公衆電話ボックスの前で停まった。

追尾していた他の刑事の車は一旦素通りして、その先に他の車が待ち構えていた。

警察の威信にかけて、大掛かりな捜査体制をしいていたのだ。

新開刑事は、電話帳を開いた・・・

東京駅の地下駐車場の、ナンバー33に別の車が置いてある。

その場所で車を乗り換える。

その車の中に次の指示の紙がある。

恐ろしく慎重な動きだ。

ここまでするということは、何なのだ・・・?

新開刑事は、走りながら外を注意深く見渡してみた。

追尾している不審な車がいないかということだ。

しかし、そのような車は見当たらない。

ただ、一台のバイクが、すぐ前を走っていた。

黒いヘルメット、黒い皮のジャケットを着ていた。

あっ・・・このバイクは・・・・

確かに、二回見ていたのだ。

ということは、このバイクがアリバイ工作の関係者なのかもしれない?

新開刑事の車と同じように走っている。

案の定、東京駅の地下にもバイクは入った。

間違いない・・・このバイクは、アリバイ工作の関係者だ。

指定された駐車場の場所に車を横付けた。

今度は、同じBMWなのであるが、色が少し違う。

ナンバーを見ると、間違いなく野上幸則の車であった。

新開刑事は、驚きと、自分の推理が当たっていたということに、身震いしていた。

車を入れ替え、助手席の紙を手に取った。

東京駅の地下から首都高速に入り、首都高速6号線に向かえ。

次に、東北高速の佐野サービスエリアに入り、そこで指示を待て。

と、書かれていた。

すると、さっきのバイクは、その場を去っていった。

新開刑事は、佐野サービスエリアに向けて車を走らせた。

追尾している刑事たちも、うかつに近づくことは危険だと判断し、さらに、他の刑事と車の手配をした。

埼玉県警の協力も必要となり、群馬県警にも要請を出した。

新開刑事は、指定の場所まで、慎重に車を運転していた。

しかし、野上幸則のBMWを、どこで持ってきたのであろうか?

野上のマンションには刑事が張り付いているし、もし、車を車庫から出すということがあったなら、人目につく。

どんな方法で車庫から東京駅の駐車場まで運んだのだろうか?

もしかして、野上の車は何台かあり、ナンバーだけを付け替えた?

その可能性もある。

しかし、そこまでする必要はあったのであろうか?

全てのことが疑問となっていた。

新開刑事が運転している間に、最初の車のナンバーが照会され、持ち主が特定された。

高級車だけを扱う、レンタリース会社のものであった。

その契約人は、堀田一機という男だ。

レンタリース会社の申し込み書類に記載されていた免許証のコピーから判明したが、都内で不動産会社を経営しているという。

名前から調べてみたが、過去に罪状はなかったということだ。

この、堀田という男は、一体、誰なのであろうか?

このアリバイ工作の組織は、かなり大掛かりなものなのかもしれない?

堀田という男の素性が、ほどなくして判明した。

東京都港区江南二―四四―二 アリエスビル十一階 株式会社 堀田不動産

不動産業の取得免許番号から、最近免許を取得したらしい。

堀田への聴取も、検討されていたが、野上との付き合いがあったとしたならば、大きな問題となりかねない。

捜査本部としては、慎重の上にも慎重に事を運ぶということになった。

つまり、今後の様子を見ながら動くということであった。

野上の後ろの、大物代議士の存在が大きくのしかかっていた。

丁度、そのころ、日光南署において不可思議な事件がおきていた。

今野刑事から、多摩西部署に連絡が入った。

「例の安永恵理子の所在が確認できました。伊香保温泉に行っているということでしたが、偶然にも、署の刑事が宇都宮市内で見かけたのです。間違いありません。今、尾行しています。それにしても、三浦真紀と伊香保にいるのに、宇都宮というのは不自然です。何かがあると思います」

「そうですか。新開刑事は、今、高速を走っていますし、連絡は取れません。とにかく、安永の尾行をお願いします」と、出口刑事が答えた。

ほどなくして、出口刑事から、僕のところに連絡が入った。

新開刑事の動向を心配していたのであるが、何やら、おかしな展開だ。

「出口さん・・・新開刑事は、今、どのあたりでしょうか?」

「尾行している刑事からの連絡によると、もう少しで佐野サービスエリアに着くということです。そこで、また、新しい指示があるということです。何だか、複雑な動きですし、署としても慎重に尾行しています。今は、群馬県警の車を中心として尾行していると思いますが?・・・」

出口刑事は、今朝からの状況を説明してくれた。

「そうですか。僕も現状に行きたいのですが、何の力にもなれないと思っています。それと、考えていたのですが、三浦真紀が、伊香保にいないと思うのです。三浦と安永は一緒にいる。つまり、伊香保にいるということはないし、もし、いたとしたなら、それは替え玉・・・つまり、アリバイ工作ではないかと思うのです」

「雪田さん・・・どういうことですか?」

「それは・・・例のアリバイ工作のことです。僕なりに、調べてみようと思ったのですが・・・つまり、あのママのいる店のことです。アリバイ工作の・・・あれから、もう一度、店に行ってみたのです・・・その時に、三浦真紀らしい女を見たのです。見たといっても、かなり遠くからなのですが、僕がその店に向かっている時に、店から出る女がいたのです。それが、三浦真紀によく似ているのです。まさかと思いましたが、多分・・・」

「そんな? 本当ですか?」

「えぇ、僕も信じられません。しかし、ママに聞いてみたのです・・・」

ここからは、雪田とママとの会話になる。

「あらっ、この前のお客さんよね? いらっしゃい・・・」

「仕事は終わったの? 何にする?」

「ビール・・・ねぇ、ママ、さっき綺麗な女の人が店から出たけど・・・とっても美人だね?」

「・・・あぁ・・・あの人・・・確かに綺麗よ。女も惚れるくらいよね?」

「こんなことを言っては失礼だけど・・・この店で一人で、飲んでいたの?」

これは、僕のひっかけであった。

もし、飲んでいたのなら、テーブルの上の飲んだ痕跡があるはずだ。

しかし、それはない。 三浦真紀が店を出てから、ほんの一分前だ。まだ、片付けをしていないということは?・・・話だけで来たのか?

「そうね・・・少しだけ・・・何で?」

ママは不思議そうな顔をして僕を見た。

「いや・・・好みのタイプなんだよ・・・しかし、美人だ・・・あんな女と一緒に飲んでみたいものだよ・・・」

「えっ、そうなの・・・へぇ・・・男って・・・皆、そうよね?」

「皆?」

「まぁ、それはいいわ・・・でもね、あの女は止めておいたほうがいいわよ・・・」

「どうしてだよ? 男がいるということかい?」

「ウフフ・・・そういうことよ・・・詳しくは知らないけど・・・たまに、男と会っているのよ。この店で・・・だから、悪いことは言わないから、諦めたほうがいいと思うわよ・・・」

「そうか・・・それもそうだな。あんな美人に男がいないはずがない・・・残念だよ・・・誰もいなかったなら、立候補しようかと思ってね。もうダメだということだよね?」

「うん、そういうことかもね? それと、あの人は、もうこの店に来ないと思うし・・・」

「えっ、何で?」

「お客さんも、好きよね? そんなことを聞いて、どうするの? もう来ない女のことを・・・」

「来ない女だから・・・聞きたくなるものだよ。ねぇ、ママ、ちょっとでいいから教えてよ。もう、出会うことのない女の、その女の過去・・・というものを聞いてみたいと・・・思ってね・・・もう会えないのだから何の問題もないし、まして、名前も素性も知らない女・・・何か謎めいていて、男心をくすぐる。そんな気持ちって・・・・ねぇ・・・ママ?」

「・・・そうねぇ・・・少しだけなら・・・いいわよ」

「美人のママが、美人の女のことを語る・・・今夜は、美人だらけ・・・」

「ウフフ・・・お客さん・・・うまいことを言うのね・・・いいわ・・・話してあげる」

「さすが・・・美人ママ・・・で、どういうことなの?」

僕は、テーブルの上に身を乗り出していた。

これで三浦真紀のことが分かるかもしれないと・・・

僕たちの知らないことが・・・このママの口から知ることができるかもしれない?

以下、スナックのママの三浦真紀に対してのこととなる。







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「雪ちゃん・・・車はBMWだよ・・・」

「もしかして・・・野上の乗っている車?」

「かもしれないな・・・ナンバーが一致したならいいのだが・・・」

「そうしないと、アリバイにはならないと・・・ですかね?」

「しかし、そうだとすると、何のためのアリバイ作りなんだ。また、殺人か?」

「殺人・・・もう、ないと思いたいのですが・・・新開さん・・・まだ、殺される人が・・・」

「殺されるとしても、誰が誰を殺すのか? 野上は、絶対に姿を現すことはないだろう。しかし、気になることがある。野上が殺さないのなら、どうしてアリバイ工作が必要になるのかということだ。野上と関係のない、例えば・・・殺し屋のような奴に依頼すればいいことだろう、雪ちゃん・・・?」

「そこなんですよ・・・野上のアリバイは必要ない・・・おかしいのですよ・・・今回の連続した事件には、その裏で野上の存在があります。どうして彼は、自分の存在を示すようなことをするのでしょうか?そんなことをすれば、自分に疑いがかけられることになります。何故でしょうか? まるで、警察に挑戦しているように思えてならないのですが・・・?」

「雪ちゃん・・・俺も、それを考えていた。確かに、自分の存在を誇示しながら、そして、アリバイも完璧なものにしている。警察への挑戦と見てもいいと思う。しかし、何故・・・そんな挑戦をする必要があるのか? 理解できないな・・・まぁ、明日が楽しみだが・・・」

「明日が天王山ということですね。これで何かの大きなヒントになればいいと思います。アリバイを崩すことができたなら一気に解決だと思います。ただ、死体を移動させたという理由も早く知りたいものです。どう考えても野上は挑戦していると思えて仕方ないのです」

「おそらく、過去に何かがあると思っているが、俺の勘だと、京都にいた時に警察に無理やり解散させられた暴走族のことが起因しているのではないかと思ってな・・・しかし、それと殺人事件とは何の関係があるのかということだよ・・・まぁ、明日は、スパイということで頑張ってみるよ・・」

新開刑事が、スパイとなって車を運転する。

しかも、左ハンドルの車・・・・大丈夫なのであろうか?

その夜、岩崎弁護士から電話があった。

「三浦真紀さんと連絡がついた・・・たいしたことはなかったよ・・・」

「えっ、何?」

「いや、旅行していたらしい。たまにはゆっくりしたいということで携帯にも出なかったらしい。確かに、呼び出しはしていたし、緊急があったなら、留守電にも入れることができたのだから・・・僕の思い過ごしだと・・・いゃー、心配かけた」

「で、どこにいるんだい?」

「群馬らしい。群馬の伊香保温泉・・・」

「群馬・・・本当かい?」

「本人が言うのだから、信じるしかないけど・・・」

「それで、妹の安永恵理子は?」

「一緒に旅行したいたらしい・・・」

「一緒に? どういうことなんだよ?」

「たまには、姉妹だけの旅行もいいと思ったらしいけど・・・それで・・・」

「本当に旅行なのかい?」

「旅行だろう・・・嘘をつく必要はないし・・・」

「しかし、安永恵理子には、日光南署の刑事が尾行しているはずだ。それなら、新開刑事に連絡があるはずだよ。本当に、恵理子と一緒なのかい?」

「・・・確かに・・・俺も、そう思う・・・だったら何故? 恵理子さんと一緒だと言ったんだい?」

「岩ちゃん・・・恵理子にも尾行がついていると、三浦真紀に話したかい?」

「そんなことは話していないよ。話したなら、真紀さんが悲しむと思って・・・野上のことだけを話した」

「やはり、そうか・・・その三浦真紀と一緒に温泉? に行った女がいるとしたなら、それは、安永恵理子じゃないな・・・別人だよ・・・」

「どういうことなんだよ・・・そんな、嘘をつく必要はないだろう?」

「それが、あるんだよ・・・とにかく、このことは新開刑事に連絡しておく、岩ちゃんは、何も知らないということにしておいてくれよ。頼むよ・・・もしかしたなら、誰かが殺されているかもしれない?」

「意味が分からない・・・どういうことだよ。誰かが殺されているということは? まさか、三浦真紀さんが殺すなんてことはないだろう?」

「・・・そうならいいが・・・とにかく、こっちで動く・・・岩ちゃんは静かにしていてくれよ・・・」

「三浦真紀さんが何か関係しているというのかい? どうなんだよ?・・・」

「可能性があるかもしれないということだ・・・とにかく、三浦真紀から連絡があったなら、余計なことを言ってもらっては困る。約束してくれるよな? 岩ちゃん・・・」

岩崎弁護士は、何がなんだか分からないが、しぶしぶ承諾してくれた。

僕には、一つの推理があった。

例の鵜飼浩二という、アリバイ作りの男・・・その男が誰かに利用されているのではないかと?

勿論、野上幸則との付き合いはある。

しかし、それ以外の誰かとも・・・僕の推理がはずれてくれることを祈っていた・・・

新年になっても今回の連続殺人事件の伸展はない。

唯一、新開刑事がアリバイ工作の男との接点を持ったことだけであった。

手も足首も、一体誰のものなのであろうか?

もしかして、田中雅彦という推理は成り立つのであるが、何の確証もない。

翌日、新開刑事は指定された、国立インターの傍のコンビ二で相手の男を待っていた。

すると、黒のBMWが駐車場に入ってきた。

サングラスをした黒いスーツ姿の男が運転している。

その男は車から降りて、新開刑事のほうに歩いてきた。

「あんたかね? 鵜飼さんの?」

「そうです・・・この車ですか?」

「そうだ。詳しいことは車内にある紙の袋の中を見ろ」

と、だけ言って、その場から歩いていってしまった。

年のころなら、四十才ぐらいだと思われる。

新開刑事は、急いで車の中に入った。

そのコンビニの中には、変装した刑事が二人張り付いていた。

その車は、多摩ナンバーである。

野上幸則が使用しているBMWとは違うナンバーがついていた。

車内は、綺麗に掃除されていて、チリの一つも落ちていない。

ダッシュポケットを開けようかと思ったが、どこで見られているかもしれない。

うかつな行為は、命取りになるかもしれないと思い止めた。

新開刑事は、助手席に置いてある茶色の紙の袋を手に取り中を見た。

全国の地図とA4サイズの紙が一枚だけ入っていた。

その中に書かれていた文章は以下となる。

すぐに中央高速国立インターに入り、新宿方面へ向かえ。

三鷹の首都高速料金所を出て、国道20号線に降りろ。

国道20号を新宿方面に向かい、初台の入り口からもう一度首都高に入る。

次に、首都高の赤坂方面に向かう。

赤坂トンネルの中で、東名高速方面に向かえ。

次に、東銀座で一旦出る。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

なんだ? この内容だと、誰かが追尾しているということを避けるということだ。

更に、記述している内容は・・・












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「あぁ・・・その中に、鵜飼という名前が確かにあった。それで、今、電話で確認したが、野上の暴走族のグループの中に、鵜飼浩二という名前があるそうだ。桑原刑事も必死で捜していたそうだが、所在が不明だったということだ。つながってきたとは思わないかい?」

「やりましたね・・・そうか、やはり野上の仲間・・・何となく線がつながりましたね。つまり、今回の事件は、全て京都の暴走族の仲間ということなりますね? ということは、野上や南のアリバイの一部は、その鵜飼浩二という男が策略したということになりますが?」

「そこなんだよ・・・しかし、よく考えてみてくれよ。野上のアリバイは、安永恵理子、安永恵理子のアリバイは渋谷の会社、南のアリバイも渋谷の会社なんだよな・・・まさか・・・渋谷の会社全体がアリバイ作りに協力しているということか? それには無理がある。何か見落としていないかい?」

「そう考えると・・・確かに・・・アリバイとしては変ですね。何のアリバイを必要としていたのでしょうか? 日光のアリバイ・・・もしかして、日光のベンツの女は・・・安永じゃないとか?」

「それはないな。しっかりとNシステムの画像として映っている。キャリアーカーの男については、サングラスをしているから確証はないが・・・安永恵理子は完全なアリバイがある。何か他にアリバイを必要としたことがあるに違いない・・・それが何なのか?」

と、新開刑事は頭をかかえた・・・

「新開さん・・・もう一回、並べなおしてみませんか? 必ず、見落としがあると思うのですが?」

ということで、またまた、見直しになった。

何かを見落としている・・・それは何なのか?

野上や南にとって、完全なアリバイ・・・僕と新開刑事は無言のままに考えていた。

その夜は、何も頭に浮かぶことはなかった・・・

翌朝、岩崎弁護士から緊急の電話が入った。元旦である。

「雪ちゃん・・・三浦真紀さんが・・・」

「どうしたの?」

「電話が何日も電話に出ないんだよ。おかしいよ・・・」

「海外へでも旅行に行っているんじゃないの?」

「そんなことはない。元旦に一緒に初詣に行こうと約束していたんだよ・・・十二月三十日から連絡が取れない・・・おかしい・・・おかしい・・・」

「家には行ってみたの?」

「夜に行ってもいない。いるのは、母親だけだよ。母親も何も聞いていないというんだ・・・」

「聞いていない? それはおかしいな?」

「まさか・・・妹のところへ行っていることは?」

「安永恵理子かい? そんなことはないと思うよ。多分?」

「多分って何? 何かそんなことを話していたのか?」

「・・・話してはいないけど、相談したいことがあるということは言っていたけど・・・」

「何の相談・・・?」

「・・・それは・・・野上とのこと・・・野上が・・・」

「何だよ・・・」

「野上が疑われているということ・・・警察に・・・」

「何で、三浦さんが知っているんだい? まさか・・。岩ちゃんが・・・」

「話したよ・・・全部・・・」

「冗談じゃない・・・何で話したりしたんだよ・・・警察のことは内密だと約束したじゃないか?」

「ごめん・・・雪ちゃんから聞いたことを全部話してしまった・・・問題はないと思って・・・」

「バカ・・・もし、三浦真紀が、妹のことを心配して野上に会っていたとしたら・・・大変なことになるぞ・・・何でそんなことが分からないんだよ・・・三浦真紀が野上幸則と会い、そして、過去のことを確認する。野上にとっては、アリバイがあるから問題はないかもしれないが、警察が裏で動いているということを知ったなら、どう出るかは分からない・・・野上に警察の情報の全てを与えてしまったなら、三浦真紀が危なくなるかもしれないじゃないか?」

「・・・俺も、そう思う・・・すまん・・・」

「とにかく、三浦真紀を捜さないと・・・新開刑事にも連絡する・・・」

僕は、電話を切り、新開刑事に電話をかけ、いきさつを話した。

「岩ちゃんが・・・やってくれたな・・・だから、民間人は信用できない・・・それよりも、日光へ行った可能性はないのかい? 妹のところへ・・・」

「全く分かりません・・・妹の携帯にも連絡が取れないということです。一体、どういうことでしょうか?それと、野上や南の尾行は?」

「問題ない・・・刑事が尾行しているが、三浦や安永と会ったという報告はない。野上は東京にいる。南も年末から栃木の宇都宮のマンションにいるということだ。尾行は完璧だから・・・」

「そうですか? 安心しました。しかし、僕もうかつでしたよ・・・まさか、岩ちゃんから情報が漏れるとは思ってもいませんでした。すいません・・・」

「いや、もう遅いよ・・・それよりも、何か嫌な予感がする。野上と南の張り付きは問題はないと思うが、他に誰かがいたなら・・・その誰かが・・・」

「ええ・・・誰かが・・・三浦真紀を・・・殺す・・・」

「そういうことだ。三浦真紀は、警察情報の大半を知っているということだ・・・つまり、野上にとっては邪魔な存在になっている。もし、三浦真紀が、しつこく・・・」

「新開さん・・・その可能性はあると思います・・・野上という男は、邪魔なものは・・・」

「・・・排除するという性格だな・・・とにかく、日光南署にも連絡しておく、それと、警視庁管内と栃木管内の全ての警察署に、三浦真紀と安永恵理子の身柄確保をしてもらうように手配する」

一体、二人の姉妹は、どこに行ってしまったのか?

つながりかけた、点と線・・・が、脆くも崩れ去るような予感がしていた。

第五章 結末 

その日の夜、新開刑事へ、例の鵜飼浩二という男から、アリバイの指令が入った。

夕方のことであった。その電話の内容は・・・・

「明日、あんたは、こちらで指定する車を運転してもらう。車は、国立インターに一番近いコンビニの駐車場で渡す。車は、黒色の大型のBMWセダンだ。左ハンドルだが運転はできるか?」

「昔、少しだけ乗っていたので・・・」と、新開刑事は言った。

新開刑事も車好きであり、若いころにアメリカの大型車を所有していたこともあった。

「そうか・・・時間は、明日の午前十一時丁度。紺色のスーツを着て、黒いサングラスをした男が、あんたに近寄ってくる。それと、その車に乗ったなら、後部座席に置いてある、服を着てもらう。それ以外のことは、その服の入っている袋の中に書いてあるから、その通りにすればいい。必ず時間は守ってくれ。何か質問は?」

「国立インターから入るということですか?」

「そうだ・・・それと、車に乗ったら携帯電話は切ってもらう。こちらからも、定期的に、あんたの携帯へ電話するが、もし、携帯を切っていなかったなら、この仕事はないということだ。必ず守れ」

「はい・・・詳しいことは・・・その紙袋の中・・・」

「そうだ・・・そこに全てのことが書いてある。とにかく、こちらの指示したことをやればいい」

「分かりました・・・では、明日・・・」

以上の会話であった。

勿論、新開刑事は、このやり取りを録音していた。

多摩西部署において、明日のことの打ち合わせが行われることになった。

数台の警察車両も追尾する。

覆面だと知られたなら、全ては終わるということで、普通の車と、営業者らしい車を手配することになった。

また、埼玉県警にも依頼し、埼玉県では、他の車が追尾し、栃木県でも、他の車が追尾するという大掛かりなものとなった。

間違いなく、その鵜飼という奴も、他の車で追尾していると思われる。

うかつな追尾は命取りになるのだ。

刑事たちに、慎重の上にも慎重に追尾するという指示が徹底された。

この追尾の許可は、本庁の担当警視からであったが、野上への直接捜査とは違うということで

許可が下りたのであった。

さらに、鵜飼の過去の経歴は、京都中央署から取り寄せられていた。

鵜飼浩二  30才  本籍 京都府京都市上京区豊品町四五四―一二

現住所 東京都調布市片山九―一一―三 三上マンション 一〇七号

京都では、過去に一度、暴走行為で書類送検になっていた。

それは、野上や南との共同暴走行為の違反ということであった。

それ以来の、東京での経歴は一切不明だ。

その後、新開刑事から電話があった。









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確かに、京都で殺害されたのであるから、東京では大きく報道されてはいないと思う。

しかし、野上の知り合いということであるならば、野上から何らかの話があってもいいはずだ。

ここの店の従業員は、そのことを知らないのだろうか?

「いえ、中川さんは殺されましたよ・・・二ケ月前に・・・」

僕は、はっきりと事実を伝えた。

一瞬、店長の顔が青白くなり、唇が、かすかに震えていた。

「殺された? 知りません・・・誰に?・・・」

「知らなかったのですか? 京都の事件ですから知らないのも無理はありません。しかし、野上社長からは聞いていませんでしたか?」

「・・・えぇ・・・社長からは何も・・・でも、誰が?・・・」

「犯人は不明です。警察が捜査していますが、今のところは・・・」

「何で殺されたのですか?」

「それも不明ということです」

「そうでしたか・・・残念です。とても、優しい人でした。社長の知り合いということで店員も気にしていましたが、とても気さくな人でした。口数は少ないのですが、静かに酒を飲んでいたのをよく覚えています・・・」

「そうですか? それで、店長に聞きたいことがあるのです。中川さんと付き合っていたという女がいるという噂を聞いたのですが? この店の店員らしいのです?」

「付き合っていた? ここの女の子? それはないと思いますよ。そんな話は聞いたことがないです。もし、そうなら噂になっていてもいいと思いますが・・・何も知りません。中川さんは、お客として来ていただけのことですから・・・それだけです」

何か奥歯にモノの挟まったような言葉使いであった。

「ここの女ではない? 何か聞いたことはありませんか? いえ、中川さんのことを調べている親族がいるのです。警察とは別ですので何の迷惑もかけません。教えてもらえませんか?」

店長、僕の真剣な顔を凝視していた。

そして、ゆっくりと話し始めた。

「これは、噂ですが・・・社長の紹介で女の子と付き合っているという・・・噂ですよ・・あくまで噂です。社長には秘密にしてもらえますか?」と、小さな声になった。

「勿論・・・あなたから聞いたことは秘密にします。心配しないで下さい」

「以前、社長の女だったということです・・・栃木の会社の従業員ということを耳にしたことがあります。社内的には、誰も口にすることはなかったのですが・・・一度だけ、この店に二人で来たことがあったのです。私は中川さんが女の人を連れてくるということはあり得ないと思っていたので、覚えているのです。とても、綺麗な女性でした。それで、ここの店員の女の子に尋ねてみたら、よく、社長と一緒に歩いているところを見かけたというのです・・・その子からの話だと、社長の女の中の一人だというのです」

「栃木?・・・もしかして、安永恵理子という女ではないですか?」と、僕は、安永恵理子の写真を見せた。

「・・・間違いないと思います。この女性です・・・それで、この女性が何か?」

僕は、むしょうに体が震えていた。

本当に、中川和義と安永恵理子は付き合っていたのだろうか?

現在の調査では、野上幸則と安永恵理子は付き合っていることは間違いない。

とすると、中川と付き合うということは一体どういうことなのだ。

中川が野上の女の安永に手を出すことは考えられない。

昔から野上と中川は師弟関係以上なのだ。

そんな立場なのに手を出すということは、絶対に無理だと思う。

付き合っていたというよりも、野上からの何らかの指示ではなかったのか?

何かの細工のために・・・? ・・・なのだろうか?

「店長さん・・・この女は野上社長の女ではなかったのですか?」

「詳しくは知りません・・・皆の噂ですから・・・もういいですか? 店も忙しくなってきたので・・・」

「忙しいところを・・・すいません。今日のところは、これで・・・また、何か尋ねることも・・」

「・・・・困ります・・・こんなことが社長に知られたなら・・・」

「そんなに怖い人ですか?」

「もう・・・ここで・・・」

僕は、その店長に、何かあったなら電話してほしいということを告げ、さらに・・・

「野上社長にも容疑が・・・」と、店長に囁いた・・・

店長は、その言葉を聞いていたと思う。

そして、足早に厨房の中に入って行った。

しかし、その顔は何かに怯えているようにも感じられた。

野上は、この会社では恐ろしい存在なのかもしれない?

僕は、その足で新開刑事が待つ例のスナック店へ向かった。

ドアを開けると、新開刑事は、アリバイ工作会社?の男と、テーブルで話している。

僕は、一見を装いカウンターに座った。

「いらっしゃい・・・初めてのお客さんね・・・」

と、ママが僕に熱いおしぼりを出した。

「もう今年も終わりよね・・・何にする?」と、愛想のよいママだ。

「日本酒・・・熱いのを・・・しかし、外は寒いね・・・」と、僕が言うと。

「十二月だものねぇ・・・お客さんは、仕事収めか何かなの?」

「今日で終わりだよ・・・たまには違う店で飲んでみようかと思ってね・・・」

「あら、そうなの・・・ありがたいわ・・・」

「さっきは、仲間と飲んでいたけど、皆、帰ったからね・・・それで、ブラブラしていたら、ママの店の看板があったから・・・」

「まぁ・・・嬉しいわ・・・今後とも宜しくね・・・私と女の子の二人だけど、女の子は昨日から田舎へ帰ってしまったのよ・・・ごめんね」

「ママで十分だよ・・・こんな綺麗なママなら・・・」

「あらっ・・・口が上手なんだから・・・でも、嬉しいわ・・・さっ、どうぞ・・・」

と、燗酒をついでくれた。

僕は、新開刑事のほうをチラリと見た。

二人は顔を近づけて話している。残念だが、小声なので聞くことはできない。

時折、新開刑事が、小さな声で頷いていた。

そして、新開刑事が「すごいですね。是非やらせて下さい・・・」と、少し大きな声で言った。

おそらく、僕にも聞こえるように言ってくれたのだと思う。

すると・・・・新開刑事の声に影響されたかのように、その男の声も大きくなっていた。

「それでいいなら・・・やってもらうことになる。最近は、この仕事を引き受けてくれない人が多いんだよ。あんたなら・・・色々と使うことができそうだな。度胸もありそうだし、経験もありそうだ。で、来週・・・つまり、一月の四日だが、ちょっと遠くまで行くことはできるか?」

「遠く? どこですか?」

「栃木だ。車を運転してもらいたい・・・ただ、指定された場所を指定された格好で走っていればいい。簡単だ。ただ、絶対に違反をしてもらっては困る。常に安全運転だ。違反したなら、金は払わないし、井二度と依頼はしない・・・いいか・・・詳しいことは、明日、指示するが・・」

僕にも、栃木という言葉が聞こえていた。やはり、野上の関係なのだろうか?

僕は、気づかれないように、ママと雑談しながらだから、全部の話を聞くことはできない。

「運転ですか? 何かを運ぶとか・・・格好というのは?」

「余計な推測はするな。指示通りに走ればいい・・・余計なことはするな・・・いいな?」

「はい・・・で、いくら貰えるのでしょうか?」

「指示通りにしたなら、その日に、二十万円払う・・・とにかく明日連絡する」

と、言い残して、その男は店を出た。

ママは、その男を店の外まで見送ることになり、外に出た。

五分ぐらいして店に戻ってきた。

そして、新開刑事の顔を見ながら「あんた、よかったわね・・・ウフフ」

と、ニヤリと笑った。

「ママ、助かったよ。金がないから助かるよ。今年はボーナスが極端に少なかったからな・・・」

「そう、でもね・・・余計なことを聞いちゃだめよ。あの男・・・危ない男だからね。詳しくは知らないけど、昔は、京都にいてワルだったらしいのよ・・・関西弁は出ないから、最初は東京の人かと思っていたけど、京都らしいの・・・以前に、関西のお客さんが入ってきた時に、ささいなことで喧嘩になったのよ、そうしたなら、関西弁でまくしたてたの・・・怖かったわ・・・だから、余計なことを聞くと怖い人なのよ・・・前科もあるようなことを言っていたし・・・」

「そうなのかい? 怖いな・・・で、浩二って言っていたけど、本名なのかい?」

「だから・・・聞いてはいけないのよ・・・でも、あんたも仲間だから・・・少しだけ教えてあげるわ。いい・・・でも、彼に話したらダメよ・・・いい・・・分かった・・・」

と、ママは強く念押しした。

そして・・・

「鵜飼というのよ・・・鵜飼浩二・・・前にね、財布から運転免許証が落ちたの、それをチラッと見たことがあるのよ・・・だから・・・」

「・・・分かった・・・決して言わないから・・・ママ、少し飲んでくれよ・・」

僕は、カウンターで、その話を聞いていた。

新開刑事は、その後、店を出た。

その時に、僕に軽く会釈する。つまり、後で、話があるというサインだ。

僕は、急いで店を出て、僕の中古車店に向かった。

ここからは、僕の情報と新開刑事の情報の照らし合わせになる。

「雪ちゃん・・・面白くなってきたぞ・・・明日、栃木ということは、多分日光じゃないか?」

「おそらく・・・でも、一体誰なんでしょうか? 鵜飼浩二・・・」

「雪ちゃん・・・覚えていないかい?」

「えっ、何をですか?」

「京都中央警察の桑原刑事の持っていた資料の中を?・・・」

「資料? もしかして・・・暴走族の?・・・」












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「運転だけよ・・・でも、少しだけ変装さらせられたけどね・・・ウフフ」

「変装? 何で・・・」

「うん、詳しくは聞けないけど、そのアリバイを依頼した女の人に似たような格好をされられたわ。服と帽子とサングラスだけど・・・それで、車の運転をしたのよ・・・それでね、その服が高級なブランド物なのよ。私なんかでも分かるわ・・・高い物よ・・・」

「へぇ・・・そんなことまでするのかい? それで、三十万円か・・・俺もやりたいなぁ・・・」

と、ママと今野刑事を見た。

今野刑事が「先輩・・・面白そうな仕事ですよね。俺も興味がある・・・」

「あぁ、そんなことなら簡単だし、少しでもいいから金になればいい。ママ・・・その仕事を紹介してくれないか?」

「それは無理よ。私が決めるわけじゃないし・・・さっきいた男が仕切っているから・・・その男に聞いてみたら・・・」

「さっきの客・・・紹介してくれよ?・・・」

「それはいいけど・・・でも、お客さんの素性も知らないし・・・勝手なことをしたら怒られるから・・・でも、明日の夜に来るから聞いてみてもいいわよ・・・で、お客さんの名前は何なの?」

新開刑事は咄嗟に、新井と今田と名乗った。

もしかして、ママが名刺を要求してくるかもしれないとの不安はあったが、ママはそれ以上のことは聞かなかった。

二人の刑事は、その後ママと雑談をして店を後にした。

明日の夜に、もう一度来るという約束をして・・・

その夜、新開刑事は、警察で偽の名刺を作ることにした。

警察には、そのような裏のセクションがあり、偽会社や電話番号も作ることができる。

新開刑事は、商社の課長という肩書きになり、電話番号も与えられ、その電話にかかってくる電話は、その会社の名前で出る。

警察内にそのようなシステムは完全に裏でできていたのだ。

その日の深夜、新開刑事から電話があった。


その日のことを僕にも詳しく説明してくれた。

「そんなことがあったのですか? それにしても何かの関係があると思いますね」

「雪ちゃん・・・何かある。明日の夜にその店でアリバイを操作する男と会うが、雪ちゃんも来るかい?」

「勿論ですよ・・・一見客として・・・楽しみですよ・・・あぁ、それと、久米君から電話がありました。中川和義のことです。たいしたことではないかもしれませんが、一応気になったので・・・」

「何?」

「えぇ、中川には女がいたということです。思い出したということです。その女というのが、何でも野上の店で働いていたらしいのです。詳しい名前はわかりませんが・・・野上からの紹介らしいのです。あたってみる価値はないですかね?」

「女か? 野上ということが気になるな。名前が分かればいいのだが・・・久米君は聞いていないということかい?」

「そうなんですよ・・・雑談の中で、初めて女を好きになったということです。そして、東京でお世話になっていた飲食店の社長からの紹介だと・・・だから、野上ではないかと・・・」

「間違いないな。野上だ。しかし、中川の身辺に女の影はなかった。一方的に好きになったということじゃないのかい?」

「いえ・・・久米君の話だと付き合っていると?・・・」

「・・・・せめて、名前だけでも・・・なぁ・・」

「残念ですが、野上に聞いてみたらどうですか?」

「それはできない・・・野上の後ろには父親がいる。課長も、うかつな捜査をしないようにと言っているし・・・何かいい方法はないか?」

「母親なら・・・知っているかもしれませんが?」

「無理だろう・・・それは・・・東京に来てから母親との連絡をとっていないということだし・・・」

「そうですよね・・・無理ですかね・・・新開さん・・・このさい、僕が動くということではダメですか?」

「雪ちゃんが?」

「えぇ・・・僕は警察関係でもないから・・・探偵のような感じで、野上の店で聞いてみるということす。それなら、警察にも迷惑はかからないかと?」

「危ないが・・・やってみる価値はあるな・・・雪ちゃん・・・・早速頼む」

ということで、僕が中川和義と付き合っていたという女を捜すことになった。

翌日は、新開刑事は例の店に行くことになっていたが、僕はその前に野上の店に行き、女を捜すことにした。

その後、僕もそのアリバイ工作の店に行くことにした。

野上幸則の店の前についた。

何度か、店の前を通ったことはあったが、店の中に入るのは初めてだ。

大きな居酒屋だ。

ドアを開けると、いらっしゃいませ・・・と大きな声。

一人ということでカウンターに座った。

店員は、七名。その中で女は、四名。

厨房には、五人が忙しく動いている。四人の女の中に中川と付き合っていた女がいるのだろうか?

ましてや、事件からかなりの日が経過しているので辞めてしまっているということも考えられる。

女の店員がやってきて、僕は、生ビールを注文した。

続いて、簡単な刺身を頼む。

そして・・・・その女店員に勇気を出して尋ねてみた。

「あのね・・・ちょっと人を捜しているのだけど・・・」

女店員は、僕の顔を不思議そうに見た。

「中川という男の客は来ていなかったかい? 30才前だけど・・・」

「中川さんですか?」

「うん・・・自動車整備士だけど・・・」と、言うと。

「・・・もしかして・・・和さんのことですか? 中川和義さん?・・・」

僕の顔は一瞬固まった。

こんなに簡単に中川のことが分かるというのか?

ということは、中川はこの店に何度も来ていたということに違いない。

「知っていますか? その中川さんのことですが? 和さんというぐらいだから、何度も来られていたということですよね?」

「えぇ・・・社長の知り合いということですから、よく覚えていますが、最近は来られないですね。もう、二ケ月ぐらいでしょうか? で、どういうことでしょうか? 和さんのことなら、私よりも詳しい人がいますが、あなたは、誰ですか?

勝手なことを言って和さんに迷惑がかかるのも嫌ですし、ましてや社長の知り合いですから・・・」

「そうですよね。実は、中川さんを捜している人がいまして、その人からの依頼なのです。私は、探偵社の者で、雪田といいますが・・・」と、中古車屋とは違う探偵の時に使う名刺を差し出した。

軽く会釈すると、その女店員は、その名刺を持って厨房の中に入っていった。

しばらくすると、店長らしき男が僕の前にやってきた。

「何でしょうか? お客様のことですから、言えることと言えないことがあると思います。内容によってはお答えできないかと・・・」

と、何だか慎重だ。野上幸則の知り合いということも関係しているのかもしれない?

しかし、中川は殺されているということを知らないのだろうか?













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「浩二ちゃん・・・元気だったの?」

「当たり前だよ。忙しくてね・・・一仕事終わったしな・・・」

「そう、あんたを探して何回も、例の男が尋ねてきたわよ。あんたの携帯を教えてもいいかと思ったけど、何やら怪しい人だったからね・・・それで、例の件はうまくいったの?」

「あいつは、どうでもいい金がない奴はな・・・例の件は終わったよ。それぐらいでいいだろう・・・これでママにも渡せるし・・・この話はこれで・・・止めてくれよ」

「そう、で、いつくれるのよ? 早いほうがありがたいし・・・店もこんな具合だから・・・」

「明日、振り込んでくれるということだ。明日の夜に持ってくる・・・」

「間違いないよね? 協力しているんだから・・・」

「間違いない人だ。信用していい。この前も、ちゃんと振り込んでくれた。これで、少しは楽になるな・・・次の仕事もあるし、明日にでも連絡する」

「そう、楽しみにしているわ。明日ね・・・楽しみよ・・・ウフフ」

「あぁ、もう一杯くれるかい?」と、ウイスキーを注文した。

二人の話は何の話なのだろう?

二人の刑事は、聞き耳を立てて聞くが、あまり、二人の会話がないと不自然なため、たわいもない会話をするしかない。

すると、そのママらしき女が、新開刑事に話しかけてきた。

「初めてよね? 会社の帰り?」

「あぁ、年末だから、同僚と飲もうかと思ってね・・・」

「同じ会社なんだ?・・・言葉が少し違うから、地方の人かと?・・・」

「俺は、東京・・・こっちは、栃木なんだよ。会議でこっちに来たから・・・」

ママは、今野刑事の会話を聞いていたのだ。それで、言葉の違いが分かったらしい・・・

「栃木なの・・・私と同じよ・・・栃木のどこ?」ママは、ぶしつけに聞いてきた。

「那須です・・・」と、今野刑事が答える。

「那須なの?・・・近いわよ・・・日光よ・・・懐かしいわ・・・」

今野刑事は「日光ですか? 近いですね。ママは東京に来てからは長いの?」

「もう、二十年になるわ。それ以来一度も帰っていない。懐かしいなぁ・・・ねぇ、功ちゃん?」

と、例の男に話しかけた。

「・・・そんなことはいい・・・ママ、帰るぞ・・・明日な・・・」

と、その男は店を出た。

新開刑事としては、追いかけたいのだが、今の雰囲気ならば、ママに何かを感づかれるかもしれないと思い、仕方なく店に留まることにした。

この男は、明日もこの店に来ることは間違いないし、明日、張り込めばいいと思った。

ドアが開き、男が一人入ってきた。もう一人の女店員は、その男にサービスをしている。

「お客さんは、どんな仕事なの?聞いてもいいかなぁ?・・・」また、ママがぶしつけに聞いてきた。

二人の刑事は顔を見合わせて・・・そして、新開刑事が「たいしたことはないよ。小さな、商事会社だよ。制服関係の・・・」

「制服? ねぇねぇ・・・何の制服?」

「・・・学校の・・・

「そうなんだ・・・で、もう会社は休みになるの?」

「・・・まだ・・・明後日まで・・・」

「大変よね・・・明後日というと・・・晦日まで・・・大変ね・・・不景気だし・・・うちも、今年は最悪なのよ。客単価は落ちているし、常連さんの来る回数も減っているし、何かお金になることはない?」

「・・・こっちが教えてほしいよ・・・ハハハ・・・ママは、楽しい人だね・・・」

と、新開刑事は、明るく笑った。

「本当よ。これだけで食べていくのも精一杯よ。お金になることがあったなら教えてよ・・・ウフフ」

と、二人の顔を見て、ニヤリと笑った。

「ママは、何でそんなにお金がほしいのかい?」と、今度は今野刑事が尋ねた。

「お金だけよ・・・信用できるのは・・・でもね、今年は、運がいいのよ。年末にきて、ちょっと副収入が入るのよ。これで年を越せるわ・・・タナボタ・・・なのよ・・・」

「タナボタ? いいなぁ・・・俺たちには、決まった給料しかないから・・・」

「何かすればいいんじゃないの? 普通のことをしていても何にもならないわよ・・・」

「普通のことはダメなのかい?」

「当たり前よ。少しぐらいリスクがあったほうがお金になるのよ・・・」

「リスク・・・どんな? 教えてくれてもいいだろう?」

「それは言えない。でも、人が困っていることを助けることよ。これが一番お金になるのよ・・・ウフフ」

今度は新開刑事が「そんなもんかね? 困っている人を助けるって何? ママも一杯飲んでよ・・・」

ママは、ペコリと頭を下げて、焼酎をグラスに注いだ。

「いただきまーす・・・」と、一気にグラスの中の液体を飲み干した。

「世の中にはね。困っているけど、うかつに人に助けを求められない人が沢山いるのよねぇ。そんな人を助けるとお金になったりするのよ。裏の仕事みたいなものよ・・・ねぇ、もう一杯いい?」

と、勝手に焼酎をグラスに入れた。

続けて「さっきいた男がいるでしょ・・・あの人なんかは、そんなことで生活しているのよ。人の困ったことを何とかして解決してあげて、裏でお金を貰う。だから、税務申告も必要ないし、税金も払っていないのよ・・・いい、生活よね・・・適当に動いて・・・そして大金になる・・・」

「さっきの人・・・そんなことをしているのだ。俺たちサラリーマンには無理なことだよ。毎月、毎月、高い税金を払っている。税金なんて払いたくないな。それでね、ママ・・・例えば、どんなことをしたらお金になるんだい?」

「・・・聞きたいの? ウフッ・・・少しだけなら・・・いいわよ・・・お客さんもお金に困っているような顔をしているから・・・もう、一杯いいわよね?・・・」

「何杯でもいいよ・・・ママ・・・頼むよ・・・教えてくれよ」と、新開刑事と今野刑事は、頭を下げた。

「あのね、あの男・・・浩二っていうんだけど、闇の世界とつながっているのよ。世の中には、人に対してアリバイが必要な時もあるんじゃないの? アリバイを作ってくれるのよ。それで、家族や会社がうまくいくならいいんじゃないかしらねぇ・・・」

「アリバイ? そんなことができるのかい?」

「簡単なのよ・・・アリバイ工作してお金もらう人は沢山いるわよ。皆、俳優みたいなものよ・・・ウフフ・・・」

「闇の商売ということか? 非合法な・・・」

「闇? そうじゃないわよ。人助けよ・・・誰にも迷惑はかけないし、お金にはなるし・・・」

「どんなことをするんだい?」

「一番多いのが、不倫のアリバイよ。その次が、キャバクラなんかで働いている地方出身の女が、親に嘘をつくために、しっかりとした会社で働いているということかしら?色々とあるのよ・・・」

「で、一番金になるのは何だい? 今、ママがしていることなのかい?」

「・・・そうかもね・・・ウフフ・・・」

「何なのか教えてくれよ・・・頼むよ」と、新開刑事は、興味津々という態度で尋ねた。

「そんなに知りたいの? じゃあ・・・ボトル入れてくれる?」

ということで、キープのボトルの八千円を入れることになった。

警察というところは、捜査に必要な金は、刑事たちに任されている。

八千円という金額は、警察にとっては些細な金額だ。

「誰にも内緒よ・・・・」と、ママは声を小さくした。そして、他の客に聞こえないように・・・

「警察関係のこと・・・本当のアリバイよ・・・これがお金になるのよ・・・」

「警察・・・そんなことできるのかい? 警察だって徹底的に調べていると思うけど?」

「大丈夫なのよ・・・人と人のつながりがないとしたら、安全でしょ・・・ウフフ」

「まぁ、それはそうだけど・・・で、何度もあったのかい? すごいね・・・ママ・・・」

ママは得意になっていた。お酒を飲んでいるということで気が大きくなっていた。

「あったわよ・・・今回なんか、一回で、三十万円よ・・・楽なものよ・・・」

「ママ・・・詳しく教えてよ・・・すごいな・・・たいしたもんだよ・・・」

「ルートがあるからね・・・普通じゃ無理・・・教えてあげてもいいけど・・・秘密を守れるの?」

「心配するなよ・・・俺も警察は嫌いだ。昔、捕まったこともあるし・・・警察に協力することは絶対に嫌な男だ。前科もあるしな・・・警察は嫌いだ・・・だから、警察に対してなら何でもできるさ・・」と、ニヤリと笑った。

横の今野刑事は、その顔を見て、笑いをこらえるのに精一杯だ。

「そうなの? だったら教えてあげてもいいわ・・・あのね・・・」

と、ママは新開刑事の耳の傍に口を寄せた。

「あのね、警察なんかに疑われている人っているのよね。そういう人を助けるのよ・・・本当は何もしていないかもしれないけど・・・疑われることが疲れるのよ。だから、そういう人を助けるの。今度も、そういう人だったのよ・・・詳しいことは教えてくれないけどね。私の役目は、車の運転なのよ。とにかく、指定された場所を走ってほしいということ・・・それも、大きな高級車・・・こんな車なんか一生運転できないと思うぐらいの車なのよ・・・えっと・・・ベンツのSの何とか・・・よ。大きくて怖かったけど、ゆっくり運転してくれたらいいということなの。だから、私は、ゆっくりと走ったの・・・それも、2時間ぐらい・・・それで、30万円はいいわよ・・・こんな楽な仕事はないわ・・・ねぇ、いでしょ・・・」

と、ママは酒に酔った目で得意げに話した。

「そんなに貰えるのかい? で、どんなところを走ったんだい? その大きなベンツで・・・」

「高速道路・・・だから、楽だったわ・・・」

「高速道路? 遠いところかい?」

「少しね・・・日光から東京・・・までよ・・・」

「日光? 日光へは何で行ったの?」

「浅草から東武鉄道の特急で・・・何か旅行した気分よ。帰りは、埼玉の浦和で降りるように指示されたから、そこで降りたら、別の人が待っていてね。そこからは、タクシーを使って家まで帰ったのよ。タクシー料金も払ってくれるし・・・こんなのが月に二回でもあったら楽なのにね・・・」

「しかし、すごいなぁ・・・俺たち安月給のリーマンには考えられない金額だ。で、それだけなのかい?車の運転だけ?何か他にもあるんじゃないかい?」

新開刑事は、さらにママに尋ねた。











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※溶けない死体 あらすじ


日光の中禅寺湖のほとりで足首だけの死体が発見された。

横浜の精錬工場でも、溶けないで残っている左手だけが発見された。

その二つの人間の死体の一部は、同一人物と断定された。

過去の仲間からの脅迫。過去からの逃避・・・そのための殺人。

死体移動の綿密なトリック。完全なるアリバイ工作。

偶然と必然が複雑に絡み合う。

さらに、姉の妹を思う心。それがさらなる殺人となる。

日常の闇に潜む、人間の深層心理が悲しい。


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つまり、岩崎弁護士から三浦真紀へとリークしてしまったのだ。

このことは、しばらくの間、僕たちの知らないことであった。

「岩ちゃん、その後のことはどうだい?」

「その後?」

「見合いの相手の三浦真紀さんだよ・・・」

「特に何があるということはないよ。たまに電話をしたりしている。今回の事件で妹が参考人ということで気が沈んでいるようだよ。それと、その後の展開はどうなんだい?」

「展開していないよ。大きな壁に突き当たったよ。一から仕切りなおしらしいよ。さっきの新開刑事からの電話もそういうことだよ。せめて、手と足首の人物特定でもできたなら・・・」

「まだなんだ? 時間がかかりすぎているよな?」

「そうなんだよ。犯人は間違いなく野上だと捜査本部は思っているけど、何の証拠も出てこない。疑わしいのは間違いないが、証拠がないと何も動けない。ましてや、野上の父親の関係が警察官僚出身の代議士だし・・・それで困っているんだよ。さらに、アリバイが完璧だ」

「雪ちゃん、ちょっと聞いていいか?野上が怪しいということは、三浦さんの妹の安永恵理子も怪しいということなのかい?」

「・・・多分・・・愛人なら何かを知っていてもおかしくないし・・・」

「怪しいのか?・・・三浦さんが悲しむな・・・早くはっきりとシロだということが確認できたらいいけど・・・」

「うん、そのためにも野上を完全にマークするということになったし、安永にも刑事が張り付いているよ。どこかで尻尾を出すんじゃないかということだよ。世の中に完全犯罪はないし、必ず、どこかで尻尾を出すと思う。単独犯だと難しいけど、今回の事件は複数犯に間違いない。必ず、どこかで・・・」

「・・・そうだよな・・・しかし、三浦さんは悲しむよ・・・」

「悲しむ、悲しむって言っても、このことを知らないし、余計なことを言わないでよ」

「・・・うん・・・大丈夫だから・・・」

と、岩崎弁護士は、頷いたのであるが、この時点でも捜査状況は三浦真紀にも伝わっていた。

数日して、日光南署の今野刑事が多摩西部署にやってきた。

何の進展もないままに、あせりの色の顔になっていた。

「新開さん、このままなら迷宮ですかね?」

「バカを言うんじゃない。今野・・・まだ、始まったばかりだ。確かに、年を越すことは確定的だが、諦めるには早い。時効は二十五年なんだぞ・・・今から弱音を吐いてどうする?それはそうと、安永の動きはどうなんだ?」

「はい、特におかしなことはありません。毎日、チェリーファイナンスに通勤して、マンションに戻っています。買い物に出かけることもありますが、いつも一人だけです。特に何もありません」

「いつも一人? 誰かに会うということはないのか? 例えば、南紀夫とか?」

「ないですね。南にも刑事が張り付いていますが、特に何の動きもありません。金融の融資の調査ということで全国を飛び回っているのですが、怪しいことは何もありません」

「そうか・・・南が動くということは野上の指示だ。野上も誰とも会うことはない。皆、電話でやり取りをしているということだな・・・うちの刑事からの報告で、以前の野上なら、週に五人以上の人物と会っていたが、最近は誰とも会っていないという報告だ。それも、何か不自然な感じもする・・・」

「そうなんですよ。安永も同じで、以前は友人と会ったりしていたのですが、最近は誰とも・・・」

「それは変だな。嫌疑のかかっている二人が、何日も誰とも会わないということは・・・」

「新開さん、確かに変ですよ。警察の動きを察知しているということでしょうか?」

「確かに、嫌疑があるということは知っているが、アリバイも成立しているということで、動きが出てもいいと思うがね?警察が見張っているということを知っているのかもしれない?刑事の尾行は間違いなく隠密だよな?」

「勿論です。毎日、別の刑事や交通課の女職員も尾行させているので面が割れるということはないと思います。やけに静かな日が続くと、本当は犯人ではないんじゃないかと思ってしまいますよ・・・」

「あぁ、それはある。うちの刑事も、何の証拠もないのに尾行しているということにジレンマを持っているらしい。全ては推測だからな・・・何か証拠が・・・」

二人は、その夜、久しぶりに酒を酌み交わした。

「新開さん、何年ぶりでしょう。一緒に酒を飲むのは?」

「あの事件以来だから、かなりの年数だな。しかし、事件のことが頭にあると、どんなに旨い酒でも、味が半減だよ。ほら、隣の席のサラリーマンの楽しい顔を見ていると、腹がたってくるな・・・ハハハ・・・」

「本当ですよ・・・年末の酒・・・一年を一生懸命に働いたから旨い・・・私たちの仕事は結果だけですから・・・結果が出ないと、それまでのことは全てゼロということですね。一番嫌なのが、事件の年越しですよ。年内の解決は無理としても、新年には旨い酒を飲みたいものです」

「近ちゃん・・・ちょっと見ろ・・・ほら、奥の席だ・・あれは、野上じゃないか?」

「えっ、野上?・・・」

今野刑事は、新開刑事の指差すほうに目をやった。

しかし、野上には刑事の尾行がついているのだが、どこの席にも多摩西部署の刑事はいない。

「間違いない。壁のほうを向いて座っているが、野上幸則だ。俺たちが入ってきた時にはいなかった。俺たちの後に店に入ったということだな。しかし、尾行の刑事たちは何をやっているんだ・・・」

野上は、一人で奥の席に座り、ビールを飲んでいた。

新開刑事は、野上に気づかれないように店を出た。

外には、尾行の刑事がいた。

「何をやっているんだ・・・」と、新開刑事が怒鳴った。

「新開警部補・・・何でここに?」

「そんなことは、どうでもいい、何で店の中に入らない?」

「・・・店の中だと、面が割れるんじゃないかと・・・だから、外で待とうと・・・」

「バカ・・・誰かと会ったら何にもならないぞ・・・」

「・・・一人だけの客が入ったなら、店に入ろうかと・・・思っていました・・・」

「そうではない。もし、もしも裏口から逃げられたら・・・どうするんだ・・・」

尾行の二人の刑事は、何も言えないでいた。

とすると、今野刑事から新開刑事の携帯に電話がかかった。

「新開さん、野上が誰かと会っています。二階の席から降りてきた男です。この店には二階があって、そこにいたらしい男です。初めて見る顔です」

「何? 近ちゃん、そのままそこにいろ・・・今、俺が店に入ると、まずいな・・近ちゃんは、面が割れていないから、大丈夫だ。頼むぞ・・・携帯で写真を取れるか?」

ということで、今野刑事は、二人の写真を携帯で撮ることになった。

そして、その画像を新開刑事の携帯へ転送したのだが、初めて見る顔であった。

野上が誰かと会っている。

それも、その男は、事前に店の2階の席にいた。

つまり、野上は刑事の尾行に気づいていたということだ?

今野刑事からの電話は、常時、新開刑事の携帯とつながっている。

野上の動きに対して、すばやく対応することができるようにだ。

今野刑事の携帯からは、店内のざわめいた雰囲気が伝わる。

野上と会っている男は一体誰なんだ?

今野刑事からの囁くような携帯からの声では、二人の男は顔を近づけて、ひそひそと話しているという。

近くであれば、話の内容を聞くことはできると思うが、今野刑事のいる場所からは無理だ。

新開刑事と他の刑事たちは、店の外で待つしかなかった。

十五分ぐらいしてから、相手の男が席をたち、支払いを済ませて店を出た。

新開刑事は、その男を追うことにした。今野刑事も一緒に尾行することになった。

野上は、まだ、店の中で一人で酒を飲んでいる。

野上のことは、他の刑事が張り付いているし、新開刑事ならば面が割れているので野上に張り付くことはできない。

その男は、繁華街を抜けて、ある一軒のスナックバーに入った。

年のころなら三十才代だと思える。ラフな格好をした、一見、ヤクザのようにも見えた。

続いて、新開刑事、今野刑事もスナックバーに入った。

こじんまりとした小奇麗なスナックバーであった。

その男は、カウンターの端に座り、その店のママらしき女と話している。

そのママらしき女は、年のころなら四十才ぐらいだと思う。

二人の刑事は、他の女店員にビールを注文し、カウンターではなく、後ろのテーブルに座った。

ママとその男との会話が聞こえてきた。






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