「チョコレートドーナツ」
監督:トラヴィス・ファイン
出演:アラン・カミング、ギャレッド・ディラハント、アイザック・レイヴァ、フランシス・フィッシャー、グレッグ・ヘンリー、他
<あらすじ>
1979年カリフォルニア、歌手を目指しているショーダンサーのルディと弁護士のポールはゲイカップル。母親に見捨てられたダウン症の少年マルコとであった二人は彼を保護し、一緒に暮らすうちに家族のような愛情が芽生えていく。しかし、ルディとポールがゲイカップルだということで法律と偏見に阻まれ、マルコと引き離されてしまう。
<感想>
海外ではどう宣伝されていたか知らないのですが、日本では今作は「感動作」として売り出されていました。しかし私は全く泣けず、むしろ腹立たしくて叫びたくなるくらいでした。こんな理不尽な話が実際にあったなんて…。
物語の中盤で、ルディとポールが弁護士から「ゲイカップルに育てられた子供は価値観がおかしくなる」と侮辱されるシーンに一番腹が立ちました。彼らが引き取ろうとしている少年ルディの母親はドラッグ中毒。子供をアパートの廊下に放置し、自分は部屋に男を連れ込むという、母親としての自覚がゼロどころかむしろマイナスなんじゃないかというひどい女です。
対するルディとポールは同性カップルではあるものの、血のつながりの全くないマルコに120%の愛情をかけて接します。法律的に難しくても本気でマルコを自分たちの子供にしたいと願い、どんなことがあってもマルコを育てるという決意に溢れていました。マルコが心の底から笑っているのを見てルディとポールも幸せを感じる、そんな場面がいくつもありました。
「ドラッグ中毒の母親の下で引き続き育てられるか」それとも、「ルディとポールの子供として育てられるか」…
「社会のルール」は3人に対し、あまりに残酷な決断を出します。終盤、場内にはすすり泣く声が多く聞こえましたが、私は1人、怒りのあまり呆然としていたのを覚えています。
個人的にはもう2度と観たくない作品です。しかし色々と考えさせられる映画なので、非常にオススメです。
ちなみにルディ役のアラン・カミングは自身がバイセクシュアルであることを公表しており、8年前に同性婚もしているため、本作での演技がとてつもない説得力を持っていました。母性愛に満ち溢れた目がとても素敵でした。