日本でも空前の『キョンシー』ブームを産み出したアクションホラーコメディシリーズ第1弾。

100年以上前の中国のある町。

町の道士ガウは大富豪のヤンから父親の墓の改修依頼をうける。
弟子であるチュウとモンチョイ、をつれて、辺りの墓にも献花をし、準備を整えてからやってきた改修日当日。
その墓を掘り起こしてみると20年以上も前に埋葬したにも関わらず、父親の遺体はほとんど腐敗が進んでいなかった。

かつてヤンの父親は生前にこの土地を強引なやり口で奪い取っており、持ち主であった占い師は彼の死後怨みから間違った方法で埋葬され成仏できずにいた。

遺体のキョンシー化を危険視するガウはヤンに直ちに火葬を勧めるのだが、生前に父は火が嫌いだったという理由から拒否されてしまい、仕方なくガウは自身の屋敷へ運び、棺から出られないようにするために封印の儀式を施すのだった。

ガウに言われて他の墓に花を手向けて供養をしていたチョウとモンチョイは屋敷に戻り、ヤンの父親が棺から出てこないように見張りを命じられる。
しかし二人のミスによって封印のための黒縄が切れてしまい、中から完全にキョンシーと化したヤンの父親が復活。
キョンシーは逃げ出し、ヤンの屋敷へと乱入するとあわてふためくヤンに襲いかかり、殺害して何処へと姿を消してしまう。

翌朝。
騒ぎを聞き付けたガウたちはヤンの屋敷へと駆けつけるとヤンの致命傷となった傷口からガウは逃げ出したキョンシーの仕業と気づくのだが、事件の担当となった保安隊長ウェイのムチャクチャな推理によりガウは誤認逮捕されてしまう。

連行される直前、ガウはチュウを呼び寄せると今夜収容所に自分の法術道具を持ってくるよう命令し、モンチョイにはヤン家に残った最後の一人となった娘ティンティンを先代キョンシーから守るようにと命じられる。

その夜、収容所に忍び込んだチュウはガウの法術道具を持ってきたが、同時に牢の近くに安置されていたヤンの遺体がキョンシーとなって復活。
ガウは即席のお札を作り出し、チュウに額に張り付けて動きを止めるよう命令。
キョンシー化したヤンの暴走に手をやきながらも何とか動きを止めることに成功するが、騒ぎを聞き付けたウェイがやって来ると、お札を貼っているヤンの遺体からうっかり御札を剥がしてしまい、ふたたび暴れはじめウェイに襲いかってくる。

牢から何とか抜け出したガウは、キョンシーの生態を見抜き、チュウとのコンビでようやくヤンの遺体を倒すことに成功するのだった

一方、ヤンの屋敷でティンティンを警護するモンチョイの前にヤンを殺害した先代キョンシーが出現。
ティンティンを守ろうとキョンシーの襲撃に立ち向かうモンチョイであったが、キョンシーの怪力と毒の爪で腕を掴まれ負傷してしまう。
ティンティンにも襲いかかろうとしたその時、留置場から戻ってきたガウ達が参戦し、キョンシーの動きを封じて撃退するが、仕留めることができず逃げられてしまう。

翌日。
徐々に傷口からキョンシー化が進みつつあるモンチョイを救うため、ガウは特効薬であるもち米を使用するが、折しものキョンシー騒ぎで街のもち米は飛ぶように売れはじめ、ガウの家ももち米が不足し始める。ガウはチュウに街でもち米を仕入れてくるようお使いを言いつける。

ガウの依頼をうけ街にもち米を買いに行ったチュウであったが、街の米問屋は噂を聞きつけてもち米のなかによく似た粟を混入させてチュウに引き渡す。

その帰り。女性の悲鳴に気づいたチュウは悪戯しようとしていた男から娘を助け出す。
麗しいくらいに妖艶な娘に牽かれたチュウは誘われるがままに彼女の屋敷へと入り、一夜を共にしてしまう。
実はこの女性は先の埋葬墓地での供養の際にチュウの優しさに好意を持った女幽霊ヨッであった。
彼女は優しい彼をものにしようと妖術を使い、チュウを虜にしようとしていたのである。

夜が明けてフラフラになって帰ってきたチュウにガウは彼に何者かが取り憑いていることを見抜くと彼が疲れはてて眠りについたとこを見計らいその胸に魔除けの呪文をかき写す。

その頃モンチョイは徐々にキョンシー化が進み、爪が伸び始め、顔色が悪くなっていた。
その時ガウを訪ねてウェイがやってくる。
キョンシーになるのがバレたら殺されると考えたモンチョイは爪を切り、化粧をして必死でウェイとガウの目を誤魔化す。
町中でキョンシーによる被害者が増えていることからウェイはガウにキョンシー退治を依頼するのだが、モンチョイの治療やチュウの監視に忙しいガウは自分達である程度進めてくれと断りをいれる。
仕方なくウェイは部下達をつれてキョンシーが潜みそうな薄暗い洞穴などを探索しに行くが怖がる部下のために全く捜査は進まなかった。

爆睡から目が覚めたチュウは家に帰るとガウに告げ帰るのだが、怪しむガウはひそかに彼のあとをつけていく。
すると案の定、ヨッのもとへと向かったチュウにガウは法術で彼の目を覚まさせようとする。
恋路を邪魔されたヨッは本来の醜い姿を現し、ガウに襲いかかるのだが、法術によって追い払われてしまうのだった。

チュウはようやく現実に戻るのだが、めくるめく女幽霊との夜を思いだし、反省の様子をみせていなかった。
ガウはまたチュウを奪いにヨッがやって来るとふみ、家のなかでチュウを縛り付け、彼女を誘き出そうとする。

その夜。ガウの思惑通りヨッがチュウを奪いにやってくる。
縛り付けられているチュウを誘惑するものの動けない彼は隣で寝ていたモンチョイに縄をほどくように頼むのだが、何ともち米に不純物が混ざっていたため効果がなかった彼はキョンシーになりかけ、チュウに襲いかかろうとする。
妖術を駆使して暴れるヨッと戦うガウ、その中でヨッはモンチョイに襲われるチュウを救おうとするなど混沌とする戦いの中でようやくヨッはガウによって追い詰められるが、幽霊と人間は一緒にはなれないという言葉にヨッは悲しげにそれを受け入れチュウの前から立ち去るのだった。

キョンシーになりかけたモンチョイはガウの拷問的な治療によってキョンシー化からようやく完治する。
しかしその間に町中では先代キョンシーによる犠牲者が続出していた。
事の重大さを感じたガウは犠牲者の火葬をウェイに命じると、命を懸けてキョンシーとの戦いに挑むことを決意する。

ティンティンに執着する先代キョンシーの襲撃に備え、彼女とチュウたちはガウの教えにしたがい庭先にもち米を撒き備えるのだが、そこに封印の術を打ち破ってさらに凶暴にパワーアップした先代キョンシーが出現。籠城して待ち受けるのだが、キョンシーは施錠し忘れた天窓から屋内に侵入し、暴れまわる。

ガウは法術を駆使してチュウ達と共に先代キョンシーに立ち向かうのだが、凶暴化の末に法術も宝剣すらも通じなくなった規格外の魔物を相手に果たして討ち果たすことができるのか…


香港ホラーのアイコンとして日本でもブームを起こしたキョンシー映画シリーズ第一弾。

80年代後半からジャッキー映画大ブレイクの波にのってブルース・リー以来となる香港映画ブームが再到来した。
その中でそのコミカルな動きとキャラクター性がうけ、日本でも大流行となったのが『キョンシー』である。

そしてそのブレイクのきっかけとなったのが本作であり、その人気ぶりは台湾製作の亜流作品『幽玄道士』をはじめとする作品群まで軒並みに日本でも公開、テレビ放映されるまでに至っていた。
そんな『霊幻道士』シリーズは現在でもナンバリングシリーズ化されリリースされており、本作で弟子役であったチン・シウホウが道士となって活躍し続けている。

本作の監督を務めたのは、香港アクション界ではジャッキーと双璧する重鎮サモハン。
元々は彼のホラーアクション企画ものとして『妖術秘伝・鬼打鬼』、『人嚇鬼』、『人嚇人』の三部作が製作されそのヒットをもとに作られたのが『霊幻道士』であった。
後にサモハンホラー三部作と呼ばれる三作品は今のキョンシーの原型となるゾンビが登場して、サモハンたちとコミカルながら激しい格闘アクションの絡みをみせてくれている。

その後作られた本作はその設定を活かしつつ、サモハンは完全プロデュースにまわり、よりエンタメ性を深めてコミカルさを追加させたものである。

本作の魅力の核を担うのはコミカルだけど怖いキョンシーの造形と脈々と受け継がれているカンフーアクションとの融合。
第一弾の本作ではあのピョンピョン跳ねて進むコミカルな動きとは裏腹に意外に残酷なホラー描写も多く、キョンシー自体も恐怖のモンスターとして描かれている。

そのモンスターを演じたのがサモハンスタントチームの名バイプレーヤー、ユン・ワー。
ブルース・リーのダブルを演じるなど昔からそのスタント能力には定評があったが、やはり長らくサモハンスタントチームで高いポテンシャルをみせ続け、ようやく本作で主役として抜擢されたラム・チェンインと共にバシバシと決まる本作品のカンフーアクションの中核を担っている。

ショウブラザーズ最後の若手としてデビューし、その後活躍の場をゴールデンハーベストに移したチン・シウホウもまた躍動感溢れるアクションで、レベルの高い格闘アクションをみせており、コメディアンとして名を馳せるホイ三兄弟の次男、リッキー・ホイもいつものコミカルさを出しつつ、危険な落下スタントにチャレンジするなどアクションに妥協ないサモハンの要望に応え躍動している。

ホラーコメディとしての面白みはリッキーのほかに嫌味ながらすっとぼけた魅力をだす、ビリー・ラウがいい味をだしており、キョンシー相手にみせるドタバタぶりは一見の価値あり。

また当時は珍しくコメディのほかにもエロチックさもあり、意外にもファミリー向けともいいがたいところも。
妖艶なセミヌードをみせる女幽霊役のポーリン・ウォンなどはこれ以降も同じようなエロチックな女幽霊などで活躍していて、ヒロインであるムーン・リーを差し置いてファンも多いところである。

現在も続くキョンシーブームの起爆剤となった本作品。
意外に大人向けな内容と香港テイストに溢れたエンタメアクションとして今後も語り継がれることは間違いない記念碑作品といえる


評価…★★★★
(洪家班のハイレベルな格闘アクションと意外にホラー色がまだ強かった本作。見直すと新たな発見も多い味ある作品)


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