-sunny-
「失礼します…、遠藤先生!こんにちは」
放課後になったばかりの、込み合った職員室に彼の姿を見つける。
「おお、樋口ー。今日のメニューはな、…」
S高バドミントン部キャプテンである私は、毎日放課後に彼のもとにメニューを聞きに行く。
メニューを聞き終え、メモを取り、失礼しましたと職員室を去ろうとするとき、「今日も頑張れよ」彼が時々そう言って、頭をポンポンしてくれることに、私がいつもドキドキしていることを、彼は気づいていない。
彼、遠藤文弥は、S高に務める数学教師であり、バドミントン部顧問である。あいにく彼の担当は私の学年ではないため、授業を受けることはない。年齢、36歳。誕生日、8月17日、世間は夏休みだけど、バド部の特権、部活で会えるから、みんなでお祝いする。
彼と私は、先生と生徒。顧問とキャプテン。それ以上の関係ではない。私が一方的に彼に好意を抱いているだけ。永遠に叶わない恋。そんなのわかっている。一つだけ希望があるとすれば、彼がまだ独身だっていうこと…。
うちのバド部は別に強いわけじゃない。別に弱いわけでもない。だから毎日6時には部活が終わる。朝練、昼練は自主参加。でも、私は放課後は残って練習するし、朝練も昼練もする。なぜかって…。もちろん上手くなりたいからよ、でも本当は、そんなの先生に褒められたいからに決まってるじゃない。
今日も無事部活が終わり、私は自主練を始める。
「佳奈!お前、たまには休んだらどうなんだ。お前は頑張りすぎなんだから、たまには休んだらどうだ」
先生はもう帰ったと思ってたのに、ずっと私の事を見てたみたい。しかも突然名前で呼び捨てしてくるなんて…。ドキドキが止まらない。
「まだまだたくさん課題があるんです。もう少し練習したら帰ります」
ドキドキしすぎて、息ができない。
「頑張りすぎんなよ。それと、何かあったら相談乗るからな。佳奈はまじめすぎるから一人で抱え込まないようにな。先生それだけは心配だ」
「…はい」
すると彼が近づいてきて、私の頭を優しくなでる。今日で二回目。私の鼓動が先生に聞こえてしまいそう。
「あっ、あの…先生…?」
「なんだ?」
「私、先生が好き…です」
えっ…。私今なんて??!何言ってんの私!そんなの言ったら…。え、もう先生に合わせる顔がない。顔が見られない。どうしよう。はあ、なんてことをしてしまったんだろう私は…。