やっている時にはあまり感じなかった面白さを、教えてていると感じることはあるあるかな。
クイックリフトを教えているお客さんに見本を見せたところ
「バーベルを持ち上げるというイメージでやっていたけど、先生(私)の動きを見て、逆の動きをしていると思った」
というようなことを言っていたのが、これまた面白いというか、見本を見せてそれを理解してもらうことが出来たのか非常に興味深かったですね。
「上に持ち上げるのではなくて、床に、突き破るぐらいに力をかけているのように見えた」
とのことで、ウエイトリフティングやったことない人あるあるなんですが、バーベルを持ち上げているように見えるやつですね。
だからやったことない人にウエイトリフティングの動作をさせると、必ずと言ってよいほど腕で持ち上げます。
なかなか言葉で伝えるのも難しいんですよね。
だって普通に考えたら理解出来ないじゃないですか、バーベルを上に持ち上げるから上に力を出すと思うものです。
しかしバーベルを上に持ち上げるのに、床に対して力をかけるなんて「なんで?」ってなりますよね。
恐らくですが、実際、バーベルを上には持ち上げていないんじゃないかなと思うのですよね。
そこの部分は私自身、自分の感覚を言語化していないので説明が難しいのですが、今思いつく表現で言うと「バーベルを受け取るために動いている」が近いのかな。
お客さんがまた面白いことを言っていたんです。
「バーベルが思ったよりも上がってない、その場に留まっているところをキャッチしている」
この言葉から、お客さんのイメージだと「バーベルを出来るだけ床から高く持ち上げる」というものがあったんじゃないかなと思われます。
でも、私のウエイトリフティングはそうでもない。
これはかなり昔に動画か何かで言ったことがあるんですが、私のウエイトリフティングは極力「省エネ」で動いています。
バーベルを操作するのに最低限の力しか使っていない、そのための動きも、自分自身の力の出力も最低限なのです。
だからイメージしているよりも、私のバーベルは上昇しない。
何故ならば、バーベルをキャッチするのにバーベルが上昇している必要はないから。
キャッチしやすい場所でバーベルが「静止している時間を作る」状態を作るのが、私のプルです。
よくよく考えてみれば当たり前の事なんです。
上昇し続けているバーベルをキャッチすることはできないでしょ?
高いところから落下して大きなエネルギーを持っているバーベルをキャッチするのにそのエネルギーを受け止めることは体が大変でしょ?
どの時点でキャッチするのが良いのかと言えば、静止しているバーベルをキャッチするのが一番楽なんです。
そのためにはどうしたらよいのか、バーベルが丁度良いところで静止する状態を作ることが、クリーンやスナッチの「プル」そしてジャークのティップなのではないでしょうか。
ここがおそらく、私のウエイトリフティングと、他の人のウエイトリフティングの違いなのではないかと思います。
まあでも、私のこの理屈を理解して受け入れるのは難しいのかも知れないと思ったりもしています。
やっぱりみんな、重たい重量を出来るだけ高く持ち上げたいし、それがウエイトリフティングのイメージであり、醍醐味であり、魅力に感じるところなのだろうから。
だから高いところから落とすバーベルの出す音は快感なんですかね。
まあ、私は受け入れられない感覚なんですが。
かつて動画で話したのですが「80の力で良いところを100出す必要はない」みたいな内容、これ、実はウケが悪かったです。
多分、80で十分なところを100出したい人が多いんだろうな、或いは私の言っている意味が理解できていないのかなと思った記憶があります。
80で十分なのだから80でこなすのが一番無駄がないし省エネなんです。
80で十分なところを100出したところで安全性は確保されないですしね。
逆に出しすぎて起こるリスクもある訳ですから、やっぱり80必要なところは80で十分なんですよ、と私は今でも思っていますが。
でもこれは最終的には考え方や好み、価値観の問題かな。
60点で合格なのだからそれより低くならなければ良いと考えるか、60点で良いけれどもいつでも100円満点を目指して全力で行くか。
どちらが良いとか悪いとかはないと思っています。
確かに毎回100点満点に近いところであれば、不合格は免れます。
60点超えればいいやぐらいな気持ちで居ると、ちょっとしたミスで不合格になる可能性が高くなります。
ちなみにどちらが難しいと思いますか?
満点目指して全力で行くのと、及第点目指して調整して行くのとでは。
私は実は後者の方が難しいと思っています。
実は後者の方が実力がないと出来ない所業であると思っています。
そんな変態プレイをしている、放送大学に何度も入学しては卒業しているシニアの人が、そんな話を楽しそうにしてくるのを聞いていた私は、自分はなんて甘ちゃんだったんだろうと思いました。
話が反れましたけどね。
そのお客さんも観察眼が鋭いというか、そこには感心したというか、そういう人に出会えたことになんか嬉しくなってしまいました。
観察眼があるのでポテンシャルはあると思うのですが・・・それを自分で体現していくのは難しいと言ったところでしょうかね。
まあ、実は最初の指導からずっと言い続けているんですけどね。
そこまで気付いてくれたら尚良しかな、気付いてくれたかな。
そんな人の成長を目の当たりにできるのもこの仕事の楽しいところです。
また、ウエイトリフティングって奥が深いよね。
・・・なんてことを思ったのでした。