不動のアクションスター、スティーブン・セガールが暴れまわるバイオレンスアクション作品。

元特殊部隊出身のシェーン・ダニエルズは妻が強盗にあおうとしたところを捕まえ、過剰なほどの暴行で撃退したが、後にその犯人が死体で発見されたことで殺人犯とされ刑務所に投獄された。
それから6年。再審制度によりシェーンの容疑は晴れ、冤罪による賠償金と共に出所したものの既に妻と子供たちとは離散し、一人ぼっちとなってしまっていた。

気持ちの荒むシェーンはストアでウイスキーを買うのだが、その帰りにチンピラたちに絡まれてしまう。
荒れるシェーンはチンピラたちを半殺しにしてしまい、またしても警察の目を気にしての逃亡生活を余儀なくされてしまう。

チンピラたちから奪った車を駆って郊外の休憩所で酒を片手に妻との思い出に更けるシェーンだったがそこにロシア人の若者二人の車がやってくる。
そしてしばらくして黒づくめの車とその車を追いかけてきたパトカーが休憩所へとやってくる。

黒づくめの車の中には二人の中国人がおり、パトカーから降りた警察官は職務質問をするが、中から出てきたバッグに手を掛けた瞬間、警察官に襲いかかり銃撃して殺してしまう。
銃声に気づいた若者二人は殺人現場に居合わせてしまい逃げようとするが、中国人たちのマシンガンの乱射によって一人が撃たれて死亡。
残った若者セルゲイが隠れる車にも容赦なく銃が乱射される。

その現場にやはり居合わせてしまったシェーンは乗ってきた車を爆発させて二人の注意を引く間に一人を格闘戦の末に葬るが、残った一人マオにはその隙に逃げられてしまう。

セルゲイを助けたシェーンは中国人たちの残した車を散策すると中には大量の現金と中国人の女性が閉じ込められていた。
考えるまもなくシェーンたちに銃をもったマオが襲いかかるが、シェーンたちはセルゲイの車で何とか逃げ出すことに成功する。

助け出した中国人女性ティアはマオたちによって薬を打たれていたが、そのおぼろげな意識の中で彼女は叔父を不正入国させるために中国マフィアと接触したが、騙され友人を殺され自分も拉致されていたと告白。更にその友人を殺害したのは彼らと繋がりのあるベリンハムの悪徳警官たちであった。

その中で大量の現金については知らないと答えマフィアに渡さないようシェーンとセルゲイに頼み込む。

翌朝、休憩所で死体を発見した警官たちは中国人を亡くなった警察官が射殺したかのように偽装し証拠を隠滅する。
その頃セルゲイと別れたシェーンとティアはモーテルへと移動し身を隠していた。
そこでシェーンは彼女を拉致した敵の情報を聞き出す。
彼女を拐ったのはチェンという男が率いる中国マフィアでティアの叔父クワンを確保するためであったが、それを実行していたのは中国人民解放軍の大佐と呼ばれる男であった。
実はクワンは会計員で、人民解放軍の麻薬取引の証拠を持っていたため命を狙われていたのである。
その経緯を話し、改めてティアはシェーンにクワンの救出を依頼する。

その頃中国マフィア、大佐、悪徳警官たちは行方をくらましたティアを探していた。
帰ってきたマオからシェーンとセルゲイのことを聞かされたチェンと大佐は地元の悪徳警官リッチーらを使って、セルゲイが潜んでいるとされるロシアンバー『リトルロシア』に捜査に行かせるが、バーの経営者であり、セルゲイの父であるヴラッドはその裏の顔はロシアンマフィアのボスであり、セルゲイの身柄を渡すよう脅すリッチーらを反対に脅し、退ける。

モーテルに潜むシェーンはティアから大量の現金について聞き出すが、ティアはチェンたちが麻薬取引によって得た金であると証言。
彼らが死に物狂いでこの金を取り戻しにくると気づいたシェーンは別れ際にセルゲイが言っていた『リトルロシア』で協力をもとめることにする。
しかし金の入ったバッグには追跡装置がついており、チェンたちの部下が乱入。
シェーンは彼らを返り討ちにするとすぐさまモーテルを出てセルゲイのもとへと急ぐ。

彼らと入れ違いでモーテルにたどり着いたリッチーたちはチェンの部下たちが殺されていることをチェンたちに報告。しかしその遺体には大佐の部下も紛れ込んでいた。
リッチーの報告をうけ、大佐の裏切りを勘ぐるチェン。だが大佐は冷静にリッチーたちにシェーンたちの動向を探るように指示を下す。

リトルロシアにたどり着いたシェーンはセルゲイのことをとぼけるバーテンダーをしばきあげ、直接ヴラッドの屋敷へと案内させる。
セルゲイからシェーンのことを聞いていたヴラッドは彼らを歓迎し、息子の命の恩人に報いると約束。シェーンはヴラッドと義兄弟の盃を交わし、協力を約束付ける。

一方、チェンのアジトである廃工場ではチェンが中国人コールガールを侍らせて、大佐を勧誘するのだが、大佐はチェンの企みに辟易し、部隊を使って次々とチェンの部下たちを殺害し、アジトを制圧。裏切られたチェンは大佐に拘束され拷問を受ける。

大佐がチェンを裏切ったことを知らない、悪徳警官リッチーたちとマオ率いる別動隊はシェーンたちを皆殺しにすべく、ヴラッド邸を襲撃。
異変に気づいたヴラッドたちと壮絶な銃撃戦を展開する。
正面からリッチーたちと撃ち合うヴラッドはセルゲイにティアを任せて逃がさせる。
加勢したシェーンも次々とチェンの部下たちを倒していく。

裏口から襲撃したマオはティアを見つけ、セルゲイの隙をついて拉致しようとするが、すんでのところでシェーンが現れ、マオは彼によって引導を渡される。
劣勢となり逃亡を図ろうとしたリッチーたちもヴラッドらに捕まって血祭りにされ、敵を返り討ちにした面々はアジトに連れてこられるクワンを救うためにアジトに奇襲を掛ける計画をたてる。

しかしアジトは大佐の部隊によって厳重に警備されており、襲う隙を伺えない。
その時クワンが連れてこられる。
大佐はチェンとクワンをアジトに仕掛けた爆弾で一掃させようと企んでいた。
クワンの姿を見て思わず声を出してしまったティアに気付き、大佐の部隊との激しい銃撃戦が始まる。

騒動に紛れて大佐を殺そうとしたチェンは大佐によって返り討ちにあって撃ち殺され、激しい銃撃戦のなかでティアが被弾し負傷。
シェーンは止血の応急処置を彼女に施すと、自ら単身で大佐との決着をつけるべく、銃弾の飛び交う危険な中を駆け抜ける。

襲いかかる敵をなぎ倒し、遂に宿敵である大佐と対峙するシェーン。
果たして彼はティアたちの命と自分の自由を手にいれることができるのか?
壮絶な銃撃戦の末に生き残るのは果たして…

マンネリをものともしないスティーブン・セガール作品の王道とも言うべき作品。

『沈黙の戦艦』のヒットにより日本では彼の出演作品にはもれなく邦題に『沈黙の』がつけられ、勝手にシリーズ化されている。そしてキーワードとして『オヤジ』という言葉も作品のキャッチセールスとして欠かせないワードである。

通算シリーズ18作目にあたる本作ではセガール自らプロデュースし、製作総指揮にまわるなど肝いりの作品で、元特殊部隊出身ながらトラブルに巻き込まれてしまう『不運な男』の設定とセガールにしては少し変化球を狙った体はあるものの中身を拡げてみればいつものように不死身のセガールがとにかく無双するアクション作品となっている。

これを安定と捉えるかマンネリと取るかで評価は大きく分かれるところだが、ストーリーにおいては少なくともセガール自身工夫をこらして、敵味方が複雑に絡み合ってサスペンスアクションとしての要素も醸し出そうとしている。

アクションとしては初期のセガールとはもはや別物ともいうべき感じで、昔と比べるとスマートさが薄れ、荒々しさが増した印象。
というのもセガール自身がかなり肥えてしまっており、日常的に体型を隠すかのような季節感のない皮のロングコートを身にまとい、それでも隠せないほどのむくみ具合。顔なんかは目元まわりからしてパンパンに浮腫んでしまっている。

その状況から格闘シーンも基本は合気道におけるカウンター攻撃メインで、しかも直接的な攻撃よりも投げ飛ばして障害物で痛めつけるような二次被害なダメージの与え方が多くなっている。
そしてセガール拳とよばれた連続ラッシュだが、がたいがでかくなった分スピードよりもパワーな感じで、まるでハンマーパンチを連続して叩き込んでいるような重さを感じさせる格闘アクションとなっていた。

そんな動かずして致命傷を与える不動のセガールの今回の対戦相手は中国マフィア軍団。
そのラスボスを演じたのは不朽の迷作ヴァンダムの『ストリートファイター』でリュウを演じたバイロン・マンである。
B級アクション作品では至極真っ当なマーシャルアーツをみせるアクションスターであるが、本作ではクライマックスでセガールと対峙しカンフーアクションをみせるも、圧倒的差を見せつけられてしまう。
これはセガール相手なので致し方ないところだが、本来の彼はかなり動ける人なのである。

まるでヒグマが戦っているかのようなセガールの佇まいだが、初期と比べると一撃の重さの説得力は増しており、これに関しては肥えてでかくなったことがプラスになっているようだが、彼と対等に戦えそうな敵がいないのは惜しいところ。
たまには危機に陥るような 強敵の存在もほしいところである、

評価…★★★
(肥りすぎたセガールはもはや見た目がクマ。作品内でもいじられまくりです)