バイオレンス満載のアクションとシュールなコメディが話題を呼んでいるバディアクション作品。

コンビニエンスストアのバイト面接にやってきたまひろ。
高圧的な店長の面接を前に突然彼女は襲いかかってくる店員たちを獣のようなスピードで次々と葬っていった。

そんな妄想に耽っていたまひろは面接中にも関わらず注意してきた店長の関節をとり、痛め付けてしまう。
それがきっかけでまひろは面接を落とされてしまうのだった。

一方、ちさとは痛め付けて拉致していた標的の家にいた。
程なくしてバイト面接に落ちたまひろがそこに合流。死体処理の準備として着替えるまひろを横目にちさとはバイトがあるからと標的を撃ち殺してまひろにその後始末を託し、自分はバイト先へ向かっていく。

二人は殺し屋を生業としていた。

バイト先に呼び出されたちさとは、先輩の指導を受けながら、喫茶店業務をこなしていくのだが、やってきた鬱陶しい客や口うるさい先輩の言動にイライラが募り、遂にキレてしまった彼女は客をぶん殴り、先輩の首を絞め落としてしまう。
結果、ちさとはバイトをクビになってしまうのだった。

ちさとが家に帰るとまひろが夕食を作っていた。
二人は夕食を食べながら社会人として働くことの難しさや殺しの仕事への考え方の違いを話し合い、お互いの蟠りを解消していった。


そんな彼女らは数週間前。
とある殺しの依頼を完遂したあと、紹介人である須佐野と打ち合わせをしていた。
女子高生であったちさととまひろは高校卒業を前に組織からの庇護がなくなることを告げられ、これからは自立して生活するようにと伝えられる。 
さらにちさととまひろは一緒にルームシェアするようにと告げられる。

突然社会人としての表の顔を持つように言われ、なおかつコンビで一緒に生活することにとまどいながらも何とか暮らしていく二人。

そんな彼女らの住む街では凶暴なヤクザである浜岡が我が物顔で街の中を蹂躙していた。
そんな彼の部下で薬物を売っていた男が殺されたと知り、浜岡は殺害された現場に駆けつける。
その男を殺したのがちさとたちであった。

頭が切れる浜岡の娘ひまりは無駄のない殺害方法に感心し、その分析力を気に入った浜岡は息子のかずきではなく、ひまりに犯人捜しを任せる

そのころちさととまひろの共同生活は、コミュ障なまひろのバイトが決まらなかったり、二人の喧嘩のせいで家電が壊れてしまったりとトラブル続き。二人の仲も微妙なままであった。

一方、ひまりは浜岡の用心棒である渡部と共に殺し屋の正体を探り始める。

新たに殺しの依頼がきたことにちさとは前のめりでこれを受けるが、精神的にダウンしているまひろはそれに乗らず、仕方なくちさとは一人で依頼を遂行しようとする。
首尾よく標的のアパートに忍び込むちさとであったがそこで待っていたのはひまりと渡部であった。

渡部の強烈な一撃をうけて意識を失うちさと。
彼女は二人に銃を奪われてしまう。
何とか気がついたちさとは標的を仕止めることはできたものの、二人によって邪魔になった標的の人間以外も殺害されてしまっていた…

現在。
バイトの面接をすっぽかしてトレーニングしていたまひろ。自信がない彼女はちさとと一緒にバイトがしたいと言う。

そんな二人が選んだアルバイト先はメイドカフェ。先輩メイドの指導をうけ、何とか接客をするちさとに対して、その様子にドン引きだったまひろはしばらく見学をする羽目となる。

ちさとが社会に溶け込もうと必死に振る舞う姿をみて、ますます自信を失くしたまひろは盛り上がる待機場所の側からそっと逃げ出すように帰ってしまう。
バイトを終えて帰ってきたちさとは途中で黙って帰ったまひろに理由を問い詰めるが、まひろは自分のためにならないバイトはしたくないと不満をぶつけ、二人の仲はかつてないほどに険悪なものとなってしまうのだった。

二人に共同生活をすすめた仲介人の須佐野もその険悪な雰囲気に気付き、次の殺しの仕事はまひろ一人で引き受けることになる。

ある日、浜岡が息子のかずきを連れてちさとがバイトをするメイドカフェへとやってくる。
浜岡は自分達の次のシノギの手段としてメイドカフェの裏経営を狙っていた。
その世界観を体感するためにやってきたのである。

ちさとの先輩メイドが浜岡たちの接客にあたり、独特のメイドの接客に浜岡たちも楽しく付き合っているかに見えたが、突然浜岡はヤクザを馬鹿にしたとしてブチキレ、メイドの首を絞めたかと思うと、全員拉致するといい、かずきに命令してメイドたちを壁際に集めさせる。
銃を手にメイドたちと一緒にいたちさとにも銃を突きつけるかずきであったが、一瞬の隙をついたちさとが銃を奪いとり、かずきを射殺。
さらに返す刀で浜岡も一瞬にして撃ち殺す。

ちさとはスタッフ全員を巻き込まないように逃がすと組織の清掃係を依頼して死体の後始末を任せるとカフェをそっと立ち去っていく。

数時間後、二人の死体を発見したひまりは死体に残る香水から犯人がちさとであることを悟る

家に帰ってきたちさとにまひろはこれまでのことを詫び、自分の性格的な障害のこと、それでもちさとと付き合っていきたいことを告白。
そんなまひろにちさともわだかまりを解いて、仲直りする。

その時ちさとの携帯に連絡が。
相手はひまりからであった。
父と兄を殺した仇としてちさとを挑発し、煽るひまりに対してその挑戦を半ギレしてうけるちさと。
電話を切るとこれからひまりたちヤクザの連中と殺し合いになるというちさとは仲直りしたまひろに協力を求める。
そしてまひろもまたちさとに協力することを約束すると、仲直りの印のショートケーキを冷蔵庫に保管しつつ、武器を整え決戦の地へと自転車を走らせる。

指定してきた廃墟ビルにひまりによって集められたヤクザや殺し屋たちが待ち受けるなか、二人は息のあったコンビネーションで次々と敵の屍のやまを築き上げていくのだが、そんなまひろには最強の格闘術を操る渡部が立ちはだかり、戦いの最中でサブマシンガンをどこかに置いてきてしまったちさとの前に猛り狂うひまりが襲いかかる。

仇敵を前に二人は最後の戦いに挑むのだが…


ゆるくシュールな空気感と激しいアクションとのギャップが注目を集めたアクション作品。

長らく邦画アクション界において問題となっている次世代のアクション俳優の台頭。
期待をされていた武田梨奈や清野菜名が少しずつアクションとしての見せ場よりも演技派への模索を探ろうとするなかで、生粋のアクション女優としての席は未だに候補には上がってもなかなかその枠は確定しない。

そんな中で最近、格闘アクション好きの間で話題にあがるのがこの作品である。

本作の主演を務めたのはアイドルダンスユニット出身の女優高石あかりとスタントパフォーマーの伊澤彩織。
本作が本格主演となる伊澤に至っては本作の評価をうけ、日本映画批評家大賞において新人女優賞を獲得した。

女子高生殺し屋がその素性をカモフラージュするため一般社会で普通の暮らしを強いられるという流れの設定はある種人気原作『ザ・ファブル』にも通じるところがあるが、本作においては二人のキャラクターを軸にしていることによってより社会に馴染めない社会不適合ぶりが際立って描かれていて、それでもなおゆるゆると生活している様子がリアルなところ。
そこに殺し屋の裏世界の非現実さが合間にはいることでただダラダラな感じにはならないギャップが面白い。

アクションにおいては『ブシドーマン』で日本アクションアワードにも輝いた園村健介のもと、ゆるゆるな本編のストーリー展開とは真逆なスリリングでハイレベルなアクションを展開。
高石の堂にいったガンアクションもさることながら、やはり目を引くのは格闘アクション面を一手に担った伊澤彩織の存在である。

冒頭シーンからみせる変幻自在な攻撃とそのスピード感は近年ハリウッドでも注目されるインドネシアのシラットにも通じるものがあり、そこでまずは伊澤のポテンシャルの高さを確認できる。
普段はナマケモノくらい動くことがないだらけた感じの伊澤が殺しのアクションの時は俊敏な肉食獣のように覚醒するのはそのギャップもあって引き込まれるものがある。

そして最大の見せ場となるのがクライマックスにおける二人の戦い。
高石あかりのガンアクションでの無双ぶりは伊澤とのコンビネーションも相まって見応えあるものとなっている。
そして格闘シーンにおいては伊澤に相対する最強の敵として谷垣健治のもとでもスタントマンを務めていた邦画界アクション俳優の雄、三元雅芸が出演。
伊澤とのハイスピードの一騎打ちは息つく暇もないほどの緊迫感とアグレッシブさに溢れており、本作のハイレベルなアクションを象徴するものとなっている。

監督がVシネマ出身ということもあり、クセの強い悪役のひとりとしてVシネ俳優の本宮泰風がでていて、メイドカフェの萌え仕草をみせるなどコミカルなインパクトもしっかりしており、中弛みの多い邦画アクション作品のなかでは諄くない感じ。

高評価をうけ、続編が次々と製作されている他、テレビドラマ化も計画されているなど新世代の邦画アクションの台風の目にもなりうる可能性を秘めた本作。
ゆるいコメディとハイレベルかつハイスピードな格闘アクションのギャップは続編以降も十分に期待を持たせることは間違いないだろう。

個人的には伊澤彩織の今後のアクション女優としての完全覚醒を期待しつつシリーズの展開にも期待したい。


評価…★★★★
(久々に期待のアクション女優伊澤彩織。噂に違わぬポテンシャルの高さは文句無しの合格点でございます)