韓国映画「ロ・ギワン」

 

 

 

 

 

 

母国の北朝鮮で友達の喧嘩の仲裁に入り、警察に追われる身となったロ・ギワン(ソン・ジュンギ)は母親と中国に逃亡し、隠れ潜んでいました。

ロ・ギワンのために働き詰めの母親を迎えに行った工場で警察に見つかってしまいます。

母親と共に逃げている最中に母親はトラックに轢かれ、逃げるように言う母親を何とか助け出そうとしますがそのまま亡くなってしまいます。

叔父のウンチョルが偽造パスポートと母親の遺体を病院に売ったお金を持たせてロ・ギワンをベルギーに逃がします。

 

 

ベルギーに入国したロ・ギワンは難民申請を受けようとしますが、迫害などの理由で母国を逃れてきた北朝鮮出身者であることを証明する物が何一つない状況のため、難民申請の審査はすんなりといきません。
難民と認定されなければ中国に強制送還される身となるロ・ギワンは審査結果を何か月も待たないといけない状況になってしまいました。

何の支援も無く、極寒のブリュッセルに放り出され、空腹を満たす為にゴミ箱を漁りり、寒さを凌ぐために公衆トイレやコインランドリーで寝泊まりし、小銭稼ぎのために空き瓶を回収して必死にひたすら耐え抜いて結果を待つしかありません。

 

 

寒さと飢えに耐えるロ・ギワンに現地の人間から人種差別の激しい暴力を何度も受け、コインランドリーで倒れていたロ・ギワンの母親の形見の財布をマリ(チェ・ソンウン)が盗んでしまいました。

 

 

マリはベルギー国籍の韓国人で元射撃選手だったが、重い病気だった母親が自分には告げずに尊厳死を選んだ事を知り、父親とは不仲になり、生きる希望を無くしてしました。

ドラックに依存し、多額の借金を抱えているマリはお金を借りているベルギー人のシリルに逆らえず、地下の違法賭博場で掛け射撃対決をさせられていました。

 

 

 

 

 

2024年   133分

 

 

韓国題「로기완(ロ・ギワン)」

日本題「ロ・ギワン」

英語題「My Name is Loh Kiwan」

 

 

 


全てタイトルが「ロ・ギワン」ですが、この名前がとても重要で、主人公は北朝鮮から中国に逃亡し、中国の名前で生きる事になってしまいました。

 

 

ベルギーで難民認定申請を行いますが、ロ・ギワンは北朝鮮人だと言う証明が無く、難民とはなかなか証明できず、何か月も認定を貰うまで街をさ迷う事になります。

 

 

 

北朝鮮から逃げて来て中国に隠れていたと偽って難民認定を貰う朝鮮族が多いらしく、ロ・ギワンも北朝鮮の出身と確固たる証明が無ければ、偽ってくる朝鮮系中国人の朝鮮族と判定され、追い返されるそうです。

 

 

中国に帰らされても差別が酷く、借りの名の中国名を使う事になります。

本当の名前「ロ・ギワン」で生きていくのが出来なくなる。。。

 

 

「ロ・ギワン」と言う名前は自分らしく生きていくための大切なものになるんです。

 

だからこそ、名前の「ロ・ギワン」がタイトルになったようです。

 

 

 

 

 

原作はチョ・ヘジン作家(1976年、ソウル生まれ)の長編小説「ロ・ギワンに会った 로기완을 만났다」

 

 

 

「命がけで国境を越え、最愛の人を失い、生きるためだけに見知らぬ国へと流れ着いたここまでの道のり。
それが何の意味もなかったことを受けいれなければならない、氷のように冷たい時間。
彼は、懐かしさだけで故郷を思い出す甘い時間は、自分には今後いっさい訪れないだろうと悟った。」

 

 

英語、ロシア語に翻訳され、韓国の申東曄文学賞を受賞した話題作。

日本語訳は2024年2月に刊行されているようです。

 

本も読んでみたいな。。

 

 

 

 

「太陽の末裔」や「ヴィンチェンツォ」などでクールでスタイリッシュで強いキャラクターのソン・ジュンギと違い、このドラマでは色々な困難に遭い、人も気温も冷たい見知らぬ街で、言葉も分からず、何の援助も無く、一人で放り出され、飢えと寒さに耐え、それでも難民認定を待つ、弱々しく生きる青年を演じてました。

 

 

 

アジア人への人種差別。

公園でたき火を見つけ、温まる事すら許されなく、激しい暴力に耐えながらも、一抹の望みを待ちながら生き延びようと頑張るロ・ギワンの強い心を演じていました。

 

 

 

ソン・ジュンギはこのドラマのオファーを受けて初めは共感できないとお断りしたそうです。

7年後に台本を観て、自分も結婚し、父親となり、守る者も増え、大人になって共感できる部分が見えてきたんでしょうね。

 

 

新しい一面のソン・ジュンギ誕生かな?

 

 

 


マリに出会うまでのギワンは暴力と孤独、飢えと寒さ、難民を待ち受けるさまざまな困難を描いてありましたが、後半につれてロマンス物に急展開。


 


自分には内緒で母親が尊厳死を夫に頼んで亡くなった事実を知り、父親に反抗するマリ。

根は優しいマリですが、薬物にはまり借金を抱え、危ない現地のバーの経営者に脅されて闇賭博をやっているマリは逃げ出したくても、逃げ出せないまま、生きる希望も無くしていた所に逆境にも負けないギワンに出会って、自分も変わりたいと思うようになってきました。

 

 

 

孤独な二人。出会い方は最悪でも次第に惹かれ合っていく二人。

 

 

急にそんなに愛になるのかな?

映画だからその辺が丁寧には描き切れないので、何でそこまで愛し合ったのか?って分からない感情が出てきますけど。

 

 

 

マリのためにギワンはますます困難な現状になっていくのに、何故にマリに?

難民指定を受けないと恋愛している場合じゃなくなるぞ。。。
 

 

 

マリがバーの店主とトラブルを起こし、他国に逃げる事となりますが、マリは正式なベルギー市民なので逃げて行けますが、ギワンは難民指定もまだな幽霊のような存在。

 

 

マリを逃がして自分は残る事しかできません。

 

ま、その1年後かにギワンはついに正式に難民指定を受けられたようで、マリの後を追って行きますけどね。

 

ハッピーエンドで良かったですけど、前半の過酷な生活を送るギワンの存在感がマリによって薄まった感があるな。。。

 

 

焦点ズレました。。って感じでした。

 

 

 

最後の幸せそうなギワンの笑顔が無ければ辛いだけの映画になっていたので必要だったとは思いますが。。。

 

 

苦しい現状でも愛があれば人は生きていけるって事でしょうか?

 

 

 

難民とか、生活に困難している人とか、本当に手を指しのべなければいけない人達に、真の援助ってのはこんなにも大変で過酷なんでしょうか?

 

もっと簡単に物事を進めるべきではないのかな?

 

 

審査が出るまで一人で勝手に生きなさい。何も手助けはしません。生き延びた人だけが援助を貰えるんです。

 

って、これが現状なんですかね?

 

 

 

北朝鮮から脱北してきた女性と母親の話を見た事がありますが、現実にブローカーに中国まで連れて行かれ、そこから母親を置いたまま、娘さんが外の国へ行き、何年も過ごして、やっと韓国へ入国。

 

 

その数年後に母親も似たようなルートを巡ってから韓国へ入国したそうですが、やはり過酷な生活を送っていたそうです。

韓国に無事に入ってもスパイの疑いをもたれて差別も受ける事もあるとか。

 

 

 

それでも今は韓国で親子で暮らして、家庭も持って旅行にも行けて、自由に暮らせるようになっただけ、祖国北朝鮮にいた時よりも人間らしく生きていると語っていました。

 

 

韓国には3万人を超える脱北者が暮らしているそうです。

 

 

 

たまたま、生まれた国は違っただけで、こんなに人生が変わるって、自分がそうだったら生きる希望を無くすな。

 

 

逃げても地獄、残っても地獄。

 

 

 

映画の前半のギワンは本当に観ているだけで辛かったです。

 

 

 

特にギワンを助けようとしてトラックに轢かれて亡くなった母親の道路に溜まった血をギワンが洗い流すのですが、排水溝に血が流れていき、ギワンは必死に流れないように手で押さえ、泣くシーンは辛かったですね。

 

 

息子とささやかな暮らしが出来るだけで良いと思っていた母親はそんな小さな願いすら叶わずに、まるで国に捨てられるように排水溝に流れていく母親の血。


 

親が付けてくれた「ロ・ギワン」と言う名を使えない。

そんな事があっても良いのでしょうか?

 

 

最低限の人間の尊厳を守って貰えない現状を描いてある良い映画でした。

これはドラマで表現して欲しかったな。。

 

 

ちょっと分かりにくい部分が多かったので、良い俳優さん達が揃っていたのに時間的にもったいなかったですね。

 

133分という短い時間では描き切れなかった感がありました。