日本未公開の作品ながら、カンフー映画ファンのなかではカルト的人気をはくしているカンフーアクション作品。

訳あって旅生活を送っているジンとシャオ・ロン親子。
そんな中で、狩りの帰り道にジンは自分達を追ってきた白衣の男フォーの姿を見かける。

かつて殺し屋として暗躍していたジンは組織の非道さに反逆し、仲間たちと共に組織での権力の象徴となる『金の札』を盗み出し、まだ子供だったシャオ・ロンを連れ逃亡生活を送っていたのだった。

もはや逃げることが叶わないと覚悟したジンは持っていた金の札をシャオ・ロンに託すと、当て身を当ててシャオ・ロンを気絶させ、自らフォーの前に立ちはだかる。

奮闘するジンであったが最強の殺し屋であるフォーの前にかなわず、気がついたシャオ・ロンの目の前で蹴り殺されてしまう。
悠々と去っていくフォーの前にカンフーのできないシャオ・ロンはただ悲しみと怒りをにじませることしかできなかった。

父を失ったシャオ・ロンは叔父であるルーに引き取られ、彼が在籍する京劇一座で軽業師として修行しつつ共に興行に帯同し生活することとなる。

座長の娘でいとこになるシャオ・リンと共に稽古に励む毎日のシャオ・ロン。
彼らはたどり着いた街で京劇芝居を演じていたが、そこでシャオ・ロンは観客の中にフォーの姿を見かける。
演舞の最中に剣を投げつけフォーに掴みかかろうとするが、ルーたちによって止められてしまう。

フォーたちが立ち去ったあと、その夜シャオ・ロンは彼こそが父を殺した犯人だとルーたちに訴えるのだが、未だ未熟な彼にルーは『今は耐えろ』と言うしかなかった。

数日後。
別の村へと移動したシャオ・ロンたち一座であったが、そこでシャオ・ロンはシャオ・リンに言い寄ろうとする好色なオヤジとトラブルになる。
近所でも有数の富豪と吹聴する男に対して、腕っぷしで撃退し、シャオ・リンを守りドヤ顔なシャオ・ロン。

さらには彼のもとに『チョロ公』と名乗る青年が現れる。
彼に言葉巧みにを誘い出されたシャオ・ロンは持っていた『金の札』を盗まれてしまう。
金の札が盗まれてしまったことをルーに相談したシャオ・ロンだが、その札は殺し屋組織たちの権力の印であり、これを所持するものが組織のボスとして認められる代物であった。

フォーもまた組織のボスの命令でこの金の札を探していたのであった。

ルーはシャオ・ロンに金の札を取り戻すよう言い、一座から勘当してしまう。

チョロ公の行方を追うシャオ・ロンだが、既に行方をくらました彼を探すのは困難を極めていた。
そんな中で、彼は一座の周りで易経をしていた爺さんに再会。
実は拳法の達人であった爺さんは弟子であったチョロ公の所業を謝罪し、シャオ・ロンの境遇を知り、カンフーの修行をつける。
修行を積むなかで次第に腕を上げていくシャオ・ロン。
しかしフォーの魔の手は確実に迫っていた。

まずフォーはシャオ・ロンから金の札を盗みとったチョロ公をみつける。
抵抗するチョロ公を蹴り殺したフォーは金の札を奪取するとボスより命令をうけていた組織を裏切った者たちへの粛清を始める。

その標的となったのはシャオ・ロンがいた京劇一座。実はルーと座長はジンとともにかつて組織に所属していた人間であり、ジンと同様に組織を裏切って抜け出していたのである。

フォーは一座に押し入ると座長を蹴り殺し、残りの裏切り者たちの行方を追う。

命の危険を悟ったルーは一座をたたみ、逆に組織のボスに奇襲をかけ、死闘の末にこれを倒す。
しかしそこにフォーが現れる。
金の札をもつフォーはボスが倒されたことにより、自分が組織を乗っ取ろうと画策し始める。

フォーの野心を知ったルーはこれを阻止しようと戦いを挑むのだが、フォーの鬼神のごとき強さにかなうはずもなく反対に殺されてしまうのだった。

父親を殺されたシャオ・リン、そして父に続き恩人たちを次々と殺されたシャオ・ロンはフォーへの復讐を決意。
カンフーでは絶対的不利な状況から二人は様々な罠を張り巡らした穀物工場にフォーを誘い出し、一騎打ちに挑む。
自身の野心の最後の障害となる二人にフォーも決着をつけるべく死闘の場所へと現れる。

果たして二人は宿敵を相手に復讐を遂げることができるのか…


スーパーキッカー、カサノヴァ・ウォンの代表作ともいえるカンフー作品。

ジャッキー・チェンの『酔拳』がヒットして日本でもブルース・リー以来のカンフー映画ブームが起こった80年代初期。
その人気にあやかるかのように王道のカンフーアクション作品が一気に日本でも流れ込んできた。

リーの時代のカンフー作品と違い、ジャッキーの拳シリーズに代表される作品群はその膨大な殺陣アクションの構築と演者のアクションスキルの高さが作品の評価の重要なポイントとなり、一般的な劇場公開がない作品においてもそのアクションレベルは高いものが多い。

本作もそうした評価を受けている作品のひとつである。
一般的な劇場公開こそなかったものの、地上波のゴールデンタイムや深夜の映画放送で放送されるやいなや、話題を呼び、カンフー映画ファンのなかでも特に知名度の高い作品である。

本作の主演を務めたのはピーター・チャン。
当時のジャッキー作品の影響を多大に受けたかのような風貌と役作りであるが、その身体能力は本物でとみにそのアクロバティックなアクションはその他凡百のアクション俳優と比べてもかなりレベルが高いものである。

そんな高度なアクションスキルがありながらも彼がその後ブレイクすることはなかったのだが、本作で見せている当時のジャッキー作品ライクなカンフーアクションは今見てもかなりハイレベルなものといえる。

そんな主人公のポテンシャルすら霞むインパクトをみせたのが、本作でラスボスとして君臨しているカサノヴァ・ウォンの存在である。

カサノヴァ・ウォンは朝鮮出身の武術教官出身の俳優であり、あのサモハンに才能を見込まれスカウトされた逸材。

日本ではあまり馴染みのないスターであるが、テコンドー出身のその足技の凄まじさは『人間発電所』の異名をもち、驚異的なスピードとスタミナから繰り出される回し蹴りのコンビネーションや圧巻の超飛躍からのニールキックは目の肥えたアクションファンからみても圧巻ともいえる迫力を持っている。

本作ではそのポテンシャルが最大限発揮されたかのような猛然とした足技の数々をみせており、主人公をはじめ、普段は悪役のロン・フェイやチェン・ウェイロー相手にバッタバッタと蹴りまくっている。
その強さ足るやまともに戦っては勝てないほどで、追い詰められた主人公たちがウォン相手に卑劣な手を使ってでも戦い抜くクライマックスの死闘は、これまでに数えるほどしかテレビでも放映されていないにも関わらず、筆者の脳裏にハッキリと刻み込まれているほどのインパクトであった。

ストーリーとしては当時のカンフー作品の王道である復讐ものを基本通りにトレースしたような内容なので、目新しさはハッキリいってない。

しかしそれを払拭するほどの格闘アクションのレベルの高さに圧倒されることだろう。
クライマックスでの工場内でのカサノヴァ・ウォン対ピーター・チャン&ホワ・リンの死闘はまるでジャッキーの『ドラゴンロード』のクライマックスを彷彿させる仕上がりで最大の見処。

特にカサノヴァ・ウォンの鬼神のごとき足技コンビネーションの数々や後宙からの背中へのドロップキックなど圧倒的な足技テクニックは堪能していただきたいほか、そんな無双の敵を倒すまさかの手段にも注目である。

ソフト化されていないレア作品ではあるが動画サイトには紹介されている作品なので、興味のあるかたは鑑賞していただきたい

評価…★★★★
(とにかくカサノヴァ・ウォンの足技のスゴさに圧巻されること間違いなし)










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