ド派手なアクションとシニカルなコメディが相まって人気を博した刑事ドラマの映画化シリーズ最新作。

警察署を定年退職し、ニュージーランドへ渡って探偵職をしていた横浜署きっての問題『元』刑事だったタカこと鷹山敏樹とユージこと大下勇次。
彼らはニュージーランドをおわれて国外退去となり古巣である横浜に8年ぶりに帰ってきていた。

港に車を止め、過去の話に盛り上がる二人。その時鷹山はふとみた車に乗り込もうとする女性に引き込まれるように見てしまう。
女は鷹山の姿に気づくとそれを隠すかのように足早に車内へと潜り込んで走り去っていく。

女をのせた車は港の別場所に止まると中から男が現れ、アタッシュケースを受けとると女の車に乗り込む。それと同時にケースを渡した男は男が連れてきた集団に捕らわれると銃撃を受けさらにその車は爆発炎上するのだった。

翌朝、その事件を新聞で知った鷹山は探偵事務所の準備におわれる大下をよそに出掛けていく。行く先はかつて横浜で鷹山たちと抗争を繰り広げた中国人マフィア劉飛龍(フェイロン)のバー。
久しぶりに顔を合わせた二人は探りあいながら昨晩の事件と港で見かけた女について追及するが劉は軽くそれをはぐらかすのだった。

近年、横浜署管轄では重要人物の殺人事件が多発しており、その被害者はいずれも横浜のカジノ誘致に関わる人間であった。
課長である町田は部下たちの報告からこの事件にベンチャー企業の『ハイドニック』が関わっていることは明白ながらその社長である海道巧は政財界に繋がりがあり、警察にも影響力を持っているため手が出せない状況にあった。

鷹山も昔の刑事仲間でいまでは情報屋を営むナカさんからその情報を知り、さらにその海道はかつて二人が射殺した暴力団『銀星会』の組長前尾の息子であることを知る。
早速鷹山は彼がいるというクレー射撃場に赴き、挨拶代わりに海道に名乗って挑発して揺さぶりをかけていく。

一方、事務所にはバイクにのった若い女性が訪ねてきていた。
長崎からやってきたというその女性は永峰彩夏と名乗り、生まれてすぐ生き別れとなった母を探してほしいと大下に依頼してくる。
形見という翡翠の指輪を担保に依頼料金を得ようと大下と彩夏は中華街にある旧知の宝石店で鑑定をしてもらうのだが、その直後に中国マフィアの部下たちに襲われる。
激しい追撃戦の末に何とか彼らを振り切った二人。

帰ってきた鷹山は彩夏の姿をみて驚くが、依頼の内容を聞き納得。
彩夏がいう母親の永峰夏子には実は二人とも同じ時期に付き合っていた過去があり、彼らが本気で愛した女性であった。
父親の顔は知らないという彩夏に二人とも彩夏が自分達の娘なのでは?という疑念を持ちながら、彩夏のためにその依頼を改めて引き受け、彩夏も二人のもとで生活することとなる

町田のもとを訪ねた二人は、現在起こっている連続殺人事件のことから犠牲者はカジノ誘致に関わるハイドニック社の対抗勢力だったことを聞きつけ、海道が主催するカジノ誘致決起会に潜入。するとそこには鷹山が気にかけていた女性の姿も。
接触を図ろうとする二人にフェイロンが立ち塞がる。女性はフェイロンのビジネスパートナーであるステラ・リーであるとフェイロンから説明され、鷹山たちが追っていた永峰夏子とは別人だと言われるが、それでも鷹山の勘は疑いを持っていた。

さらに二人の前には海道が現れ、海道は自分の親を殺した刑事であると参加者の前に暴露するのだが、反対に二人も海道を挑発して痛み分けのような感じにするのだった。

その一方で彩夏の親である永峰夏子の消息を探るため、彼女が歌っていたクラブ跡地に三人はやってくる。
懐かしげにステージにたって歌を歌う彩夏の姿に鷹山と大下は昔の夏子の姿を重ね合わせ、その歌と思い出にひたるのだった。

そんな中SNS上に夏子の名前を語る人物がいることが判明。その人物は自身の歌手活動のためにスポンサーを求めるとあった。
彩夏の発案でその人物にスポンサー依頼のDMを送るとほどなくして返信があり、待ち合わせとしてあのクラブ跡地に指定される。

途中、町田の部下の尾行に気付き同行することとなった鷹山と共にクラブ跡地に向かった彩夏と大下。
そこに待っていたのは二人の刑事時代の仲間であった薫だった。
数年前に結婚するといって行方不明になったはずの彼女がなぜ夏子を名乗っていたのか二人が呆れかえるのもつかの間、そこに海道の雇っていた私設傭兵たちが二人の命を狙って強襲してくる。

格闘戦を挑む二人だが、全くびくともしない傭兵のリーダーに次第に圧される鷹山たち。
そこに町田の部下たちが応援にかけつけると派手な銃撃戦が繰り広げられ、何とか傭兵たちを撃退することに成功するのだが、それは海道が本気でタカやユージたちを殺そうとした意味合いであった。

薫と共に連行された鷹山は取調室にやってきた町田に海道たちの狙いを探るように指示をいれる。

逃げ延びた大下らも腕を負傷しながらもアジトへ戻ると、治療する彩夏にむけて危険すぎるからという理由で彩夏を長崎に戻そうとするのだが、元来の気の強さも相まって大下たちと喧嘩分かれしてしまう。

取り調べから解放された鷹山はバーでひとり飲むリーを見つけ、感じた違和感から話し始める。鷹山は彼女こそ彩夏の親であり、かつて恋人であった永峰夏子だと確信していた。
過去は捨てたというリーに対して後ろからそっと抱き締める鷹山。リーはその思いを感じつつ手を振りはらって鷹山の所から帰るのだった

翌朝。
彩夏はひとりで母親を探すとして二人の探偵事務所からでていってしまう。
彼女はバイクを駆ってフェイロンの事務所で待ち伏せすると、駆けつけた車にリーも乗り込み何処へと向かう。
彩夏はそれを確かめるため尾行を開始する。

一方、彩夏の携帯GPSから彼女の位置を把握した二人はそのあとを追う。

フェイロンたちがたどり着いたのは横浜港のコンテナ倉庫の一角。そこには海道と傭兵たちの姿もあった。
そこで海道は自分達の利益のために大型爆弾によるテロを起こし、一気に軍事会社としての利権を得ようと画策していた。
あまりの暴虐と無法ぶりにフェイロンら海道に絶縁を迫るが、海道は卑劣にもそのテロ計画をフェイロンたちのせいにし、仲間たちと共にフェイロンを射殺する。

そして全てを録画していた彩夏も海道に捕まり、殺されそうになるところをリーは機転を利かせ、海道の鷹山と大下への復讐に使えるとして拉致監禁するよう進言する。
その案にのった海道はテロ計画のため彩夏をリーと共に誘拐する。

彩夏の送られた動画によって海道の計画を知った鷹山たちは町田に応援を頼むのだが、町田の勇気ある行動も空しく、海道たちは逃げたあとであった。
瀕死で横たわるフェイロンに言葉を掛ける鷹山。フェイロンはその言葉を胸に息を引き取る

町田の機転で銃器所持が認められた二人は海道の野望と彩夏&リーを救うため敵が隠れているコンテナ倉庫街をひた走る。
果たして二人の結末は…


舘ひろしと柴田恭兵によるスタイリッシュなバディアクションの劇場版第8弾にして最新作。

80年代後半から90年代にかけてスタイリッシュなアクションとコンプライアンス無視なコメディリリーフが人気を呼んだ伝説の刑事ドラマ『あぶない刑事』。
バブル期を彷彿させるような大がかりな爆破シーンやとにかくバンバン撃ちまくるガンアクションなど当時の破天荒さはオンタイムで視ていた世代には印象深い刑事ドラマであった。

その人気は凄まじく、男も惚れるダンディなカッコよさの舘ひろしとニヒルで軽妙な二枚目半的魅力の柴田恭兵のさらっと下ネタも振り込む軽妙な掛け合いは男女問わずヒットし、ドラマのシリーズだけでなく、本作を含めて8本の劇場版まで製作されている。

本作は事実上のファイナルとして製作された『さらばあぶない刑事』の直接の続編となっていて、前作で刑事を引退しニュージーランドであぶない探偵として第二の人生を始めたあとからの話となっている。

8年の歳月がたって横浜も伝説だったタカ&ユージの存在も知るひとぞ知る感じとなった現在で、再び横浜に舞い戻ってきた伝説の二人が80年代のノリそのままに巻き起こす騒動の数々はまさに世代として視ていたノリそのままで嬉しい限りなのだが、このノリと今の若手たちとのカルチャーギャップの面白さも本作の味のひとつといえるだろう。

あぶない刑事シリーズのオリジナルメンバーである二人の体のいい後輩、町田も定年間近な課長職というのに結構時代的なショックを感じるとこであるが、それでも舘ひろしと柴田恭兵との3ショットとなると途端にあの関係性が復活して、ドラマを視ていた人間には思わずニヤッとしてしまう。
そんな町田は今回もあっという方法で銃の使えない鷹山と大下にウルトラC的なサポートをする活躍を見せているので注目。

世代交代的な感じでいうと今回のヒロインとしては若手の土屋太鳳が鷹山と大下の過去に関連する娘として出演する他、町田の部下で若手刑事のリーダー格に元乃木坂46の西野七瀬が出演し、鷹山の伝説のガンさばきにガチ惚れ仕掛けるという所をみせている。
さらに今回のラスボスとして狂気の演技をみせるのが元演舞俳優の早乙女太一。彼のイッている悪役ぶりにも注目してもらいたい。

さて肝心のアクションであるが、さすがに主役二人は70歳超えであり、以前のようなキレこそ厳しいものの視聴者を熱狂させていたムーヴは健在。
柴田恭兵の代名詞であるユージ走りはヒロインの土屋太鳳のアグレッシブな走りとの比較的な形で組み込まれていて、もちろん彼の走るシーンには恭平さんの挿入歌が流れてシーンを盛り上げてくれる。

舘ひろしに関してはガンアクション、格闘戦、そして代名詞であるバイク曲乗りからのショットガン連射は健在でキレもあまり衰えておらず見せ場たっぷり。
クライマックスにもったいぶるかのようにバイクの爆音をさせて颯爽と登場する姿には拍手ものである。

躍動感ある格闘シーンにはある程度ダブルの起用も確認できるが、それでもこの年代でこれ程アクションができるならば十二分であろう。

監督がドラマシリーズを手掛けた監督の息子ということもあって、過去のドラマや劇場版にリンクさせているシーンも多く、この辺りもあぶ刑事ファンの琴線に触れる演出が嬉しい。
そして画期的なシーンとして主要人物の過去の回想シーンには出演陣を最新の技術で若返らせており、その辺りも見所。

そしてコメディリリーフとしては圧巻の存在感なのが浅野温子である。
ハッキリいって出番は多くはないのだが、それでももはやモンスター状態のようなはっちゃけぶり。この扱いには賛否も分かれるところだが、トラブルメーカーとしてのインパクトは十分すぎるほどである。

ストーリーはよくも悪くもシンプルでヒロインの母親探しも途中から何となくネタバレな感じもあるし、コメディラインの軸であった彩夏の父親は誰なのかという問題は結局のところぼやかしていて放置などモヤモヤしたところは否めない。そして何よりもこの8年という年月はどうしても拭えないところである。
やはり出演陣の『老い』は隠せないのは分かるものの一見して感じるのはお互い年取ったなぁという事実。それを踏まえた上でギャグにする舘ひろしと柴田恭兵はどこまでもカッコいい。

コアなあぶ刑事ファンとしては登場人物のバックボーンとなるシーンの挿入や懐かしのドラマシリーズでのキャラたちの友情出演などアクションだけでなく、トリビア的な楽しみかたもしたいところ。
本作を視たあとにまたシリーズの反復をしてみると面白さが増すだろう。


評価…★★★★
(あんなカッコよくてスタイリッシュな老刑事なんておらん。というか浅野温子の扱いが(笑))










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